変える 試みる 小金井の人たち  file20-2

変える 試みる 小金井の人たち file20-2
小金井市精神障害者家族会(あじさい会)会長 森田史雄さん(後編)

 

 同じように「障害者」でありながら、精神障害者は、手当のほか医療費、交通費の助成などで、身体障害者、知的障害者とは差をつけられてきた。政府は精神疾患を国民の「5大疾病」の一つとして位置付けたが、精神障害者への対応は、国のレベルでも、自治体のレベルでも遅れている。

 

 家族会は今、ただ一方的に行政側に要望を出すだけでなく、行政の担当者らと同じテーブルについて「知恵を出す」試みを始めた。

 

*前編からの続きです。

――家族会の取り組みと役割としては三つがあり、第1が「同じ悩みを持つ家族同士が、気兼ねなく話すことで互いに支えあう場」、第2が書籍、DVD、研修会や講演会などを通じての勉強というお話でした。家族が病気や症状などについて正確な知識を持ち、冷静に対応することが再発率の低下にもつながるというご説明によって、家族会の存在と役割の大きさを改めて認識しました。さて、最後の三つ目は何ですか?

 

精神障害者が住みやすい社会の実現に取り組む、ということです。
具体的な一つとしては、(前編で)お話をした通り、本人が退院して家に戻っても、リカバリーのためにSSTを受けたり、デイケア、作業所に通ったりする「場」が必要です。それをつくるには我々の力だけでは実現できません。もちろん我々も努力しますが、行政、地域にお願しなければなりません。そのための活動です。

 

実は、精神障害者への対応は身体障害者、知的障害者への対応と比べるとかなり遅れています。

 

障害者自立支援法によって、三つの障害は区別されないと規定されましたが、まだまだ差があるのです。市議会に陳情書を出したり、市長や市当局に要望書を出したりしてきました。

 

《 小泉政権時代に成立した障害者自立支援法は2006年に施行。障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず、障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービスを、共通の制度により提供することを定めた。同時に、サービスを受ける障害者の「応益負担」を求め、障害者や家族は大きな負担を強いられた。このため各地で違憲訴訟が起き、民主党政権は違憲訴訟の原告団と「速やかに応益負担制度を廃止する」などを約束し、裁判は和解した。》

――市議会に出された陳情にはどんなものが?

 

最近では2010年8月に、小金井市の障害者就労支援センターの正規職員1人の増員を求める陳情書を出しました。身体障害者と知的障害者には専任の常駐者がいたのですが、精神障害者にはいなかったのです。全会一致で可決されました。

 

《 2007年12月に開設された障害者就労支援センター「エンジョイワーク こころ」は市役所第二庁舎にあり、NPO法人「りんく」が運営している。相談者数は、2007年度の4か月で306人、2008年度790人、2009年度877人と増えていた。陳情の採択をうけて、小金井市は2012年度から運営委託料を514万円増やし、常勤職員を3人態勢にした。 》

 

精神障害者への対応は国レベルでも遅れていますし、地方でも遅れています。財政の制約もあって、私たちが黙っていてはなかなか進みません。


――「精神障害者が住みやすい社会」を実現するため、様々な要望があるのでしょうが、そのなかで三つだけ挙げるとすれば何でしょうか?

 

一つ目は身体障害者、知的障害者と精神障害者の間で差をつけないでほしい、ということです。この7月30日に東京都精神障害者家族会連合会(通称・東京つくし会)として、猪瀬都知事、木村東京都教育委員長あてに要望書を提出しました。

 

都知事あての要望書では第1に「心身障害者への福祉手当、医療費助成を精神障害者にも同じように適用してください」と求めました。つまり、いまだに差があるのです。

福祉手当、医療費助成以外でもJR線の旅客運賃、航空運賃、タクシー料金では身体障害者、知的障害者は割引・減額になりますが、精神障害者の場合はなりません。

 

小金井市の障害者福祉センターでは緊急一時保護の宿泊が、精神障害者だけは認められていませんでしたが、ようやく今年4月からできるようになりました。何回もお願いしてようやく実現したものです。

 

二つ目は就労支援ですね。企業が雇うべき「障害者」の範囲を精神障害者にも広げる改正障害者雇用促進法が今年6月13日に国会で成立しました。

 

