その7 鰻に一番あうお酒 「西の関」

(萱島酒造のHPから)
(萱島酒造のHPから)


 今年の夏は、7月末頃までは暑さに閉口したが、8月に入ってからは少しずつ涼しくなって助かった。筆者の趣味である剣道も、毎年この時期はなかなかの苦行である。そういう時には、やはり日本の夏の伝統的スタミナ料理である「鰻」で精をつけたくなる。


 鰻の歴史を調べてみると、日本人の食文化に鰻が登場したのは新石器時代頃(紀元前7~8千年)という。遺跡から鰻の骨が発見されているらしいが、文献に登場するのは713年(和銅6年)に書かれた「風土記」の記載が最初とのこと。

 

 奈良時代末期の万葉集で、大伴家持も「石麻呂に 吾物申す夏痩せに よしと云ふものぞ むなぎ(鰻)とり召せ」と、夏痩せした友人に勧めている。


 今年の「土用の丑」は7月29日だった。筆者は、江戸時代の学者・発明家である平賀源内が考案したというキャッチコピー(土用の丑の日、うなぎの日、食すれば夏負けすることなし)には乗らず、例年のように8月に入ってから、新橋にある私のお気に入りの鰻居酒屋へ行った。

 

 日本酒で「肝焼き」「佃煮」「うざく」「白焼きと蒲焼きの串もの」を頂いた。(ちなみに、鰻は夏の食べ物と思いがちだが、冬もあぶらがのって美味しいらしい。美味しいものは、いつ食べても美味しいということか)


 鰻も高嶺の花のようになり、そう滅多に食べられるもんじゃない。だからこそ、鰻料理の魅力を引き出すお酒を飲みたいじゃないですか。そう考えて少し調べてみると、ありました。

 

 日本名門酒会のサイトによると、「鰻と合う酒」の独自審査を実施しており、名門酒会の有志加盟店、鰻・日本酒に造詣の深い方々、名門酒会本部スタッフとともに2006年から毎年続けているという。

 

 審査の方法は、鰻の蒲焼き・白焼きで合うお酒を確認している。

 

「一口にうなぎと言っても、うなぎそのものの質はもとより、焼き加減、タレの味、山椒・山葵などの薬味の種類でさまざまな味わいに変化します。ここでご紹介する結果はとある名店のうなぎと合わせた結果にすぎませんので、あくまでも参考として、ご自身で探っていただけると幸いです」とのこと。なるほど。


 驚いたことに9年連続して1位を獲得したお酒がある。大分・国東の「西の関」である。

 

 萱島酒造のホームページによると、創業は明治6年(1873年)。代表銘柄「西の関」は、明治20年代に二代目・米三郎が、西は西日本、関は横綱の意味で「西日本の代表酒になりたい」との大きな望みと努力を心に誓って命名したという。

 

 明治40年、初めて開催された全国品評会で見事一等に入賞し、その後も数多くの受賞を重ねてきているそうである。「お酒の味を形どる五味(甘、酸、辛、苦、渋)が調和した『旨いお酒』を理想としています」。


 思えば、酒好き「その5」で紹介した地酒蔵元会の利き酒会に「西の関」も出展していて「手造り純米酒」を飲んだのだった。

 

 日本酒度はマイナス1.5(日本酒度はプラスが高いと辛口、マイナスだと甘口になる)、酒米はヒノヒカリと八反錦、精米歩合は60%と吟醸相当である。お米の旨さの中に、わずかな甘味と酸味があり、いかにも鰻の蒲焼きという濃厚な味を包み込むような懐の深さを感じさせるものであった。


 筆者と「西の関」との出会いは、およそ30年前にさかのぼる。山口での中学生時代に剣道を通じて知り合った友人が、銀座の小料理屋に連れて行ってくれた。

 

 「みつる」というそのお店は、何とも居心地が良く、私の母親より少し年配とおぼしき大分県出身の女将が切り盛りしていた。そこで飲んだ日本酒が「西の関」である。脂の乗った鰆(さわら)の焼き物と熱燗を一緒に頂いた美味しさは、今でもしっかりと覚えている。

 

 「みつる」には鰻がなかったので、これまで「西の関」と「鰻」の組み合わせを試したことはない。

 

 よし、日本名門酒会の「ご自身で探っていただけると幸いです」との言葉をありがたく受け止め、ご自身で探ってみようじゃないか。

 

 名門酒会の審査のように、色々なお酒を揃えたわけではない。そんなに贅沢ができる身分ではない。「西の関」に加え、独断と偏見で用意したのは「浦霞 純米酒」と「一ノ蔵 純米酒 掌(たなごころ)」である。


 鰻は、近所のスーパーで小さな「白焼き」と「蒲焼き」を買ってきた。(やはり、鰻は高価なものだと改めて実感。)

 

 百聞は一口に如かず。


 実践してみるとなるほどよく分かる。口の中で、鰻とそれぞれの日本酒が交じり合ってスープみたいになる。「白焼き」は鰻の脂と塩味とお酒の旨味と甘みが濃醇なハーモニーとなり、「蒲焼き」はさらにタレの甘味と醤油の香りが加わる。山椒をかけてみると、スパイシーさがスープに嬉しいアクセントを追加したような感じなのだ。

 

 三つのお酒と鰻のマリアージュは、どれも美味しかった。そして、味のハーモニーが最も心地良く感じられたのが「西の関」だった。

 

 何故そうなのかと訊かれても、なかなか言葉にはしにくいが、名門酒会の審査で、9年連続して1位になっただけはあると思う。さすが、五味が調和した「旨い酒」を目指している酒蔵である。

 

 「西の関」と鰻。ああ、くせになりそうだ。


 えっ、「ふーん、思い込みじゃないの」と思っています? だったら、ぜひ一度、お試しあれ。新しい世界が広がります。

 

こがねいコンパス58号(2014年9月20日更新)

筆者・上村紳一郎(かみむら・しんいちろう)のプロフィール

1957年、山口県に生まれる。小学から剣道を始め、旧大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)では剣道部主将。五段。某大手電機メーカーに勤めながら、地元の朝霞市剣道連盟で子供達の指導と剣道家達との交剣知愛を楽しむ。そのかたわら、独自に日本酒探訪を続け、酒と歴史とのつながりの物語を紡ぎつつある。時折、小金井市に遊びに来るのはなぜ?


 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

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イラクから問い続けてきたもの

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