変える 試みる 小金井の人たち  file 6

マンガ版小金井市財政白書をつくり、ネットで公開している石塚辰郎さん

 

  ロングヘアーでメガネ美人の前原財(まえはら・たから)先生が小金井市の財政について「1人あたりの法人住民税は(多摩)26市で20番目。個人市民税は5番目よ」と教えてくれる。そんなマンガ版小金井市財政白書を1人でつくり、インターネット上に公開し、反響を呼んでいる。

 マンガの中では財政を分析し、理解する大切さをこう語る。

 「分析は診察のようなもの、病気は治せないけど。分析なしに、思い込みや、思惑で処方箋を作ってもやっぱり解決しないよね」

 

 

――最新の「マンガ版小金井市財政白書」を4月末にネット上で公開し、全国紙(朝日新聞)の地方版にも大きく取り上げられました。小金井市の財政白書をマンガで伝えようとと思われたきっかけは?

 小金井市の前に住んでいた日野市で「健全財政を考える会」に入っていました。まず、そこからお話したいと思います。


 日野市は2001年3月に「日野いいプラン2010」という市の総合計画をつくりました。145人の市民委員が32人の職員とともに計画づくりにあたったのです。総合計画づくりが終わったあと、市民協働による8つのプロジェクトの一つとして、「市民に分かりやすい財政資料の作成」が挙げられ、そのために市民による「健全財政を考える会」が2001年9月に発足しました。

 

 私は総合計画づくりの市民委員ではありませんでしたが、市報で「健全財政を考える会を始めます。興味ある方はお集まりください」という案内が出ていたので、応募し、入ったわけです。

 

 なぜ財政問題に興味があったかと言うと、その2年前の1999年2月に日野市長が「財政非常事態宣言」を出し、それが市報にどーんと出たのです。その時には市の財政問題については何も知りませんでした。日野市は日野自動車とか東芝とか、大きな企業がいくつもあり、「財政は豊かなんだろう」と思いこんでいました。それなのに「財政非常事態宣言」です。「一体、なぜなんだろう」という疑問が心の奥底にずっとあったわけです。

 

 その当時、勤め先の会社から、あるシンクタンクに研究員として2年ほど出向していました。そこで国土交通省の事業などについて「費用便益分析」をやっていました。公共的なカネの使われ方について、出したおカネに見合う効果があるかどうかなどを研究していたのです。それもあって、自治体の財政問題に興味が湧いたのかもしれませんね。

 

――日野市の「健全財政を考える会」のメンバーは何人ぐらい? どんな活動を?

  市民だけで20人ぐらい。それに事務局として当時の企画調整課の職員が入っていました。最初のミッション(任務)の「市民に分かりやすい財政資料をつくる」ために、まずは勉強し、「市民財政レポート」を翌年8月に作成しました。市報の1ページ分ぐらいを使って載せたと思います。私たち市民で原稿をつくり、市職員に見てもらって掲載しました。

 

  平日はなかなか集まることができませんので、土曜日に2週間に1回のペースで集まり、議論をしました。最初はフリーディスカッションをしていたのですが、議論がぐるぐる回り始めたので私が議事録というか、「こういう議論でしたね」というまとめの文章を書いているうちに、なんとなく原稿を書く役が回ってきたわけです。

 

 この市民財政レポートをつくった後、こちら側から「市民と行政のコミュニケーションツールとして財政白書を作りましょう!」と市に提案しました。それで「じゃあ財政白書をつくってください」という流れになったのです。

 

――それが2005年6月の「市民が市民のために分かりやすく作った」という「日野市財政白書」ですね。どんな狙いを持っていました?

  3つの狙いがありました。

 「財政に関心を持ってもらう」「財政を分かりやすく説明する」「市民の行動を喚起する」です。

 

 このなかでは「市民の行動を喚起する」というのが新しいと思います。こういう経緯がありました。前の代表の方が老人会などで市の財政について厳しいことを説明すると、「なるほど財政が厳しいというのは分かった。それで市民としては何をしたら良いんだ?」と聞かれることが多かったというのです。それで、市民として何をしたらよいかを最後に書くべきだろう、と。

 

 行政がそのようなことはなかなか言いにくいのかもしれませんが、市民だからこそ言えることがある。今の代表の方も市民として行動する必要性を強調しています。

 

――財政白書づくりで苦労したのはどんな点ですか?

  最初はなかなか議論がかみあわない。集まったメンバーの中には最初から市を批判しようと思っている人もいました。一方、そうなると市の職員は警戒するようになります。なんとかうまくいったのは、一つは総合計画の時から市との接点があった。それと基本的にそんなに無茶なことを言う人が大勢ではなかった。財政を考えればものをいうときに、そんなに無茶なことは言えないわけです。

 

 ということで、全般的にバランスのとれた議論ができていたので、市からもある程度の信頼を得られたということでしょうか。「市(行政)にべったりにならないように」ということも注意しました。

 

動画版の日野市財政白書で説明する石塚さん(左)
動画版の日野市財政白書で説明する石塚さん(左)

――日野市財政白書をつくられた後、今度は動画版、さらにマンガ版を作ったわけですね。両方とも見てきました。

  すみませんねえ(笑)。動画版を最後まで見る人はあまりいないんじゃないかな。僕も作った後は、最後まで見たのは一回しかない。動画版には、私とメンバーの奥さまが出ているのですが、原稿を見ながら話すとどうしても棒読みになるんですね。それに長すぎました。

 

 動画を作ろうと思ったのは、財政白書の紙版があまり読まれていなかったのと、同じような財政白書を3回つくったわけですが、書くことがあまり変わらない。しかし、データを更新しなくてはいけない。手間がかかって大変ですが、基本的に行政は手伝ってくれない。モチベーションが上がらない。だんだんしんどくなってきた。行政が例年の仕事として財政課の職員がやるのであればそれほど苦にならないと思いますが、市民活動としてやっていこうと思うとどうしても苦になる。面白いことを次々にやっていかないとモチベーションが保てない。

 

 動画版をつくったのには、「日本初のものを日野市でやりたいな」という思いもありました。全国初のものを打ち出して、日野市以外から注目されることによって、日野市の職員や市民に関心をもってもらい、日野市を良くしていこうと考えたのです。

 

――マンガ版は石塚さん個人が考えて、作ったのですか?

