その13 ノーベル賞のお酒「福寿 純米吟醸」

(蔵元の株式会社「神戸酒心館」のHPから)
(蔵元の株式会社「神戸酒心館」のHPから)


 昨年11月、東京外国語大学剣道部OB・OGと一緒に、上野の韻松亭で開催された「福寿を楽しむ会」に参加した。


2007年10月に大阪外国語大学が大阪大学と統合するまで、東京・大阪両外国語大学は毎年全学をあげて体育会運動部同士の定期戦を行っていた。


1年ごとに相互の大学を訪問する。人によっては意気投合し、互いの下宿に泊まり、明け方まで語り合うこともあった。


剣道部も同様に、試合が終わると懇親会で酒を酌み交わしていた。現在も、両外国語大学のOB・OGが1年に一度泊りがけで伊豆高原に集まり、剣道の試合と稽古、そして懇親会で旧交を温めている。


その懇親会でも日本酒が好きな人が結構いる。そういうメンバーから、「『福寿を楽しむ会』に行ってみませんか」とお誘いを受けたのだ。


                   □ 

 当日は、生憎の雨だったが、気持ちはうきうきしていた。

 

 韻松亭の入り口で頂いたパンフレットには、次のように書いてある。


 「創業明治八年、『花の雲 鐘は上野か浅草か』(松尾芭蕉)と詠われる寛永寺の鐘楼に隣接することから、当時の博物館館長・町田久成が『松に韻(ひび)く』さまを愛で、韻松亭と名付けました。その百四十年の歴史のなかには横山大観がオーナーだったこともあります。

 修行を積んだ板前の料理に舌鼓を打ち、美酒を悦しみながら、古に思いをはせる。そんなひとときを韻松亭でお過ごしくださいませ」


 なるほど、趣のある古い木造の建物が雰囲気を醸し出している。お酒の美味さを引き立ててくれそうだと一層期待が高まってくる=(下の写真、韻松亭のHPから)。


 

 韻松亭は内部をリノベーションしているものの、建物自体は明治八年に建てられたもののままだという。明治政府が、欧米諸国の例にならって都市公園建設を計画した。徳川家の菩提寺である寛永寺に白羽の矢を立て、それまで寛永寺の敷地は上野公園全体に広がっていたが、この公園化によって奥の方のごく一部に縮小されて鐘楼だけが飛び地となり、今の韻松亭に隣接する形になったとのことだ。


 会に参加するにあたり「福寿」を事前に調べてみた。

 福寿の蔵元・神戸酒心館のホームページには次のような紹介がある。


――260年前の宝暦元年(1751年)12月、灘五郷の一つ御影郷(みかげごう)で酒造りを始めました。生産量を追わず、おいしさを極めるために、手造りによる丁寧な酒造りを行っております。

 

「福寿」は、七福神の一柱「福禄寿」に由来し、福寿を飲んでいただく方々に、財運がもたらされますようにその願いを込めて商標にいたしました。

 

麹は今でも全量手造り、蒸米は甑(こしき)を用い、仕込みごとの個性を大事に、米のうまみを引き出した「濃醇できれいなお酒」を目指しております。


 当社のお酒は、イギリス、オランダ、ドイツ、台湾、韓国をはじめ、世界各国に出荷しています。スウェーデン・ストックホルムで開かれたノーベル賞晩餐会において当社の純米吟醸酒が提供されており高く評価されています――


 

 「福寿を楽しむ会」で頂いた資料によれば、純米吟醸の紹介として「『インターナショナル・サケ・チャレンジ 最高金賞』、熟したあんずのような豊かな香り。滑らかな米の旨味も味わえ、カッテージチーズとも素晴らしい相性です。2008、2010、2012年のノーベル賞晩餐会にて供出されました」とあった。


