その7 議会基本条例の制定断念に思う

 議会基本条例を今の市議の任期中、つまり来年3月までに制定しようという目標を断念することが、10月9日の議会運営委員会で確認された。


 全く残念の一語に尽きる。

 

 議会基本条例制定には137万1000円の予算が今年度組まれた。

 予算の説明資料には条例制定の意義を「議会としての権能を高め、市民に分かりやすい市議会とするため」とある。

 

 言わずもがなだが、市議会は、市長ら執行機関とともに市政運営で大きな役割を担っている。市の事業を実施するための予算は、市議会の議決が得られなければ原則として、執行することはできない。

 

 「市民に分かりやすい市議会」となることは、議会への信頼や権能を高めるだけでなく、市政運営に関する市民との回路を開き、広げ、市民と市政との距離をぐっと近づけるうえで、画期的な変化をもたらすと期待されていた――少なくとも私は大いに期待していた。心の底からぶつぶつといつまでも浮き上がってくる、残念という感情を容易に消すことはできない。

 

 そうした感情には以下のような背景がある。

 お読み頂いたかどうかわからないが、10月15日に《市政の焦点》のページに来年度予算編成方針に関する記事を掲載した。この日、市のホームページで公表されたからだ。

 

 内容の大方は前年のものを踏襲しているが、異なっているところもある。

 とりわけ私の目を引いたのが「わかりやすい情報の発信による課題の見える化と共有化」という文言だった。

 

 予算編成方針はその4日前の「予算説明会」で市役所の職員に向けて説明された。しかし、ここの「見える化と共有化」という言葉で強く意識されているのは市民である。

 小金井市が今抱えている課題を市民に「より見えるように」し、そして課題についての認識を市民と「より共有できるように」しよう――。ひらたく言えばそういうことになる。

 

 今年に入って予算や決算などの財政関係資料が市のホームページに積極的に掲載されているのは、市役所内の、とりわけ予算編成や中・長期計画策定など司令塔役を果たす企画財政部内での問題意識と、それに基づく意図を反映している。

 

 

 なぜ?

 短期的に言えば小金井市の財政が「危機的な状況」にあり、ごみ処理などの重要課題に直面しながら「危機的な財源不足」にあることを知ってほしいからだ。長期的に言えば、デフレを脱却できない日本経済によって市税収入が頭打ちになっている中で、扶助費が増大傾向にあるという構造的な問題を抱え、自治体財政のかじ取りが厳しいことを知ってほしいからだ。

 

 なぜ?

 以下は編成方針に書かれているわけでも、示唆されているわけでもなく、私の推測にすぎないが、一つには多様化する市民の要望(市民ニーズ)のすべてに応えられない事情を市民に改めて理解してほしいためだろう。

 

 また一つには、小学校給食調理の民間委託や学童保育所の民間委託など、第三次行財政改革大綱にあげられているメニューを実行したり、さらなる市民負担を求めたりする環境を整えようという思惑もあるのかもしれない。 

 

 このような状況だからこそ、「市民にわかりやすい市議会」の実現は、市民にとって極めて大きな意義を持つのだと思う。

 

 24人の市議(現在は1人の欠員があり23人)は、日頃から多くの、そして多様な立場の市民と接している。彼らの声を聞き、彼らに説明し、彼らの要望を届け、彼らの疑問を解消する。市民の目線と近く、あるいは重なった立場で活動する。市民と市政運営者とのインターフェイス(接続部分)の役割を担っている。

 

 今、「負の再配分」とまでは言わないが、厳しい財政のなかで事業の優先度をどう決めたのか、なぜ財政危機に陥ってきたのかなど、市政運営の責任者として市民に分かりやすく説明する役割がこれまで以上に求められている。市議会は、市長ら執行機関とは異なった回路と発想で、それを伝えることが可能だと思う。

 

 市議会報告会の開催などを盛り込む議会基本条例への私の期待は、そのようなところから生まれている。よって残念の思いをぬぐいきれない。

 

 

   *****

 さて、これからの話である。

 (今となってみれば、議会基本条例制定を求めた陳情採択が2010年3月だったというのだから、もう少し早く、例えば2011年度から作業をスタートをできなかったのだろうかという思いもあるが、そのあたりの事情は良く分からないし、今さらここで言うのもいささか虚しい)

