変える 試みる 小金井の人たち  file24-2

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ドキュメンタリー映画『シロウオ 原発立地を断念させた町』を製作した環境活動家・ジャーナリストの矢間(やざま)秀次郎さん(後編)

 

チェルノブイリ原発事故(1986年)、福島第一原発事故(2011年)が起きるよりも前の時代――。

 

原発の危険性に気づいた住民たちの反対運動によって、電力会社の原発立地計画を頓挫させた地域がある。

 

長編ドキュメンタリー映画『シロウオ 原発立地を断念させた町』は、住民たちの証言を丁寧に引き出すことによって、なぜそれが可能になったかを私たちに示してくれる。

 

映画を企画し、構成を考え、製作者として資金集めなどに奔走した環境ジャーナリスト・矢間(やざま)秀次郎さんの目に映ったものとは――。

映画のチラシから
映画のチラシから

――『シロウオ』はいつごろ、どういう動機でつくろうと?

 

3・11が起きた後、私の頭はしばらく空白でした。一体、これはどうなるのか。自分に何ができるんだろうか・・・。様々な情報を集めましたが、なかなか真実は見えてこない。

 

その時、ぱっと思いついたのが、「千曲川・信濃川復権の会」が発行し、私が編集長をしている雑誌『奔流』で、「原発立地計画を『断念』させた町はいま」という特集を組むことでした。それが2012年6月7日発行の第7号です。

 

《『奔流』第7号の7ページにわたる特集記事の前文は、以下のように企画の趣旨を伝えている。

 

 いまだに東京電力福島第一原発の過酷事故に収束がみえない。放射線計測器が“生活必需品”になった首都圏でさえ、「知らぬが仏」の様相になりつつある。
 単なる風化現象ではなかろう。いま原発の現場で何がおきているのか、情報操作によって十全に知りえていないからではないか。
 こうした事故原因の解明がない理不尽な状況で、原発再稼働や電力料金の値上げ、計画停電などのおぞましさが目立つ。国民の“怒りマグマ”が潜んでいるはずがないと専断した振る舞いなのか、あらためて検証を欠かせない。
 かつて原発立地をめぐる地域闘争で推進派×反対派ともども深傷を負いながら、「原発を止めた町」が日本列島に約30か所。
 金権・利権の泥沼にからめとられ、人間支配に抗った人々にフクシマの衝撃は何をもたらしたのだろうか。
 どっこい、その生き証人にめぐり会えたらと、新潟県「巻原発」、三重県「芦浜原発」、徳島県「蒲生田原発」を歩いた・・・。》

 

編集会議にこの企画を提案し、新潟の「巻原発」(の立地予定地)にライターと一緒に行ったほか、私が担当したのが三重県の「芦浜原発」、徳島県の「蒲生田(かもだ)原発」です。この3か所を私は歩きました。

 

私は環境問題に取り組んで約40年。編集長をつとめている『奔流』は4000部を発行しています。環境問題で知り合った人たちや、『奔流』を読んでくださっている方たちが各地で案内をしたり、助けてくれました。


原発立地を断念させた3か所の町を歩いていると、こんなことがありました。

原発推進派だった人が「俺は間違っていた。フクシマの現実をみるとなすすべがない。俺は何億もカネをもらっていたんだ」と語るのです。

 

新潟では、ゴリゴリの推進派から積極的な反対派に変身したという井田忠三さんが「俺は口先だけで反対しているんじゃない。原発に反対するからには、原発に替わる自分たちの電力をつくらんばならん。だからこの小水力発電をやっているんだ」と話し、農業用排水を使って水車を回し、発電する設備を見せてくれました。

 

――この時点ですでに映画を作ろうと考えていたのですか?

 

この号は、すごい反響を呼びました。増し刷りに次ぐ、増し刷りです。読者の一人、ある大学教授が「矢間さん、まるで映画を見ているようだね」と話すのです。そして「これだけ取材をしたのならば、ここに書ききれない情報を持っているんでしょう。映画にしたらどうですか」と。ものすごく激励を受けました。

 

――そこから映画へという企画が生まれるわけですね。

 

そうです。

映画のタイトルともなったシロウオ漁。制作発表資料から
映画のタイトルともなったシロウオ漁。制作発表資料から

――『シロウオ』というタイトルはどこから?

 

第7号の四国電力「蒲生田原発」の記事のところで出てきます。産卵をするためにシロウオは川を上ってきます。それを網に誘導するために、川に小石をぽんぽんと投げるのですが、その光景を想像したとき、僕にはその小石が「原発マネー」のように映ったのです。

 

単なる石です。エサではないんですよ。でもシロウオたちはエサと勘違いして、ばっと石の落ちたところに集まると一網打尽にやられてしまう?。

ところで、紀伊水道をはさんで対岸にある和歌山県湯浅町の広川では同じシロウオ漁をするのに、石を投げることはしないのです。これは不思議でしたね(笑い)。

 

映画の中で、監督が漁をしている人に「(石に集まるのは)なぜでしょう?」と聞くと、「そら、シロウオに聞かんとわからんわ―」と言われる場面があります。その通りです(笑い)。

――監督選びはどのように?