 いずれの年も日本人の受賞晩餐会の乾杯酒として採用されたのであるが、「2014年ノーベル賞晩餐会にも採用が決まりました」と説明がある。


 2014年のノーベル賞晩さん会は12月10日に行われた。


 私が、「福寿を楽しむ会」に出かけたのは、それより前の11月のこと。ノーベル物理学賞を受賞した、赤崎勇・名城大教授、天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授よりお先してしまうのは、いささか恐縮する。よって、飲む前に胸の内で「お先に失礼します」とつぶやいてみた。


 この資料にはこんなエピソードも書いてある。


 2013年に東京で『第14回国際ソムリエ協会(A.S.I.)世界最優秀ソムリエコンクール』が行われた。国際ソムリエ協会によって世界で最も優秀なソムリエが選ばれるコンクールが東京で開かれるのは、18年ぶりのこと。


 この優勝者となったのはスイス出身のパオロ・バッソ氏=(下の写真、同コンクールのHPから)。彼が、最終決戦のテーブルで最初の銘柄として選んだのはワインではなく、日本のお酒。そして、それが「福寿」だったのです・・・。



 パオロ・バッソ氏の純米吟醸に対するコメントは・・・


「アロマティックな爽やかさと厚み、熟成度も兼ね備えている。


 香味が持続し、極めて上品だ。秋から冬にかけて旨味ののってきた食材と組み合わせたい」

 


 韻松亭の献立は、まさにそのような組み合わせだった。

 メニューをそのまま書き写すと、

 《福寿を楽しむ会 お献立》

 黒塗り二段重

 上段  鰹酒盗和え、松風、蟹真丈、焼魚、出汁薪巻玉子、茄子オランダ煮、里芋、

     赤蒟蒻、海老酒煮、高野豆腐、絹さや、鴨ロース金紙包み、椎茸真丈、酢蓮、

     丸十、スモークサーモン

 下段  鯛、鮪、あおり烏賊、かんぱち、パプリカ寄せ、紅蓼

 椀代り 玉〆

 食事  鮭きのこご飯

 止め椀 赤出汁、香の物

 水菓子 笹巻き麩万頭

                      平成26年霜月六日 上野の杜 韻松亭



 《当日のお酒》


 大吟醸(食前酒)、純米大吟醸黒ラベル(乾杯)、純米吟醸(ノーベル賞のお酒)、山田錦

 生酒80しぼりたて(新酒生酒)、ひやおろし純米(季節限定)、純米酒御影郷(燗酒)


 全部美味しい。

 だが、ずっと飲んでいると、お料理と一緒では、純米吟醸が最も飲み続けていられるように感じた。香りが本当に上品だ。口に含んだ瞬間はすっきりした感じ。その後、料理を受け止める濃醇さもあわせ持っていた。


 出席したことがないのでノーベル賞晩餐会がどんなものか良く分からないが、そこにあって不思議はないという味のたたずまいである。



                 □


 花の季節がやってきた。2015年3月8日付けの日本経済新聞電子版に、「桜をめでるのにお薦め 東西20カ所のお寺」という記事が掲載されている。


 西日本の1位は醍醐寺(京都市)、東日本の1位は身延山久遠時(山梨県身延町)。おっと、東日本の第4位に寛永寺が入っているじゃないですか。


 「徳川家の菩提寺は昔から「歌川広重の浮世絵にもある花見の名所」、「上野の桜は開祖天界が大和の吉野山から取り寄せた山桜が起源」と紹介されている。

 

 今年は、上野の桜に江戸の風情を感じてみよう。福寿を飲みながら。


(続く)

こがねいコンパス第69号(2015年3月21日更新)


上村紳一郎(かみむら・しんいちろう)のプロフィール

1957年、山口県に生まれる。小学から剣道を始め、旧大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)では剣道部主将。五段。某大手電機メーカーに勤めながら、地元の朝霞市剣道連盟で子供達の指導と剣道家との交剣知愛を楽しむ。そのかたわら、独自に日本酒探訪を続け、酒と歴史とのつながりの物語を紡ぎつつある。時折、小金井市に遊びに来る。


 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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