 

 可能な限り早く、中身の充実した議会基本条例を制定するためには、「だれが悪かったか」ではなく、「なにが悪かったか」について市議会としての共通認識をもってもらい、教訓とし、今後の運び方に生かしてほしいと切に願う。

 

 とりわけ10月15日の議会運営委員会でも触れられていたが、条例の条文を最終的に承認する舞台に事実上なってしまっていた「全議員懇談会」の議論が公開されていないことが、市民の不信や疑問を深める結果につながってしまった。

 

 市のホームページには「全議員懇談会 概要メモ」が掲載されており、何が話し合われたかの大筋を伝えようとしている。だが、それも個別の条文案に入る前の、5月の第3回までしかない(この記事を掲載した2012年10月20日時点)。

 

 市議会のあり方について、現在の23人の市議には様々な考えがあるのだと思う。そうした考えを市民に見えるところで開陳して頂ければ、議会や議員への市民の理解がより深まったのではないか。より距離が縮まったのではないか。あるいは、少なくとも条例案をまとめる「難しさ」は伝わったのではないか。

 

  条例案を検討してきた議会運営委員会の委員たちはそれぞれが所属する会派の意見をとりまとめ、委員会に臨んできたはずだった。

 

 そこでの一致点が全議員懇談会の場で崩されるようなことになれば、なかなか進むべきものも進まないだろうと想像する。ただ、全議員懇談会の議論が明らかになっていないので、想像の域を出ない。

 

 市議会が議会基本条例制定について学ぶため、3月の議員研修会で講師として招いたのは中尾修・東京財団研究員(元・北海道栗山町議会事務局長)だった。中尾氏ら東京財団政策研究部が2010年5月にまとめた政策提言「地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」では、提言の1番目にこう書かれている。

 

 「《議会基本条例の制定過程に市民の参加と情報公開を図ること》 市民参加と情報公開は自治の基本であり、基本条例の制定を待つ必要はない。原則、全過程を公開にし、常に市民との意見交換の機会を設けること。議員のみで非公開の審議で原案を作成するなど論外である。」

 

 

 

  *****

 議会運営委員会は10月22日に制定断念の経過や理由について、委員会としての見解をまとめ、市のホームページで公表するという。森戸洋子委員長の提案によるものだ。市民が今回の制定断念に関して疑問や不信を感じている点を、ぜひ払しょくするような内容であってほしいと期待する。

 

 条例が制定される前でも、「市民に分かりやすい議会」であるために一つひとつ努力を重ねることが大事だと思うし、そうした積み重ねが条例づくりやその後の運用にも反映されると信じるからだ。

 

 その文脈に沿って最後に一つ苦言というか、注文を述べたい。

 

 市議会がユーストリームで中継され、またそれが録画でもみることができるようになったのは、公開度を高めるうえで格段の進歩だと思う。

 

 市議会の空気を肌で感じることができる傍聴の大切さは意識しつつも、仕事を抱える市民が平日の昼間に足を運ぶのは容易ではないからだ。

 

 ただ、そのユーストリーム中継も、委員会で非公式な協議をする必要があると、委員長が「休憩します」と宣告し、音声が途切れる。

 

 そうでなくてもユーストリームの音声はあまり安定していない。しばしば雑音が入ったり、声が細くなったりする。何も聞こえなくなると、技術的な問題で音声が途切れているのか、あるいは別の事情があるのか分からなくなり、見ている方は混乱し、嫌気がさしてしまう。

 

 さらに言えば、ごく短時間での非公式協議であればそれもやむを得ないと思わないでもないが、延々と続くと、「一体この人たちは音声を切って、何を話しているのだろう」という不信を募らせる結果となりかねない。不信とまで言わなくても、フラストレーションは確実に溜まってしまう。

 

 つまらないことを大仰に言っていると思われるかもしれないが、市議会に期待するがゆえの注文と受け止めて頂き、ご高配を願いたい。

(終わり)

 

「こがねいコンパス」15号(2012年10月20日更新)

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

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