その4 「定数削減」を考えるためには (2012年5月19日号)

 市議会の定数(現在24人)を減らした方がいいんじゃないか。あんなに議員は必要なのかね。

 そんな質問というか意見を聞いたりすることが、ままある。

 

 市議会議員のだれというよりも、市議会全体に対する不満と不信が背景にあるようだ。だからと言って、そういう人が足しげく議会に傍聴に来ているとか、ユーストリームによる中継を熱心に見ているわけでもないのだが、多忙な市民が市議会での平日の議論に付き合うのにはそれなりの覚悟と時間がいるので、やむを得ない面もある。

 

 地方議会の定数をどう考えるかは、かなり悩ましい問題だと思う。

 行政学、地方自治論の専門家である佐々木信夫氏も『地方議員』という著書の中でこう述べている。

 「それぞれの自治体の議会は何名の議員で構成するのが望ましいか。その根拠は何にあるのか。筆者自身、いくつかの議会に呼ばれ意見を述べたことがあるが答はなかなかむずかしい。議員定数問題は議会構成の基本的な問題であるが、確たる答はない」

 

 さて、今号発刊(2012年5月19日)の10日後の5月29日夜、市議会の議会運営委員会(議運)による公聴会が開かれる。《市政の焦点》でも説明しているが、市民からの「市議会議員定数の削減を求める陳情書」(市議会の文書番号では「23陳情第64号」)が昨年8月提出されており、採択するかどうかなどを判断する審査の一環だ。

 

 この陳情書は市のホームページで見ることができるので、陳情者がどのような理由から、どのような具体的な陳情事項を市議会に求めているのが分かる。(付言すれば、陳情書には私の名前も登場するが、陳情書の提出には私自身はまったく関与をしていない。念のため。)

 

 具体的な要求は2点あり、第一は「次の市議会議員選挙は、現状の定数24を、一定数減じた形で執行してください」であり、第二は「すでに確定している定数目標(20名)を段階的に実現してください」である。
 私が気になったのは二点目の要求だ。陳情書の文中にも「現在24の議員定数を『20にする』という議会意思が相当以前に確定しているにもかかわらず、その段階的な実行を怠っている状況にあります」とある。

 

 悩ましい定数問題を考えるうえで、市議会がすでに確定している削減の履行を怠っているというのであれば、ずいぶん話は違ってくる。

 

 残念ながら市のホームページにはその点の説明は何もないので、議会事務局に問い合わせてみた。

 議会事務局の担当者は「それはおそらく、平成10年9月に採択された『市議会議員の定数削減を求める請願書』のことを指しているのでしょう」と教えてくれた。

 なるほど。そこに定数を20に削減する、と書いてあるわけですね。

 そう聞くと、担当者は「いや、それがそうでもなくて・・・」と、採択された請願書の文面を説明してくれた。

 

 採択の前年6月に請願書を出したのは「市議会議員の資質を考える会」の代表者である。請願書では、この会がそれまでも定数削減の陳情書を出し、「1減」が実現したことに触れ、最後にこう結んでいる。
 「当会では、選挙ごとに削減し、定数20を目標にしては、と考えています。もっとも、これは長期に及ぶことでもあり、その時期それぞれの市民の考えもあるかと思いますが。以上の理由で、次のことを実現していただきたく、お願い申し上げます。

 請願項目 次期市議会議員選挙には、現行定数を削減して実施してください」

 

 請願書が平成10年(1998年)に採択された後、平成13年(2001年)から議員定数は1人減って現在の24人になっている。つまり請願内容に沿って削減がきちんと履行されたのだ。

 今回の陳情書を出した人が、どのような観点から定数20人が「すでに確定している定数目標」と理解されたかは分からないし、その点を問題にしているわけでもない。

 

 私が言いたいのは、市民に公聴会で意見を述べよ、というのであれば、ただ陳情書だけをホームページに掲載して終わり、というのではなく、もうすこし丁寧な説明があっても良かったのではなかったか、ということだ。そうでなければ、市民が意見を述べるという重要な機会が、事実の基盤を欠いた議論に終わりかねない。

 

 繰り返すことになるが、定数削減問題というのは、専門家にとっても「確たる答がない」という難しいテーマだ。今回の陳情書をめぐり議論している議会運営委員会(議運)でも「重要な問題だから慎重に議論すべきだ」という意見が大勢である。ただ、議運では定数問題を考えるために、議会事務局が調べた資料がいくつか出ている。

 

 例えば、「全国で人口が10万人から13万人の自治体の議員定数」。

 例えば、小金井市議会の法定議員数と議員定数の推移を示す「議員数の推移」。

 例えば、多摩26市の議員定数や議員1人あたりの面積、人口、有権者数を示す「26市 議員定数等について」。

 

 こうした資料は、議員ばかりでなく、市民が小金井市の議員定数を考えるうえで参考になるのは間違いない。

 

 議員の手元にある資料を、意見を聴こうとする市民たちに積極的に示さないのはなぜだろう?

 市民の判断を一定の方向に誘導することを恐れて、あえて提供していないのだろうか。

 客観的なデータよりも、市民の「実感」を重視したいがために、意図して説明しないことにしたのだろうか。

 市民の「定数削減」に対する関心や熱意を測る狙いもあって、ことさらに素っ気なくしているのだろうか・・・・。

 

 いやいや、そのような危惧や深謀遠慮があったとしても、上記の3点の資料ぐらいは、ホームページなどに載せたり、図書館や公民館・分館といった公的施設で配布したりするなどの配慮をすべきだったと思う。

 

 そうしたデータを押さえたうえで、さらに市民の視点を通じて定数削減問題について意見を求める方が、せっかくの公聴会を意義あらしめると確信するからである。

 

 最後に私自身の考えを述べたい。

 議員の定数問題を考えるうえで大きな障害となっているのは、市議会の活動や成果というものが市民になかなか伝わってこないという実態ではないだろうか。

 市議会はどういう存在であり、何をやっているのか。地域経営のためにどのような責任をにない、どのような役割を果たしているのか。それらが見えてこないと、小金井市に相応しい議会像の焦点を結ぶことはできない。

 

 あえて乱暴に言うと、議員定数の削減をコスト削減という観点だけで考えた場合、パフォーマンス(成果)が分からなければ、コストパフォーマンス(費用対効果)について判断できないということだ。当然、パフォーマンスには議員一人ひとりの資質、見識、行動力なども反映してくる。 

 

 その意味で5月13日の議会報告会は、反省点はいくつかあるにせよ、議会の実像を伝えるうえで重要な第一歩だった。

 議会はどのようにあるべきか。議会基本条例づくりのなかでそうした議論が市民も交えて深まっていくだろう。

 

 つまりは、議会と議員のあるべき姿と実像がきちんと示されるのと、議員定数の問題を切り離して考えることはできない。これが現在の私の考えだ。(了)

 

(議運に提出された議会事務局作成資料)
(議運に提出された議会事務局作成資料)
【同)
【同)

編集長はこんな人

佐藤和雄(さとう・かずお)

1957年8月生まれ。獅子座。血液型はAB型。

朝日新聞社で政治部記者時代には、首相官邸、自民党、外務省、防衛庁、旧自治省などを担当。国連本部担当のニューヨーク特派員、政治部次長、大阪社会部次長、紙面委員などを務める。著作に「検証 日露首脳交渉」(岩波書店、駒木明義氏との共著)など。2011年4月27日から同年11月11日まで小金井市長。現在は「こがねい・市民のチカラ」共同代表。小金井に住んで約20年。 

 

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

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