変える 試みる 小金井の人たち     file34-2

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「教育ってなんだろう?」こがねい連絡会代表 可知めぐみさん(後編)


学校教育は時に、国家による国民の統制手段となりうる。

忘れやすい私たちだが、そのことを覚えている人は少なくないだろう。

今、道徳が「教科」として教えられ、子どもたち一人ひとりの習熟評価が始まろうとしている。そこに危うさはないのだろうか。


研究者らとともに、この問題を少しでも多くの人に知ってもらい、考えてもらおうとしている「教育ってなんだろう?」こがねい連絡会。


代表の可知さんは、かつて「人生そのものを諦めていた」少女だったという。

少女の胸の底に沈んでいた思いとは――。

そして、「諦め」を変えたものとは――。

――1月31日に「教育ってなんだろう?」こがねい連絡会が主催した勉強会は、「道徳が教科になると何が変わるのか」がテーマでした。どのような問題意識からこれをテーマに選ばれたのですか?


今の政府の教育方針というのは、おカネをかけてかけがいのある――ある意味で将来的に国の役にたつ――エリートにはおカネをかけるが、そうではない子どもたちの教育は最低限で良い、という考えに基づいていると思うのです。


私たちの時代は、貧しい家庭の子どももかなりがんばれば、大学まで行くことができました。しかし、今は違います。社会的な流動性が失われ、もっと前の段階で格差が固定化してしまうのです。そうした子どもたちに対しては、政府はおカネをかけない代わりに、道徳教育によって子どもたちが荒れないようコントロールしようとしている。道徳の「教科」化は、それが狙いだと思います。


私がなぜそこにこだわるのかというと、根底には「日の丸・君が代」の問題があります。この話をすると長くなってしまいますが・・・。


――どうぞ、どうぞ。


私は名古屋市で育ち、公立の小中高に行きました。小学校の時――この話をするとみんな『管理教育の愛知県だからねえ』というのですが――式の時にかならず国旗掲揚があるのです。


例えば始業式。当時は体育館がなかったので、校庭でやるのですが、校舎の前に国旗掲揚のポールがあり、「前へならえ」「国旗の方を向け」と掛け声がかけられ、日の丸がポールにするすると上がっていくのを直立不動でじっとみている――。


――単なる始業式で国旗掲揚というセレモニーがあるというのは、あまり聞いたことがないですね。


そうでしょう。その時、「なんで私はこんな頭を押さえつけられるようなことをさせられているんだろう」と感じたんですね。たぶん、私はあまり集団生活というのが得意ではなかったと思うんですよ。「前へならえ」と言われるのもあまり好きじゃないし。一応、「良い子」にはしていましたが、すごく変なことだなあと思っていたんです。


――中学、高校でも?


中学校は記憶にありません。高校はどうだったかなあ・・・。あっ、ありましたね。私は実は大学紛争がピークのころに高校時代を過ごしていて、「日の丸・君が代、おかしい!」と言えた世代でした。


――大学紛争によって東大が入試を中止した出来事に代表される1969年、いわゆる「1969」世代ですか?


その年、高校2年生でした。学校教育そのものにも疑問が出てきたし、「日の丸・君が代」への疑問の声も上がっていました。その中で、様々な「気づき」がありました。


――大人になってから教育問題に関心をもたれたきっかけは?


子どもを育てるようになり、うちの娘を無認可のある保育園に入れました。その時、10何人しかいない保護者の中に、そういう問題意識をもった人たちが何人かいたんです。メンバーの一人に婦人民主クラブに参加している人がいました。小金井市内にはほかにも何人もいらしたようでした。


1989年か1990年に学習指導要領が変わって「日の丸掲揚・君が代斉唱をきちんとやるように」という指示が文部省から出たのです。学校によって対応に差が出ました。それに対して、婦人民主クラブのメンバーたちが「監視に行きましょう」ということで卒業式を見に行ったりしたんですね。


私は「監視」にはいきませんでしたが、その年がちょうどうちの娘の小学校の入学式でした。入学式の朝、メンバーたちがつくった「日の丸・君が代の問題を考えましょう」というチラシを、私も小学校の前で配ったんですよ(笑い)。


――小学校では卒業式のあり方について学校側へ申し入れをされていましたね。


南小への申し入れは私が始めたわけではないのです。私たちの1年上で学童保育で一緒だった人たちですね。そのあとから、うちの下の息子が卒業する2000年ぐらいまでは、毎年、申し入れに署名をしてくれた人たちと一緒に校長室に行きました。


その当時、学校に申し入れ書を持っていくと、先生たちが「私たちにその申し入れ書をください。職員会議できちんと話し合いますから」とおっしゃってくださいました。


特に、(同じフロアで卒業生と在校生が向かい合う)「フロア形式」の卒業式がすごく温かい雰囲気で良かったから、「それを続けてほしい」と求めてきました。


――それが2003年10月23日の東京都教育委員会による「10・23通達」(注)でがらりと変わってしまったわけですね。


そうです。


――そうした申し入れの根底には名古屋市の小学校時代での体験があるのでしょうか。


うーん、そう言われるとそうかも(笑い)。でも、いろんな疑問に思ったことを、私は子ども時代、高校までは「でも、私は周りにあわせるしかないんだ」とずっと思っていたし、いろんなことを諦めていたんです、どっちかと言うと。人生そのものを諦めていたのです。特に女性である、ということで。


――そうですか!


