変える 試みる 小金井の人たち    file34-1

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「教育ってなんだろう?」こがねい連絡会代表 可知めぐみさん(前編)


ほんとうの学力とは、人を出し抜く技能ではなく、人として生きるためのものではないでしょうか。


国や家族を愛するということは、法律で押し付けるものでしょうか。


「どんな子どもも一人ひとりが大切にされるべき教育」が、いつの間にか変わってきてはいないでしょうか――。


そうした問題意識に立って、「『教育ってなんだろう?』こがねい連絡会」は小金井という地域で、保護者と教師と関心のある市民たちが集まり、子どもたちの教育をめぐる問題に地道に取り組んできた。結成を呼びかけた一人であり、代表を務めている可知めぐみさんにお話を聞く。


――「教育ってなんだろう?」こがねい連絡会は、どのようなきっかけや経緯で発足したのですか?


発足したのは2003年8月です。その年の3月に中央教育審議会が教育基本法の改正を答申するなど、教育基本法をめぐって盛んに議論されていたころです。改悪に反対する全国的な動きはすでにあり、私も日比谷公会堂での全国集会や学習会などに参加していました。


ただ、それまで何かしら取り組んできた人は(教育基本法改正の)問題について知っているのですが、地域で自分の身近な人たちは教育基本法が変わるということ自体、知らない人が多く、何が問題なのかもよく分からない。そんな状況でした。


教育基本法改正は、自民党にとっては憲法改正の前にやりたいことでした。教育基本法が変わってしまえば戦後の公教育が大きく変わってしまいます。


そうした危機感を抱いていた人たちが小金井市内にもそれなりにいるということが分かっていたので、「小金井で結びつき、小金井でこの問題への認識や関心を広げたいね」ということで、つくったのです。


教育関係の市民団体、教職員団体がそれまでも(小金井市内に)ありました。それがばらばらな形で活動をしていたので、「この問題を中心にしてつながりましょう」ということで「こがねい連絡会」という名称にしました。


私は当時、「教育を考える小金井ネットワーク」の――その15年くらい前からやってきた活動です。今は休眠中ですが――代表をやっていました。


「こがねい連絡会」をつくる際には、組合のカベも乗り越えましょう、ということで、先生たちの二つの組合(日教組と全教(注))にも参加してもらいました。また、政党への距離感はさまざまでしたが、党派とは関係なく参加していただきました。小金井市の職員団体も入ってくれました。



《(注)全教とは:全日本教職員組合の略。日教組の連合加盟問題をきっかけに日教組から分離し、1991年3月に発足。全労連に加盟している。》


――呼びかけ人の1人だったのですね。


そうです。「新しい歴史教科書をつくる会」が1997年に発足し、その教科書が文科省の検定に合格するなどの動きが出てきたため、2001年に「教科書問題を考える小金井市民の会」というのが立ち上がったのですが、そのメンバーらが呼びかけ人となりました。


――具体的にはどんな活動を?



一つは勉強会です。「教育基本法とはどんなものであり、どう変えられようとしているのか」から始まり、教育にまつわる様々なテーマについて講師をお招きしています。


最近では、2013年9月にジャーナリストの斎藤貴男さんに安倍政権が掲げる「教育再生」の狙いと動きについて。2014年2月に東京学芸大の大森直樹さん(准教授)に「第二次安倍政権の教育改革」について。9月には「子どもと未来を守る小金井会議」と、「いっしょに考えよう 3・11後の子育て」というテーマで講演や映画上映など、公民館の自主講座を共催しました。


もう一つは、「しゃべり場」です。「学力」「宿題」などのテーマを設けて、なんでも「しゃべろう」という場を設けています。


わたしたちの会のよいところは、学校の先生が参加していることです。そのため、保護者だけでは分からない学校の事情が分かったり、その一方で学校の先生からは分からない保護者の見方、受け止め方について聞くことができたり、そうした話し合いの場が実現できます。多い時には「しゃべり場」を年3、4回はやっていました。


2014年度は小学校教科書が採択される年度でしたので、現場の先生の意向を尊重するとともに、市民に開かれた形で教科書採択がおこなわれるようにという趣旨の要望書を5月に市の教育委員会に提出しました。


これは2001年から教科書採択の年には必ずやっていることです。その結果、昨年は教科書の見本本が図書館に置かれるようになり、教科書採択の前の段階で市民が教科書を手に取ることができるようになりました。さらに7月には実際に採択を決める教育委員会の会議を傍聴しましたし、そこで感じた疑問点について9月に質問書を出しました。


――現在、会員は何人?


一度でも参加された方は100人を超えていますが、正式に会員となっているのは30人ぐらいでしょうか。


――保護者や教師・元教師の方が多いのですか?


