変える 試みる 小金井の人たち  file23-1

変える 試みる 小金井の人たち File23-1

冒険遊び場(プレーパーク)を運営するNPO法人「こがねい子ども遊パーク」代表理事の邦永洋子さん

副代表で「こどものまち ミニこがねい」を担当する松下直子さん

 

大人から与えられるのではなく、子どもたちが「やってみたいと思うこと」を実現していく空間。

 

「心が折れるくらいなら、骨が折れるほうがましだ」(アレン・オブ・ハートウッド卿夫人)という精神に基づき、遊びによって子どもたちの生きる力を育んでいく場。

 

それが冒険遊び場(プレーパーク)――。小金井で誕生したのは今から11年前。どのような思いから始まったのだろうか。冒険遊び場を運営する邦永洋子さん(写真右)と松下直子さん(左)に聞いてみた。

 

*11月16日から24日は、冒険遊び場を広くアピールするため、全国で一斉に開催されます。

 

――まず、「冒険遊び場(プレーパーク)」とは何ですか?

 

邦永 今、普通の公園には大体、立て看板があって「○○してはいけません」と示されていることが多いんですね。子どもが遊ぶのに、木に登ってはいけないとか、穴を掘ってはいけない、とか。そういう禁止事項の掲示が多いと思います。

 

冒険遊び場では、そういう禁止事項を解除してもらって、子どもが「やってみたいな」と思うものができるようにしているんです。「○○してはいけませんよ」という禁止事項ばかり多いと、子どもが自由にチャレンジしていく気持ちとか、やってみたいという気持ちがだんだんそがれていくし、そういう遊び場はとても窮屈です。

 

禁止事項の多い遊び場は子どもの成長にとってどうだろうか、という思いから、ある一定の場所、つまり冒険遊び場ではそうしたことはなしにしましょうよ、そういう遊び場を作りましょうよと始まったものです。

 

――NPO法人「こがねい子ども遊パーク」のリーフレットでは、冒険遊び場について「『自分の責任で自由に遊ぶ』をモットーに掲げ、子どもたちがしたいと思うことをのびのびと実現できる野外の遊び場です」と説明されていますね。

 

邦永 「自分の責任で自由に遊ぶ」というフレーズから、「子どもに責任を負わせるのか」と、ちょっと勘違いをされている方もいると思います。このフレーズは、大人へのメッセージです。先ほど言ったように禁止事項が多いのは、自分たちで責任をとるのではなく、だれかにやってもらっているから、そうなると思うのです。

 

大人たちに向けて、「自分たちでやろうよ、私たちでできるね」というところを全面に出しているのです。

 

――「自分たちでやろうよ」というのは、そういう空間を自分たちの責任でつくろうということですか?

 

邦永 そうです。

 

松下 子どもサイドで言えば、やりたいことを禁止されるより、多少、怪我しても、やりたいことをやって怪我するんだったらしょうがないや、という感じです。

 

邦永 大人が「自分たちの責任でやるよ」と、つくった場所でないと、子ども自身は選べないことになってくる。自由な遊び場では子ども自身が自分で選んでいく体験を手に入れていくことになるので、結果として、子どもも責任というものを――重くとらえるのではなく――その時々の発達段階において自分がやったことに対して、ある程度、子どもながらの責任の取り方を手に入れていくのです。

 

それが大人になった時に、「だれかにお任せ」ではなく、「自分たちでやるんだ」という気持ちを育てていくのではないかと思っています。

 

――遊びを通じて自主性や主体性を身につけていく、ということでしょうか?

 

邦永 そうですね。

 
武蔵野はらっぱ祭りで
武蔵野はらっぱ祭りで

――冒険遊び場というのはどのように? 野外ですか?

 

邦永 はい。やはり、室内では制約が多すぎますし、野外がもたらす効果は大きいと思います。走りたいと思えばどこまでも走れますし、掘りたいと思えばどこまでも掘れますし。怪我も野外の方が、室内で遊ぶよりも少ないと感じますね。

 

今、小金井では3か所で活動しています。一番古いのは都立武蔵野公園の「くじらやまプレーパーク」で、毎週金曜日と第4土曜日。午前10時から午後5時まで。(冬季は午後4時半まで)。 学芸大学の中にある「いけとおがわプレーパーク」は水曜日の午後2時から5時(同)まで。市立梶野公園では、火曜日に午前10時から午後2時か3時ぐらいまで。こちらは乳幼児さん主体で、「親子ひろば」をかねてのプレーパークです。

 

梶野公園では、うちの団体だけでなく「梶野公園サポーター会議」の遊び場の会が水曜日の午後に「つくし」という、幼稚園児を対象にしたプレーパークを開催しています。

 

――3か所では、何歳ぐらいの子どもたちが来ていますか?

