変える 試みる 小金井の人たち  file20-1

変える 試みる 小金井の人たち file20-1
小金井市精神障害者家族会(あじさい会)会長 森田史雄さん(前編)

 

すべての市民の尊厳が守られ、生きがいのある幸福な人生を保つために必要な、心の健康を支えるサービスを社会に行き渡らせる――。

 

自殺や精神疾患が発生しにくい社会、精神疾患になった人々の権利が尊重され、あらゆる面で一般市民と同じように受け入れられる社会の実現を図る――。*

 

社会の偏見に苦しみ、葛藤しながらも、愛する家族のために、次世代の若者たちのために立ち上がり、社会を変えようと試みている人たちがいる。

 

*東京都精神障害者家族会連合会(東京つくし会)の「東京宣言」から

 

――「あじさい会」はどのような経緯で発足したのですか?

 

1991年9月、初代会長の猪俣龍三さんらによって設立されました。二代目会長は現在顧問の浦和完次さん。私は三代目の会長です。

 

私が入会したのは1998年ですから当時のことは直接は知りません。ただ、創立20周年記念誌や当時からの会員の方のお話によれば、その年の3月に「精神障害者に対する家族の対応」という講演を上之原会館で聞いた方たちが、「自分たちも家族会をつくろう」と立ち上がったそうです。結成を呼び掛けたのが7人だったので、「七人の侍」と呼ばれていました(笑い)。

 

家族たちの熱い思いに加え、当時の小金井保健所長さんの全面的なご支援があったそうです。

 

《「当時の小金井保険所長」の岩城弘子さんは「あじさい会創立20周年記念誌」に一文を寄せ、こう書いている。
「『 障害者に光をではなく 障害者が光そのものなのだ 』
この言葉は若い日に 深く心に刻みこまれた(後略)」》

 

――森田さんはどのような動機から家族会に入ったのですか?

 

息子が病気(統合失調症)になったのは1990年でした。発症前、つまり正式に診断される前から兆候はありました。最初のうちは本人もおかしいと感じていたようです。しかし、本当の病気になってしまうと(病気かどうかが)分からなくなります。

 

統合失調症は、高校、大学で発症する人が多いのです。うちの息子も大学生の時に発症しました。親から離れて一人暮らしをするなかで、下宿が火事になるなどのトラブルがあり、そうしたことがきっかけではないかと思います。何が直接の原因かは分かりませんが。

 

入会したのは、息子の病気について知りたかったのです。多くの方がそうですが、自分の子どもが病気であることが分からない。あるいは認めたくない。統合失調症は青年の時になる人が多く、「反抗期による行動」と受け止める人が多いのです。本人も病気であるという自覚がありません。家族も病気であってほしくないと思っている。反抗期が遅くきたかな、と。

 

統合失調症は、真面目で、世間慣れが不得手で、ストレスによって発症する人が多いそうです。私たちは、真面目だった息子の変化をみて「ようやく反抗期が来たかな」と思い、むしろ喜んでいたぐらいです。しかし、だんだん不穏になりおかしいと思って病院に連れて行くと、統合失調症と言われました。当時は精神分裂病という呼び名でしたが。

 

医師から子どもが統合失調症と診断されても、親としては病気だとは認めたくない。一方で、病気のことをもっと知りたい、同じ状況にある人たちがいればその話も聞いてみたいという思いもあります。家族会へは、そのような藁をもつかむような気持ちで入ったのです。

 

《厚生労働省はホームページで統合失調症についてこう説明している。
「統合失調症は、およそ100人に1人弱がかかる頻度の高い病気です。「普通の話も通じなくなる」「不治の病」という誤ったイメージがありますが、こころの働きの多くの部分は保たれ、多くの患者さんが回復していきます。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病と同じように、早期発見や早期治療、薬物療法と本人・家族の協力の組み合わせ、再発予防のための治療の継続が大切です。脳の構造や働きの微妙な異常が原因と考えられるようになってきています」》