そうですね。時々、ポスターを見て、ふらりと不思議な方もいらっしゃいますが。


――可知さんにとってこれまでで最も印象的だった学習会というのは?


そうですねえ・・・。斎藤貴男さんを2006年に講師にお招きした時――まだ教育基本法が改正される前ですごく関心が高かった時期ですが――小金井市の萌え木ホールに100人以上の人が集まって、それにはびっくりしました。そのときに斎藤さんが心配されていた状況が、その後どんどん進んでいますね。成績のよい子どもの教育には特にお金をかけ、そうでない子どもには「それなりの教育でよい」という今の国の方針は、戦後積み重ねられてきた日本の教育のよい点を失わせるものだと思います。



――今年(2015年)1月31日には東京学芸大の大森直樹先生=写真=を招いての学習会がありますが、今回はどのようなテーマで?

 

大森先生が今、力を注いでいらっしゃる「道徳教育と愛国心」というテーマについてです。大森先生の書かれたものによれば、今回の「道徳の教科化」(注)の一番の狙いは、「ノンエリートへの愛国心」を強化することです。今、社会では格差が広がり、社会の下層・底辺で暮らしている人たちには不満がたまっています。その不満をうまくコントロールしつつ、国のために働くことがよいことだという価値観を強めるのが狙いではないか、と指摘されています。

 

《(注)道徳の教科化:政府の中央教育審議会は2014年10月、「道徳教育の教科化」を下村博文文部科学相に答申した。現在は正式な教科ではない小中学校の「道徳の時間」を、数値評価を行わない「特別の教科」に格上げし、検定教科書を導入する。検定教科書の導入に最低3年かかるため、教科化は2018年度からになる見通し。

 道徳の教科化は第二次安倍政権の教育再生実行会議が2013年2月、子供の規範意識を高めいじめを防ぐ狙いで提言。下村文科相が2014年2月に中教審に諮問した。

 検定教科書の導入によって「国の意向を強く反映した教科書によって、特定の価値観が押し付けられることはないか」との懸念が出ている。また、評価制度についても、答申は5段階など数値での評価はなじまないとし、学習状況や成長の様子を記述評価する方式を求めているが、「国が一律の基準を示すとなれば、思想信条の統制につながるのではないか」と危惧されている。》

 

今までも色んな方のお話を聞いたうえで思うのですが、私も大森先生のご指摘は正しいと思っています。

 

教育を考える小金井ネットワークで、津田玄児さんという弁護士をお招きしてお話を聞いたことがあります。ちょうど国会で少年法の改正が審議されていた時期で、少年犯罪についてのお話でした。

 

環境的にめぐまれない子どもたちに、おカネをかけてでもきちんと教育していく、サポートしていくことが、将来的には(社会的に)おカネがかからないことにつながると言われました。その子どもたちがいずれは社会で働き、納税者にもなっていくからです。

 

だから、少年犯罪で捕まった子どもたちには大人と同じように罰を与えるのではなく、細やかに教育し精神的にも支えていくことが必要であり、それは社会のためになることだ――。そういう指摘でした。

 

私はその通りだと思います。岩波新書で『子どもの貧困』を書いた阿部彩さん(国立社会保障・人口研究問題研究所部長)も、「貧困層の子どもたちへの支援は、結局は社会の安定につながる」と同じような主張をされています。

 

小金井というのは一見恵まれた子どもが多いように見えますが、そうではない子どもたち(注)もいるでしょう。また、おカネはともかく家庭で「気持ち」をかけてもらえない子どもたちを、もっと学校や地域でゆとりをもって見守ることができれば、子ども一人ひとりの成長を支えることになり、それが社会全体の安定につながると思うのです。

 

《(注)小金井市の子どもの貧困:市当局によれば、小金井市では子どもの貧困についての実態調査は実施していない。一方、経済的な理由で就学困難な子どもの保護者に対し、給食費や学用品費などを援助し、市が就学支援をしている児童・生徒は2012年5月1日時点で、要保護と準要保護を合わせると885人。全児童・生徒数に占める割合を示す就学援助率は12・0%。文部科学省の全国調査では2012年度の全国の就学援助率は15・64%に上り、過去最高だった=下表参照。》

こがねいコンパス第66号(2015年1月17日更新)

*後編は2月7日更新予定の第67号に掲載します。



□可知(かち)めぐみさんのプロフィール

1953年1月、名古屋市生まれ。保育士やライターなどを経て、現在は主に小中学生向けのニュース解説誌『月刊ジュニアエラ』の編集に携わる。趣味は山歩きや音楽鑑賞。昨年夏からはクラリネットに初挑戦。「なんとなくひょうきんな感じがして」クラリネットを選んだという。小金井市東町在住。


 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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