 

松下 ここに2012年度の活動報告書があるのですが、それをみると「くじらやまプレーパーク」には昨年度の1年間に延べで3379人がきました。そのうち保護者が1146人で、子どもたちは2233人。子どもたちのうち6割が未就学児で1360人を占めています。幼稚園帰りのお母さんと子どもが多いですね。

 

邦永 学芸大学にある「いけとおがわプレーパーク」には、1937人が参加。保護者が378人なので、子どもたちは1559人。子どもたちのうち6割の968人が小学生です。学芸大学の中にあるということもあって、大学生も136人が参加しています。梶野公園は集計はしていないのですが、幼児が中心です。3歳前の子どもたちが多いかな。

 

――成長段階に応じて遊びの内容は少し変わりますか?

 

邦永 そうですね。小学生になると集団遊びが入ってくるし、穴を掘ったり、木に登ったりというのも派手ですよね。

 

――子どもたちを見ながら、遊びのメニューを変えていくのでしょうか?

 

邦永 メニューというよりは、子どもが「やってみたい」というものに付き合っていく、という感じでしょうか。こちらからイベントのように仕掛けていた時期もあるのですが、これだけ頻繁になると、それよりはいつも来ている子たちが何をしたいかで決めていきます。

 

――子どもたちの相手をする大人を「プレーリーダー」と呼んでいるそうですが、小金井では?

 

邦永 プレーリーダーとなる専門職員に週1回来てもらうというのはなかなか難しく――雇っていた時期もあるのですが――今は、世話人がプレーリーダーの働きをするという形をとっています。実際に10年以上、活動をしてきているので、世話人でも十分にプレーリーダーとしての役割を果すことができています。

 

――世話人は何人いるのですか?

 

邦永 全体で10人ぐらいです。プレーパークごとに必ず少なくとも3人はいるようにしています。世話人以外のボランティアを含めると5人以上は大人が関わっています。

 

――今は秋ですが、この時期だと例えば「くじらやまプレーパーク」ではどんなことをして遊んでいるのですか?

 

松下 ススキが生えているところに入って行って秘密基地ぽいものや迷路をつくったり、木の実をとったり、一年中焚き火はやっているけど、シーズンなので焼き芋やウインナ、マシュマロなどを焼いたり。特にこの時期は焼き芋の量は多くなりますね。

 

――学芸大内の「いけとおがわプレーパーク」では?

 

邦永 池があり、盛り土のようなところがあります。その上をおいかけっこしながら松ぼっくりを探してそれを人にぶつけてみたりとか(笑)、盛り土のところを掘って「ダム」を作ったりとか、火をおこしてそれに拾った銀杏を入れ、はぜるのをみて楽しむとか(笑)。

――さて、この活動はいつごろどういうきっかけで始めようと思われたのですか?

 

邦永 貫井南公民館の女性学級、「子育ては未来育て」というテーマで10回の講座があったんですね。その中で、日本で初めてプレーリーダーになった天野秀昭さんが講師として招かれ、お話を聞きました。子育ての中で忘れたくない思いを形にするそんな感じの講座の流れがあって、最後の回の時に、それぞれが課題をもってやってみたいことがらでグルーピングをされたのですが、そこで「プレーパークをやってみたい」という人たちが5人ぐらいいたのです。そのメンバーが今につながっています。2002年でしたね。

 

その翌年に公民館の職員の方から「女性学級をプレーパークの講座にしてみませんか」という提案があり、それで「プレーパークをつくってみよう!」というような連続講座をやったんです。そこでまた仲間を集め、「小金井にプレーパークをつくる会」が発足したというわけです。

*天野秀昭さん:1981年、国内初の常設の遊び場である世田谷区の「羽根木プレーパーク」で、日本で初めてのプレイリーダーとして活動を開始。プレイリーダー養成のためのプログラムの開発・実施しているほか、子ども専用の相談電話「チャイルドライン」を開設し運営に当たっている。東京都の「子どもの権利擁護システム検討委員会」委員、内閣府「青少年の育成に関する有識者懇談会」委員などを歴任。大正大学人間学部特命教授、NPO法人「日本冒険遊び場づくり協会」理事。

――なぜ、その時、「プレーパークをやってみよう」と思ったのでしょう?

 

邦永 その講座の中で――ちょうど小学校の指導要領が変わって「生きる力を学校でつける」というのが入った年だと思うのですが――天野さんが開口一番、「学校で生きる力なんか育つわけがないじゃないですか」とおっしゃった。それにわが意を得たり、と思ったんです。もちろん、学校で育てられるものはいっぱいありますが、学校では他人と評価されたり、自由に生きることも縛られます。そこだけでは育つわけはない、家庭や地域で広いところで子どもを育てようとしないともっと苦しくなるばかりと思っていました。

 

そのことを周りの人に話そうと思ってもなかなか話す機会がなく、また、自分がそう思っていても他の人はそうは思わないのかなと考えていたところで天野さんのお話を聞いたので、「私が子育てをするうえでこの遊び場は良いかもしれない」と思ったのです。

 

――邦永さんは学校の先生の経験がおありと聞きました。

 

邦永 中学校、高校の講師でした。学校現場を知っていたので、そう感じたところもあるかもしれません。

――松下さんは?

