変える 試みる 小金井の人たち    file31-2

(東小金井駅高架下にオープンした新しい共同店舗「atelier tempo」での朝市会場で)
(東小金井駅高架下にオープンした新しい共同店舗「atelier tempo」での朝市会場で)

変える 試みる 小金井の人たち file31-2  

「はけのおいしい朝市」組合長 池田功さん(後編)

 

結婚した相手が大の犬好き。思いもよらなかった大型犬との暮らしが、彼の人生をそれまでとは異なる方向へいざなった。


関西から東京へ。大型犬と一緒に暮らせる場所を探して小金井へ。そして新しい出会いが、「はけのおいしい朝市」を誕生させ、その人の輪は5年の年輪を着実に刻むことによって大きく広がった。

 

お客さんに共感してもらえるものを――。それを模索し続けるとともに今、命の大切さを訴えるキャンペーンにも取り組み始めている。

 

――はけのおいしい朝市は、2009年9月が第1回でした。始まりはどのようなきっかけからですか?


そもそも朝市を始めたいと提案されたのは、(前掛け屋の)Anythingさんでおむすび屋さんをやっていた伊藤彩(いとう・あや)さんです。ある時、「ここの、はけの朝の空気がすごくいいんです。朝からお店を開けていると、散歩帰りに毎日立ち寄られる方がいるんですよ」という話をされたんですね。


朝の爽やかな空気の中で、公園を散歩し、おむすび屋さんでおむすびを買って家へ。そうやって一日が始まる――。とてもいい光景が浮かびました。


伊藤さんから「朝市のようなものができないでしょうか」と、僕や珈琲屋台「出茶屋」の鶴巻麻由子さんにご相談があり、「僕たちでできるかどうかわからないけど、やってみようか」と応じたわけです。


伊藤さんは、おむすび屋さんをやるなかで、子どもに料理を教える教室を開いたりして、地域の人との関係をすでに結んでいました。まずは、そうしたお客さんたち、地域の方たちが月一回楽しめる催しにしよう、という話になりました。


そうすると第1回目から、予想以上に結構な人数が集まりました。びっくりしましたね。2回、3回と回数を重ねることによって、地域の人たちが楽しみにしてくださる催しとして定着してきました。


一方、「朝市」を楽しんでいる人たちの中にも、この地域で商売をしたり、何かをやったりしている人がいて、「じゃあ一緒にやろうよ」ということで、組合員が次第に増えていきました。最初3人で始めたのが、4人、5人、6人と増えていき、その人たちが関わってきた人が集まるようになり、輪が広がっていったのです。さらにゲストさんを招くという方式も取り入れました。


やはり「月1回、定期的に開催している」というのが良かったのだと思います。その意味で、私たちのエリアだけで楽しんでいただこうと始めた企画だったのが、近隣の地域からも(お客さんが)来て頂く催しへと変化しつつあります。

――朝市が始まる直前のころのブログを拝見しますと、メンバーで午前6時半に集合し、「はけ」界隈を歩いていますね。あれはなぜ?


お客さまの視点になって、どういう時間の使い方が楽しめるかを、自分たちで探ってみたかったんです(笑)。まず、自分たちで感じよう。そう考えました。散歩のあと、彩さんのおむすび屋さんに行き、鶴巻さんが珈琲をいれてくれ、それを飲みながら・・・「ああ、これはすごく有意義な時間の使い方だな。朝ごはんを終えて、さあ何しようかと考えることができる。長い一日を楽しむことができる」と、肌で感じました。


――朝市を一緒に立ち上げた伊藤さんや鶴巻さんとはどのようにして出会われたのですか?


私は、もともと関西でサラリーマンをしていました。結婚を機に――私は全然そんなことは考えていなかったのですが、結婚相手が犬がすごく好きだったので――大型犬を飼うことになったのです。飼ったのをきっかけに、(犬のために)自分たちが買うものが世間にはこんなにないのかと驚きました。ペットのためのお店というのは非常に少なくて、大型店とかホームセンターとかの売り場にあるだけでした。


そんな時に、ファッション雑誌を見ていたらサンフランシスコの「GEORGE(ジョージ)」というペット用品のブランドが紹介されていて、日本にお店を出したという記事を読んだのです。


それを見た時にちょっとしたカルチャーショックを受けました。日本では「番犬文化」が長く続き、犬は外で飼うものという意識が強いと思いますが、欧米では早くから「コンパニオン・アニマル(家族の一員のように扱われるペット)」として、家の中で一緒に暮らすライフスタイルが提案されていました。


その記事を見た時に「ああ、こういうお店が自分も出来たらいいな」と思ったんですね。とんとん拍子に話がうまく進んで、大阪で(ドックデコdogdecoの)小さなお店を出すことができました。1999年5月のことでした。

――サラリーマンと言われましたが、どんなお仕事を?