そうなんです。それが、高校時代に学校側に生徒会役員として疑問をぶつけるとか、「ベトナム戦争をどう思うか」「沖縄の基地からアメリカの戦闘機がベトナムに向けて飛び立っていくことを黙って見ていていいのか」という議論をクラスで授業をつぶして何回もやっていたんです。


それを通じて、「あっ、言ってもいいんだ」と思ったんです。さらに、当時、アメリカでウーマンリブ運動が起きて、日本でも(ウーマンリブ運動の先駆者である)田中美津さんが本などを書いていました。それを読んで「私は、諦めなくてもいいんだ・・・」と初めて思うようになったんです。


中学生のときには先生に反発しこともありますが、最後には諦めなければいけないんだって、本当に思っていましたからね。


というのも、私には二人の兄がいます。父は大学で教えていて、「リベラルな人」という評価にはなっていました。でも、無言の期待や圧迫を感じていて、やっぱり「私の道はこうだ」と勝手に思っていたところがありました。母はそれを言葉にしていましたしね。男の子は成績がいいほうがいいけど、女の子はそこまでしなくてもいいよ。結婚することが幸せだから――というようなことを、勉強していても言われますしね。


そう言われると「なぜ、そうなるわけ!」と、おなかの底で思っていました。つっかかったりはせずに、黙っているのですが、実はそう思っていたのです。


――それが高校時代の経験をきっかけに変わっていったのですね。


そうです。私自身は高校2年生から生徒会執行部に入っていて――それも自分のカラを破りたくて入ったのですが――生徒会執行部のメンバーの多くが(高校)全共闘の活動に入っていった時代です。べ平連のデモに出るくらいで、積極的に私が何かをしたわけではありません。


でも、この時代に「変えようとしたら変えられることがあるかもしれない」と思ったのは大きかったと思います。


(終わり)

こがねいコンパス第66号(2015年2月8日更新)

可知(かち)めぐみさんのプロフィール

1953年1月、名古屋市生まれ。保育士やライターなどを経て、現在は主に小中学生向けのニュース解説誌『月刊ジュニアエラ』の編集に携わる。趣味は山歩きや音楽鑑賞。昨年夏からはクラリネットに初挑戦。「なんとなくひょうきんな感じがして」クラリネットを選んだという。小金井市東町在住。

(注)東京都教育委員会の「10・23通達」

 2003年10月23日、石原県政の下で東京都教育委員会が、入学式や卒業式などにおける国旗掲揚・国歌斉唱を教職員に周知徹底させ、校長の職務命令に従わない教職員については服務上の責任を問うことを内容とするもの。


 通達後、現場への管理が強まり、卒業生と在校生が向かい合う形のフロア形式や、「君が代」斉唱の前に「内心の自由」について説明することなどが禁じられたという。以下がその本文。


          《入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について》

東京都教育委員会は、児童・生徒に国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づき入学式及び卒業式を適正に実施するよう各学校を指導してきた。


これにより、平成12年度卒業式から、すべての都立高等学校及び都立盲・ろう・養護学校で国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されているが、その実施態様には様々な課題がある。このため、各学校は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について、より一層の改善・充実を図る必要がある。


ついては、下記により、各学校が入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通達する。

               記


1 学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。


2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」のとおり行うものとすること。


3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。


別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」


1 国旗の掲揚について

入学式、卒業式等における国旗の取扱いは、次のとおりとする。

(1) 国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。

(2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合、国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左、都旗にあっては右に掲揚する。

(3) 屋外における国旗の掲揚については、掲揚塔、校門、玄関等、国旗の掲揚状況が児童・生徒、保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。

(4) 国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。

2 国歌の斉唱について

入学式、卒業式等における国歌の取扱いは、次のとおりとする。

(1) 式次第には、「国歌斉唱」と記載する。

(2) 国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。

(3) 式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。

(4) 国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。

3 会場設営等について

入学式、卒業式等における会場設営等は、次のとおりとする。

(1) 卒業式を体育館で実施する場合には、舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する。

(2) 卒業式をその他の会場で行う場合には、会場の正面に演台を置き、卒業証書を授与する。

(3) 入学式、卒業式等における式典会場は、児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。

(4) 入学式、卒業式等における教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。






 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

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 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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