 

私の人脈で7、8人の方に会いました。脚本を見た(監督候補の)人たちは「矢間さんが監督した方が早いよ」と言うのです。中にはカネの作り方を私に助言する人もいました。「文化庁の映画創造活動支援費1500万円をもらおう」とか。

 

映画の契約書を作るのに、小金井市司法研究会出身の竹澤克己弁護士に監修してもらいました。そうするとメールで確認がありました。

 

「矢間さん、『文部科学省、文化庁に奨励金を申請しないものとする』と書いてあるのは、『申請する』の間違いじゃないんですか」

 

こう答えました。
「いや、間違いじゃありません。私が熟慮を重ねたものです。福島原発事故を引き起こした文部科学省の責任はあまりにも重い。この映画が仮に評判を呼んだ際、『ところでこの映画の資金はどこから?』と聞かれた場合に、『文部科学省からです』と答えたらアウトなんです。福島の過酷な現実を見ていないということになるのです」

 

その契約書を監督候補の人たちにみてもらったとき、一番反応がよかったのが、かさこ監督です。「ぼく、これでいいですっ」ときっぱり言いました。

かさこ監督:本名・笠原崇寛。1975年生まれ。ブロガー、ジャーナリスト、写真家。『かさこマガジン』発行人。本作品が監督デビュー。「東日本大震災発生後、被災地を何度も取材しました。中でも福島原発20キロ圏内に入り、人が住めない『死の町』と化した無人の町を見た時の恐ろしさは忘れられません。家に帰れなくなった人の話を聞いたとき、これは福島だけの問題ではなく、そう遠くない未来に誰もが起こりうる話だとの思いを強くしました」(映画のチラシから)。

紀伊水道をはさむ2つの原発立地予定地。(制作発表資料から)
紀伊水道をはさむ2つの原発立地予定地。(制作発表資料から)

――『シロウオ』の制作発表資料に、「住民が反対運動を行い、原発計画を断念させた場所が全国に34か所ある」と書かれています。34か所から、徳島県阿南市椿町の「蒲生田(かもだ)原発」と、和歌山県日高町の「日高原発」を撮影対象に選んだ理由は?

 

(脚本をつくる)シナリオハンティングの段階で印象深かったのが、先ほど申し上げた阿南市椿町でのシロウオ漁でした。もう一つは、関西電力による原発計画を追い返した日高町ですが、原発立地を断念させた地域にはある共通点があることに気が付きました。

 

共通点の1番目は、郷土への誇りです。映画の冒頭で阿南市の漁師の人が言っています。「ここを売りとばすような人が多ければ、原発はできています」と。祖先の土地や海を守るだけでなく、「自分はここで生きていく」というプライドですよ。

 

撮影を終えて帰ろうとすると、地元の人たちから「矢間さん、待ってくれ。あと15分すると漁から船が戻ってくる。その魚を食べてから帰ってくれ」と言われた。そこまで言われたら待たざるを得ない。撮影は撮り直しですよ(笑い)。命をかけて漁をしている。その魚を食べてくれという気持ちが伝わってくる。海で生きている人たちの誇りです。

 

2番目は自治です。自治体政治に対してコミット(関与)するということをはじめから旗揚げしていますね。「政治を変えない限り、原発は止まらない」という精神です。(原発計画を止めようとする住民たちは)町議会選挙、市議会選挙、町長選挙、市長選挙、あらゆる選挙にコミットしています。敗れていることも少なくありませんが。

 

3番目は女性ですね。

「女性の力は絶対です」と話す矢間さん
「女性の力は絶対です」と話す矢間さん


――女性ですか・・・。

 

男はね、飲まされたりしているうちに、ふらふらとしちゃうんですよ。ついついハンコを押してしまうんですよ。

 

それを「何やっているのよ、お父さん! 馬鹿なことをするんじゃない!」と言って、引きずりなおすのが女の役割なんですね。映画に登場する「原発に反対する女たちの会」の代表だった95歳の元教員の女性、淡々と語っていますが、女性の力は絶対です。すごい。

 

4番目はね、歴史への回帰を忘れなかったということですね。

 

――歴史への回帰?

 

郷土史ですね。郷土の歴史に無頓着で、歴史を踏まえない運動は敗れます。その地域には固有の歴史があります。それを自覚しているかどうかは、地域の誇りにもつながってくるのです。

 

原発が立地している自治体は今、22か所。一方、追い出したのは34か所。追い出した方が実は多いのです。これが歴史の真実です。現在、原発の反対運動に取り組んでいる人たちにも、こうした過去の取り組みをぜひ参考にしてほしいと思っています。

 


《映画に登場する京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんは、このようなメッセージを映画のチラシに寄せている。
 「当時の住民は賛成派も反対派も、みんな原発が危険であることはわかっていた。ただ原発がなくても生きていける自信を持っている人々が反対できた」 》

(終わり)

こがねいコンパス第43号(2014年1月4日更新)

矢間秀次郎(やざま・ひでじろう)さんのプロフィール

1940年6月、大阪府生まれ。大阪空襲を受けて、5歳から16歳まで疎開先の徳島県小松島市で育つ。12歳の時、透きとおった海の底を見ていると、大きなカニがタコにあっという間に食べられる場面を目撃。「生きるというのは一期一会だ。絶対はなく、常に相対的に生きるか死ぬかだ」と痛感する。
1964年、東京都庁に入庁。渋谷区教育委員会、広報室、公害研究所、生活文化局、主税局等。在職中から野川の再生・保全運動に取り組み、1972年に「三多摩問題調査研究会」を組織。市民の手による科学的調査・研究の積み重ねから水環境を守る活動を展開し、「市民環境科学」を実践。現在は、「千曲川・信濃川復権の会」共同代表。『奔流』編集長。中町2丁目に在住。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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