同じような病気(統合失調症)の方が小金井市内に1000人ぐらいいると考えています。大体、発症率が1%弱ですから。

 

――小金井市によれば、精神障害者保健福祉手帳を持っている人は小金井市内では2011年2月末時点で507人です

 

身体障害、知的障害と違って、精神障害についてはあまりオープンにしたくない人がいます。また、家に閉じこもっていて(その存在が)分からない人もたくさんいます。

 

身体障害の場合は外見から分かる場合が多いですし、知的障害も子どものころ、発達期に判明します。一方、精神障害は20歳前後からなるひとが多く、本人にはプライドもありますし、家族も認めたがらない。だから手帳をとらないのです。

 

――家族会に入ってみてどうでしたか?

 

「眼からウロコ」という感じでした。知らないことばかりでしたから。勉強もしていませんし。それでもまだ100%、子どもが病気というのは認めたくないんですね。なんとかすぐに治るんじゃないかと思いたいのです。しかし、病気について勉強をするうちに慢性的なものであり、薬を飲まないとだめだなということが分かってきます。

 

色んな勉強をすることによって家族も救われますし、子ども――配偶者、兄弟の場合もあります――も救われます。

 

――「眼からウロコ」というのは、同じような状況にある人たちの話は、他の方から言われるよりも、受け入れやすいということも働いているのでしょうか?

 

そうですね。自分たちの話を聞いてくれる人がいるということが大きいですね。

 

(病気のことは)親や兄弟に言わないケースが多いようです。近くにいれば分かりますが、遠くにいる場合には言いません。当然、近所にも言わない。そうすると家族もストレスがたまってきます。聞いてくれる人が必要なのです。同じ苦しみ、悩みを抱える人。先輩たち。そういう方たちに自分たちの内側にたまっていた話を吐き出すのです。最初はみなさん、涙を流しながら話します。

 

聞いてくれる人がいて、胸のうちを話すと苦しみが半減します。逆に(病気となった家族が)これまでできなかったことができるようになった、その喜びを話すと、みんなで喜んでくれます。喜びが倍加するのです。

 

――「できなかったことが、できるように」というのは?

 

病気になると、これまで当たり前のように出来ていたことが出来なくなってしまうのです。例えば掃除、洗濯、買い物など日常的なことが出来なくなってしまいます。

 

――家族会のメンバーは今何人ぐらいですか?

 

30人ぐらいです。もっと増やしたいのですが、ここずっとそのぐらいですね。会の存在をご存じない方に何とか知って頂きたいと思っています。

 

――知っていても入会を躊躇するという方も?

 

いらっしゃいます。昔から住んでいる方は周りに知られたくないという気持ちが強いようです。精神障害の場合には、なかなか理解されないところがあります。

 

――家族会はどのような活動を続けているのですか?

 

家族会は、毎月の定例会を「同じ悩みをもつ家族同士が、気兼ねなく話すことで互いに支えあう場」にしたいと考えています。これが活動の大きな一つです。活動の柱は、あと二つあります。

 

その一つが書籍、DVD、研修会、講習会などを通じての勉強です。

 

今年は9月14日に精神保健公開講演会として、社会生活技術訓練士(SSTリーダー)の高森信子先生を講師にお招きして、「あなたの力が家族を変える」をテーマに話していただきます。

 

《 生活技能訓練(Social Skills Training, SST)は主に精神障害者を対象に実施されてきたが、「自立生活技能訓練」と「社会生活技能訓練」から構成される。自立生活技能訓練は食事、入浴、衣服、身だしなみ等の日常生活行動に関する訓練であり、社会生活技能訓練は、社会的ないし対人関係的な場面で求められる技能の獲得・維持を促進するための訓練といえる。(中略)わが国では現在、SSTプログラムは精神障害者ばかりでなく、知的障害児や発達障害児を対象にも実施されている。 (「障害保健福祉研究情報システム」のホームページから》