私はもともとデザイン系の人間でして、化粧品会社のグラフィックデザイナーとして働いていました。


――大阪でペット用品のお店を出した後に東京へ?


最初のお店を出した後、お付き合いのできたサンフランシスコの「GEORGE」から「銀座の三越さんから声がかかっているから、池田君、行ってみない?」というお話が来たのです。


それで私が単身で東京に行き、三越さんにお店を出すことにしました。それを機に会社を辞めました。2000年3月に銀座・三越へ店をだし、翌年8月に新宿の伊勢丹に店を出しました。本格的に東京で商売をすることになったので「家族一緒で東京に住もう」と決めたのです。


東京で住む場所を探そうとした時、自分たちが飼っている大型犬が――ラブラドル・リトリーバーですが――住める物件がなかなか無かったんですね。たまたま行きついたのが(小金井市)梶野町の物件でした。大家さんも犬を飼っていらして、(大型犬を飼うことに)理解があったのです。


それで小金井のことは何も知らずに、「住む場所はここしかない」と思って小金井に来たわけです。


――それが2001年9月?


そうですね。ほとんど関西で過ごしていたので、全然土地勘がありませんでした。しかし、2人の子どもが少しずつ成長していくとともに、広い公園が近くにあったり、新宿へも30分もあれば着いたりして、「結構(小金井は)良いところだな」と気が付いたわけです。


小金井では最初、中央線の北側の地域に住んでいたわけですが、中央線が立体化され、踏切がなくなったことで南側にも遊びに来るようになりました。たまたま、ここ(現在の店舗兼住宅があるところ)に土地が空いていたので、将来のことも考え、「小金井で暮らそう」と決めて家を建てたわけです。


北側に住んでいたときから、小金井の界隈で何かものづくりできないだろうかと考えていました。TシャツにプリントをするAnythingという会社の存在は知っていましたが、(社長の)西村和弘さんとは面識がありませんでした。家を探している時に、たまたまAnythingの会社を見つけ、そこでおむすび屋さんもやっているのを知りました。「へえ、こんなところで面白いことやっている人がいるんだ」と思いましたね。


家族でお店に入り、おむすびを買って、武蔵野公園で食べました。そんなこともあって、家を建て、店を開いた時には一番にあいさつに行こうと決めていたのです。それが伊藤さんたちと知り合うきっかけですね。2009年1月のことです。


――その出会いから朝市の構想が生まれたわけですね。


そうです。


――サラリーマンからお店の経営者への転身はどうでした?


組織の一部として動く存在から、全体を見渡さなければならない立場へと変わったわけです。仕事の感覚としては、スポーツに例えれば以前はうまくパスをつなげばいいやと思っていたのが、今は常に点を取るために全体をコントロールしなければならない。仕事の手法は全然違いますね。サラリーマンとしてはある分野に集中していれば良かったのですが、独立してみて「こんなに知らないことがあったのか」と驚きました(笑い)。


――少し硬い話になりますが、「はけのおいしい朝市」と行政や商工団体との関係はどのように整理されていますか?


私たちのメンバーがそもそも行政や商工団体とのつながりが太かったわけではなかったのであまりそのことについては意識せずに開催をしていました。もともとは民間で始めたわけですから、民間だけで完結すればよいのでしょうが、規模が大きくなれば地域の皆様とのかかわりこそ本当に大切なことだと実感し始めました。私たちの個性を活かしながら行政や商工団体と関わりを持ち、地域の行事としてうまく運営していくにはどのようにすればよいか。今はそういう段階ですね。


――さらにまた硬い話になるのですが、ここ小金井でも大型店やコンビニの進出ばかりが目立ち、小さなお店が消えていっています。そうした中で、池田さんは自分のお店の存在意義をどのように位置づけられていますか?


