その14 14代とそば街道


 山形の銘酒「十四代」については以前から書いてみたいと思っていたが、なかなかきっかけがなかった。このコラムも「その14」ということで、今回は山形の銘酒「十四代」について取り上げてみたい。(「こじつけ」を承知のうえです)


 「十四代」と出会ったのは、会社のオフィスが川崎から汐留に移転した時分だから、2002年ごろか。「近くに日本酒専門の酒処があるよ」。同僚にそう誘われ、向かったところが「酒仙しんばし光寿」。


 「十四代・本丸」を初めて口にした。あまりの旨さに驚く。やわらかさと厚み、上質な甘さと香り。口の中でふわっと広がる。心の中でつぶやいた。「うますぎる」。


 日本酒専門のお店は、ほぼ間違いなくお料理も美味しい。この店もそう。最初に出て来る見事な「お通し」は6品。行くたびに「今日は、何が出てくるかな?」と楽しみにしている。


 私の知っている範囲では新橋でもう一軒、「十四代」を置いているお店がある。「本陣房」という蕎麦屋さん。新橋で一番美味しいお蕎麦ではないか思う。お蕎麦だけではない。肴がまた旨い。「十四代」と肴を楽しんで、お蕎麦でしめる。この小さな、しかし確かな幸せよ。


 「十四代」の蔵元、高木酒造のホームページを探そうとした。見つからなかった。地酒蔵元会のサイトにも、日本名門酒会のサイトにもない。


 唯一あったのは、山形県酒造組合の「蔵元めぐり」というサイト。こう書いてある。


 《芳醇・旨口・キレのある酒を基本とし、心で飲む感動する酒を醸しています。
創業400年の伝統の技と近代的技法を駆使し、万人に受け入れられる本物の地酒を目指し、日々精進しています。》


 創業は元和元年(1615年)という。1615年と言えば、豊臣家が滅びた大坂夏の陣。おお、今年はそれからぴったり400年じゃないですか。


 私の座右の書である「日本酒入門(野崎洋光監修・君嶋哲至著)」では、「これだけは飲んでおきたい日本全国の銘酒」という項目で、「一度は味わいたいマニア垂涎の銘酒」として一番最初に挙げてある。


「山形県『高木酒造』が生んだ、日本酒業界を変えたとも言われる「十四代」。上品な果実を思わせる甘味があり、軽さも厚みもある珠玉の酒だ」


 いや、まったく同感ですね。


 でも、なぜ「十四代」という酒名なのか。山形県村山市の蔵元を訪ね、聞いてみたいところだが、すでに私に代わってその疑問を解消してくれた女性がいた。


 ウェブサイトALL aboutにお酒の記事を書いていらっしゃるである友田晶子さん。友田さんは、「ワイン・日本酒・焼酎・ビール…と酒ならなんでも来いっの女達人!」。とてもチャーミングな女性です。


 彼女は2008年に高木酒造を訪ね、代表取締役「十四代当主」高木辰五郎氏と専務取締役「十五代」顕統氏をインタビューしている。


 その記事によれば、高木家は――


 「もともと、京都の公家であった祖先は応仁の乱で負け、惨殺を逃れこの北の土地で名前をかえ、ひっそりと住み続けたのだとか。」「京の落人とはいえ、酒蔵のある敷地だけで現在3500坪。戦前は「高木山」とよばれる山林、森林、田畑すべては高木家の所有であり林業も営んでいたという。」


 また、お酒の名前については――


 「『十四代という銘柄は、昔は古酒に使っていたんです』とさらに続ける辰五郎氏。実は、「十三代」「十四代」「十五代」「十六代」という言葉をすべて特許申請したところ、数字は特許が取れないと判明。しかし不思議なことに、そのうちの「十四代」だけが特許が取れた。『とよしろ、とか、としよ、とか誰かの名前だと思われたんでしょうかねぇ(笑)』」 


 なるほど、そんないきさつがあったのですね。

                 □


 話は、そばに転じる。


 高木酒造のある村山市のホームページで「最上川三難所そば街道」というページを見つけた。


 「山形県の母なる川、最上川。舟運時代、その中流にある碁点、三ヶ瀬(みかのせ)、隼の三地点は、通過するのに困難を極めたため『最上川三難所』と呼ばれ、船頭たちに恐れられていました。


 しかし、その三難所も、陸路の発展とともに交通路から観光名所へと変わり、今では『奥の細道』にも登場した雄大な流れを眺めながら舟下りを楽しむことができるようになりました。三難所沿いにあることから名の付いた『最上川三難所そば街道』で、おいしいそばに出会いませんか」


 最上川の舟運と言えば、それで栄えた大石田町のことは以前から知っていた。


 実は山形県内には「そば街道」と名のつく場所が三つある。先の「最上川三難所」と並んで、「大石田そば街道」も有名である。(あとの一つは「おくの細道 尾花沢そば街道」)。

(大石田町のホームページ)
(大石田町のホームページ)

 

 昨年12月のNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」。鶴瓶さんは、大石田町を歩き、高木酒造で働いていたというおじいさんに出会う。その成り行きでおじいさんの息子と高木酒造を訪問し、社長の高木辰五郎さんから「十四代」をご馳走になっていた。


 高木酒造の代表銘柄には、「十四代」の他に「朝日鷹」がある。そば街道のそば屋さんには、もちろん地元のお酒「十四代」や「朝日鷹」が置いてある。そば街道を歩く楽しみが何倍にも広がるというものだ。


 幸運なことに、私が所属している埼玉県の朝霞市剣道連盟の酒好きの先生たちと行く地元の酒処「膳炉食(ぜんろく)」に、朝日鷹がある。


 ここのご主人から聞いたところでは、「朝日鷹」は山形の地元向けのお酒らしい。甘さと香りは抑え気味だが、まろやかで厚みがあり、「十四代」でなくとも充分美味しい。
 
 そば街道は楽しみにとって置くとして、剣道で汗をかいた後のひと時は、朝日鷹の杯を傾けるのである。


(続く)

こがねいコンパス第71号(2015年7月26日更新)

筆者・上村紳一郎(かみむら・しんいちろう)のプロフィール
1957年、山口県に生まれる。小学から剣道を始め、旧大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)では剣道部主将。六段。某大手電機メーカーに勤めながら、地元の朝霞市剣道連盟で子供達の指導と剣道家との交剣知愛を楽しむ。そのかたわら、独自に日本酒探訪を続け、酒と歴史とのつながりの物語を紡ぎつつある。時折、小金井市に姿を現す。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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「敗北」を語る

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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