  そうです。動画版はつくるのが大変な割に、あまり見てもらえない。動画版は30分ぐらいあります。そうだとネット上ではなかなか見てもらえない。福岡県の糸島市では職員の新人研修で使ったいただいたようですが、そういう風に見ざるを得ない環境でもない限り最後までみていただけない。

 

 「やはり見てもらうにはマンガかな」と個人的には思っていました。それで一人で絵を描く練習をしてみたのですが、絵が下手すぎて全然話にならない。

 

(マンガ版小金井市財政白書から。作者(石塚さん)がクマのぬいぐるみで登場)
(マンガ版小金井市財政白書から。作者(石塚さん)がクマのぬいぐるみで登場)

 

――マンガは好きなんですか?

  いや、それほど。そんなに読んでいるわけでもないし、詳しいわけでもありません。だれか絵を描ける人はいないかな、と探してみたりもしました。

 

 たまたま、会社の仕事がらみで「東洋経済」という経済誌から私がインタビューを受けました。自分の記事が出ている「東洋経済」を買って読んでいると、「絵が描けなくても、マンガ作成ができるソフトが発売される」という広告が出ていたのです。これだ!と思って飛びついたのです。

 

――石塚さんが「萌えキャラ」のマンガを描いているのだとずっと思っていて、「うまいなあ」と感心していたのですが。

  まさか、とても無理です(笑)。このマンガ作成ソフトには、財政白書で使っている女子高生や先生らのキャラが用意されていて、それを自分の好きなようにポーズを変えることができます。

 背景もあるのですが、どうもこのソフトは当初、「学園もの」のマンガを想定していたようで、背景は学校しかない。教室とか校庭とか。だから、そういう道具建てのなかで、どのように財政の話をつくるのかというのが、難しかったですね。ただ、このソフトのすごいところはどんどん素材が追加されていくことです。服装とか、小道具とか。最近は、会社のオフィスを舞台にしたものも出てきました。日野市のマンガ財政白書は、このソフトが発売されてすぐにつくったので、背景は学校しかありません。


――つくるのにどれくらいの時間がかかるのですか。

  日野市版で1カ月ぐらいでしたかね。1ページに大体2時間ぐらいかかるのですが、それはすでにセリフや流れができていて、マンガにする作業だけにそのくらいかかるということです。

 

 今回の小金井市版では、小金井市の課題である庁舎問題とごみ問題の部分を追加したのですが、それを描くのに1カ月ぐらい費やしました。そのうち3週間ぐらいは、どのようなシナリオにするかを考えていました。そこが一番難しかったですね。

 

 財政の話と、市政の話をどうつなげていくか。つなぎが非常に難しいですね。市政の課題を取り上げると、財政の話が出てくるのですが、そうかといって「財政問題が決着すれば、課題は解決するのか」と短絡的には結び付きません。

 

 しかし、基本的な数字の話をきちんと押さえて議論しないと、建設的な議論はできないと思っています。財政など基本的なところを押さえていない議論が多すぎると感じています。

 

――マンガでは日野市の庁舎が小金井市の本庁舎よりも床面積が4倍近くもあるのに、維持経費があまり違わないというデータが示されていますが、これは意外でした。

  ええ、私も並べて比較してみて驚きました。第二庁舎の賃貸料の高さにも驚きました。この値段で貸せているオフィスは多摩地域ではほかにないのではないでしょうか。

 

(マンガ版小金井市財政白書から)
(マンガ版小金井市財政白書から)

――マンガの最後のところで、解説役の前原財(まえはら・たから)先生が「投票したらお任せではなく、市民がいろいろな視点から受益と負担のバランスを含め、チェックすることが必要よ」と話していますが、ここに石塚さんの強いメッセージを感じます。 

 行政や政治家は「市民はあまり財政に関心をもたないだろう」「財政の話をすると石をなげられる」などと思っている人が多いかもしれませんが、総合計画づくりに参加した市民たちは財政は大切だと考えるわけです。受益と負担の問題を考えなければいけないな、ということは多くの市民が心の底で感じていると思います。

 

 政治家たちは「市民は自分の利益に関係する話しか関心をもたない」と思いこんでいるかもしれませんが、市民の意識はもう少し先に進んでいます。

 

――さて最後に、小金井に転居された理由と、住んで1年のご感想をお願いします。

  日野市では家を借りていたのですが、区画整理事業の対象となり、転居せざるを得なくなりました。小金井市はごみ問題があることは知っていましたが、子どもの通学の便などを考えて、決めました。住んでみると良いところだと思います。お店もチェーン店ばかりではなく、小さな古い店もあって。

 

石塚辰郎(いしづか・たつろう)さんのプロフィール

 1968年9月生まれ。宮城県多賀城市出身

仕事:会社員

趣味:財政分析・読書。休日は市内にとどまっていることが多い。

小金井へは:昨年5月に日野市から転居。本町在住。

 


 

石塚さんの「マンガ版小金井市財政白書」はこちらから。また、ご本人による「マンガ版小金井市財政白書」の解説などはこちらからどうぞ。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

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 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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