 

松下 この講座を受けるきっかけは、貫井南児童館に子どもを連れて通っていたとき、児童館の職員に「天野さんの講座があるわよ」と誘われたのですが、その前に新聞で天野さんのコラムを読んでいて「こんな遊び場があると良いな」と思っていました。自分も公園とかでなんとなく遊ばせにくさのようなものを感じていましたから。天野さんの講座を聞いて面白そうだと思ったり、自分自身が木登りや外遊びが好きだったこともあって、やってみようと思ったんですね。

 

――今の子どもたちの「遊びの空間」をどう見ていますか?

 

邦永 今の子どもたちは早い時期からゲーム機を持っているので、それよりも楽しいことを見つけさせるのは大変だなと思います。小さいときから外で遊ぶ経験がある子とない子では、ゲームにはまっていてもやめられるかどうかで差があるんじゃないかと思います。

 

もう少し、外で遊ぶ機会があると――外と言うのは嫌なモノに出会うことも結構あり、それに慣れるようにもなります――光を感じたり、風を感じたりという感覚の育ちも全然ちがうんじゃないでしょうか。

 

松下 「不審者」が出たりして、外で遊ばせるのはあまり安全じゃないと言われ出し、遊ばせにくいなと感じています。「知らない人と話をしたらだめ」とも指導されていたりして、それに地域の小さなお店がどんどんなくなり、店先で子どもたちがお店のおじちゃん、おばちゃんと話す機会もなくなりました。

 

学校と家庭と友達のお母さんとだけ話す・・・。今、子どもの地域の関わりあいが「知っている人同士のつながり」しかないような気がしています。私は子どもたちを見るとすぐに話しかけたりするのですが、それに応えてくれる子どもたちは少なくなってきているように思います。

 

――小金井でのプレーパークは今年で11年目に入ったわけですが、やってこられてどのような成果を感じていますか?

 

邦永 小金井の子どもたちにとってどうだったかは、まだ分かりません。私たちは、私たちでやり続けてきて仲間が出来たな、というのと、自分がやっていることが夢のようになっていると感じています。

 

――「夢のように」とは?

 

邦永 こんな大人になって夢を持ちながら活動をするとは、思ってもいなかったんですね。「夢の種まき」をするんだという気持ちで、いろんなところでプレーパークをやっているということですね。

 

それと、自分の子どもたちとのかかわり方を絶えず考えるようになったということでしょうか。学ぶ機会になったと思います。その活動を通して色んな人とつながる機会を得ることもできました。

 

――松下さんは?

 

松下 「自分の居場所」ができたというか、武蔵野公園や学芸大、梶野公園などの場所により親しめるようになったりとか、プレーパークに来る子どもたちと仲良くなることでエネルギーをもらったりとか。自分の子どもからはそっぽを向かれていますが(笑い)、来てくれる子どもたちから笑いかけてもらうとうれしいしですね。それからロープワークや「光る泥団子づくり」、草木染め・・・。いろんなことを経験してたくさんのことができるようになりました。

 

子どもも育ちますが、お母さんたちもたくましくなっているのを見るのも頼もしい感じですね。自分や私たちの団体もともに成長しているんだろうなあ、と思います。

 

(前編終わり)

こがねいコンパス第40号(2013年11月16日更新)

*インタビューの後編は、こがねいコンパス第41号(12月7日更新)に掲載します。12月7日と8日に東センターで開催される「ミニこがねい」のお話などが中心です。お楽しみに!

邦永洋子(くになが・ようこ)さんのプロフィール

千葉県銚子市出身。趣味は?「うーん、今は趣味をする暇はないですね。寝ることと食べることかな」。得意技は「どこでも寝れます」。

好きな言葉は「すべては自分で選んでいる」(by邦永洋子)。5人家族と猫1匹で緑町在住。仕事はNPO法人「こがねい子ども遊パーク」の代表のほか、東児童館で非常勤職員も。

 

松下直子(まつした・なおこ)さんのプロフィール

神奈川県大磯町出身。趣味はコーラスと木登り。(「木登りは得意技とまでは言えない」という)。得意技は「人にモノを頼む」。好きな言葉は「継続は力なり」「一期一会」。

5人家族で前原町在住。NPO法人「こがねい子ども遊パーク」の副代表・理事を務めている。

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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