障害者団体などが約10年前から義務化を訴えてようやく実現したものです。施行は5年後の2018年4月からですので、この間になるべく実績をつくり、環境を整えてほしいと思います。

 

精神障害者にとって、家から外に一歩でるということは本当に大きな意味を持っています。私の息子も窓を閉め、カーテンを閉め、ずっと部屋に閉じこもっていました。

 

そこから外へ踏み出すというのは大変なことなのです。だからこそ、デイサービスや共同作業所、仲間と話し合うことができるなどの「場」が必要なのです。

次のステップとして就労があります。精神障害者の特性に合った就労の実現が望まれます。

――あじさい会の「創立20周年記念誌」を見ると、この10年ほど、毎年のように要望書を市に出されていますね。

 

そうです。しかし、ただ要望書を出すだけではだめだと最近は痛感しています。やはり、行政の担当者に実態を知ってもらわなければだめなのです。

 

そこで昨年から、家族、当事者、市の担当者の三者が一緒になって話し合う場を、年に2回もつことにしました。行政からは担当の課長、係長、それに専門家である精神保健福祉士が出席しています。「『要望』を一方的に出すよりも、みんなで『知恵』を出そう」と話し合っているのです。


三つ目は、早期発見への取り組みを強化することです。
これまで申し上げたように、精神障害というのはなかなか早く見つけるのが難しい病気です。体調がおかしくなったときには、内科医に見てもらうことが多いと思います。その内科医の方から心療内科や精神科へと連携してもらいたいのです。早期発見と早期治療には診療科間の連携が不可欠です。


病気を早期に発見し治療すれば、病気の重篤化を防ぎ、入院しても短期間で退院でき社会復帰が容易です。早期発見・早期治療が本人と家族を救います。

 

《 厚生労働省は、地域医療の基本方針となる「医療計画」に盛り込むべき疾病として指定してきたがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。

職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加し、国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要と判断した。

 厚労省が実施した2008年の患者調査によると精神疾患の患者数は約323万人。4大疾病で最も患者数が多い糖尿病(約237万人)を大きく上回り、がん(約152万人)の2倍に上る。

 また、年間3万人に上る自殺者の約9割が何らかの精神疾患にかかっていた可能性があるとの研究結果もあり患者の早期治療や地域の病院、診療所との連携が求められている。》

 

 学校現場の取り組みも大事です。家族や教師が思春期の普通の悩みと病を識別するのは簡単ではありません。今回、東京都教育委員会に出した要望書では、学校での精神保健教育の充実を求めています。

 

オーストラリアなどではすでに学校の教職員や生徒に充実した内容の教科書を配布して啓発教育を行っています。特に教師の方たちが精神障害についての知識を深め、早期発見などの適切な対応をしていただくことが大事だと考えています。

 

 

――ところで、このインタビューは本町3丁目のコーヒーやカレーが美味しい「CAFE あん(カフェ・アン)」でやらせていただいています。NPO法人「あん福祉会」が就労移行支援のためにやられている事業だそうですね。

 

 

私があん福祉会の理事長だった時に、立ち上げたものです。障害者自立支援法に基づく事業をやるときに、何を始めればよいのかといろいろと見学に行きました。パンづくりが良いのかとか。

 

いろいろと考えた末にカフェにすることにしました。精神障害の当事者の方にとって、社会とのつながりをつくることが大事です。そうしたコミュニケーションの力を養うためには、お客様と多少でも触れ合うことができるカフェの方が良いのでは、と考えたのです。

 

(後編・終わり)  *写真は宇野正樹氏撮影


こがねいコンパス35号(2013年9月7日更新)

森田史雄(もりた・ふみお)さんのプロフィール
1940年1月生まれ。静岡県出身。小金井市へは1998年から。同年、小金井市精神障害者家族会(あじさい会)に入り、2009年から会長。
会社員時代は「技術屋」だったが、退職後は、福祉の勉強をし、社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。現在はケアマネージャーの仕事をしている。

あじさい会が主催する「精神保健公開講演会 あなたの力が家族を変える」は次の通り
◆日時 9月14日(土)13:30~16:00
◆場所 小金井市前原暫定集会施設 1階A会議室
◆講師 社会生活技術訓練士(SSTリーダー)の高森信子先生
◆参加費など 無料、事前申し込み不要

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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