僕は今、自分の商売のなかでは3つぐらいのことを考えています。本業はペット用品の販売業ですから、いかにペットと人が豊かにくらせる品を提案できつづけるかを1つのテーマとして考えています。


ペット業界というのはひどくて、「ペットだからこんなものでいいだろう」という素材で(ペット用品を)つくっていたり、アメリカでは大きな問題になりましたが中国産のペット用フードに薬物が入っていたりという例が多くあります。


そうではなく、国内で良質なものを生産したり、良い商品を開発や輸入することによって、ペットと人が豊かにくらせる品々を提案し続けたいと思っています。


もう一つは社会貢献です。ペットの殺処分が社会的に問題となっています。業界的な大きな問題ですが、多くのお店はペットの生体販売で成り立っていまして、僕らのようなペット用品の販売だけで商売を成り立たせていくのは非常に難しいんですね。そもそも人間とは数が違い、(ペット用品の)マーケットは狭いのです。


しかし、僕らのようなグッズショップが一般的にならなければいけないと認識しています。殺処分ゼロにしようと活動している人たちと一緒に、新しいマルシェをやりながら、活動を知ってもらい、活動をサポートしてもらう――。そんなことを考えています。


《環境省の調査によれば、犬・猫の殺処分数は減り続けているが、それでも2012年度には16万1847頭・匹の犬と猫の命が奪われた。そのうち半数がまだ乳離れもしていない犬・猫だった。そうした中で、一般社団法人「&PETSアンドペッツ」が2013年に発足し、犬猫の殺処分ゼロへの実現に向けて、動物福祉向上のための啓蒙活動と、動物福祉団体に対する支援活動などを行っていくプロジェクトを始めている。その活動の一つが、趣旨に賛同する動物好きなショップが集まり、開催しているマルシェ。》


《*以下は池田さんが経営する「ドッグデコdogdeco」のホームページから。

 dogdecoは糸川さん率いる一般社団法人&PETSの犬猫の殺処分ゼロを目指す活動に賛同し、&PETSのメインイベントであるHAPPY MUSIC FESTAへの参加をはじめ、昨年はdogdeco伊勢丹新宿店において、犬猫の殺処分の現状を知っていただき、改善していくことを目的にパネル展示やトークショー、そしてこれ以上、迷子になる犬や猫を増やさないための啓蒙活動として&PETSのメンバーご協力のもと【クリエイターやデザイナーが作るidタグ展】を開催いたしました。


また、昨年の秋、ペット関連のショップはもちろんのこと、&PETSの活動に賛同していただける飲食店、手仕事の店、または音楽アーティストの皆様、そして、犬猫の里親探しをボランティアで活動している皆様とともに【&PETS Marche】を開催しました。この【&PETS Marche】につきましても、開催することで少しでも多くの皆様に犬猫の殺処分に関する問題を知っていただくこと。また、多くの賛同者がまとまることによって社会的問題を解決していければと願っています。》


3つめはやはり地域貢献です。自分がやっている仕事、社会的な問題を改善していこうという活動は日本全国に知ってもらいたいわけですが、地域でできることはなんだろうと考えると、その一つが「はけのおいしい朝市」です。自分の仕事を通じて地域の人との関わりを持ちつづけたいと思っています。

――起業したい人からの相談を受けることはないんですか?


ないですね。そんなノウハウも持っていませんし(笑い)。自分も楽しめて、お客さんも楽しんでもらい、共感してもらえるような、そんな商売をしていくにはどうしたらよいかを考えていますし、これからも考え続けようと思います。



(終わり)

こがねいコンパス第61号(2014年11月1日更新)



◆池田功(いけだ・いさお)さんのプロフィール 


1970年兵庫県川西市生まれ。 宝塚造形芸術大学産業デザイン学科を卒業し、1992年から8年間、化粧品メーカーのデザイン、広告を担当。結婚を機に大型犬のラブラドル・リトリーバーを飼う。2000年に有限会社「ドッグ・デコ」を設立。東京で大型犬と一緒に暮らせる家を探して2001年9月に東小金井へ。2009年に「dogdeco HOME 犬と暮らす家」を小金井市中町4丁目にオープン。同所に在住。趣味はアウトドア全般。高校時代はラグビー、大学時代はアメフトで汗を流


 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

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コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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