《 高森信子(たかもり・のぶこ)さん 「40歳を過ぎてから、SSTを学ぶ。世田谷区こころの相談室、カウンセラー。精神障害者の家族会、世田谷さくら会で、家族、本人を対象としたSSTを30年近く続けている。病気の人にどう接したら感情表出が低くいられるかを学ぶための研修会を、全国で行っている。ちょっとだけ対応方法を変えることで、相手が大きく改善することから、高森マジックと呼ばれています」(星屑倶楽部のホームページから)》


こうした公開講演会を毎年1回、やっています。地元の方、地域の方にぜひ聞いて頂き、理解を広げたいからです。

 

これまでは専門医を講師にお招きすることが多かったのですが、今回は統合失調症だけでなく、家族間のコミュニケ―ションを良くするうえでも役に立つお話になると思います。

 

高森信子さんの著作『あなたの力が家族を変える』で引用されている研究データがあります。統合失調症の患者さんが退院してから9か月後にどれくらいが再発しているかをみると再発率は全体で26・5%なのですが、感情表出(EE)が低い家族と一緒に暮らし、きちんと服薬している場合には6・7%に留まっており、とても低い。一方、きちんと服薬していても感情表出(EE)が高い家族と一緒に暮らしている場合には再発率は40.0%にも上っています。

 

《 感情表出(Expressed Emotion:EE) 家族が患者本人に接する際の感情表現の仕方を言う。本人に対して家族の感情表出に批判、敵意などが強く表現される場合を「EEが高い(高EE)」、そうでない場合を「EEが低い(低EE)」と呼ぶ。
1960年代から70年代にかけてイギリスのブラウンらによって始められた実証的研究によって、統合失調症の再発と家族要因との関係が明らかになった。高EEの類型としては、(1)「何もしないでぶらぶらしている」「いい年をしてだらしがない」などと、本人に対して不満や文句をあらわす批判(2)「いっそ、いないほうがいい」「病人のせいで私の一生はだいなしだ」など、本人を敵視するような発言(3)「この子は何もできないから私が守ってあげないといけない」などという、情緒的な巻き込まれすぎ――がある。 》

 

統合失調症の回復には、三つ必要と言われています。まず、きちんと薬を飲むこと。これは糖尿病や高血圧といった慢性の疾患と同じです。脳の病気ですから、薬を飲んで抑えることが大事です。

 

それから二つ目はリカバリーと呼ぶのですが、本人がSSTに参加したり、デイケア、作業所に通ったりすることです。

 

もう一つ大切なのは、家族を含む環境です。家族が家族会に入ったり、教育プログラムを受けたりして、病気に対する知識があれば、様々な症状が出ても感情的な態度を取らず、かなり冷静な受け止め方ができます。それによってEEを下げることができるのです。これらの条件を満たした時に、普通の生活が続けられ、再発率が限りなくゼロに近づくと言われています。

 

――家族の役割と、家族を含む環境が重要ということですね。

 

そうです。それは実感しています。

(前編終わり)
こがねいコンパス第34号(2013年8月3日更新)

写真は宇野正樹氏が撮影


*森田史雄さんの後編は、9月7日発刊予定の第35号に掲載します。

森田史雄(もりた・ふみお)さんのプロフィール
1940年1月生まれ。静岡県出身。小金井市へは1998年から。同年、小金井市精神障害者家族会(あじさい会)に入り、2009年から会長。
会社員時代は技術屋だったが、退職後は、福祉の勉強をし、社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。現在はケアマネージャーの仕事をしている。

あじさい会が主催する「精神保健公開講演会 あなたの力が家族を変える」は次の通り

◆日時 9月14日(土)13:30~16:00
◆場所 小金井市前原暫定集会施設 1階A会議室

◆講師 社会生活技術訓練士(SSTリーダー)の高森信子先生
◆参加費など 無料、事前申し込み不要

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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