変える 試みる 小金井の人たち  file2 

「トランジションタウン小金井」の創設者

ポール・シェファードさん

 

 

  市民が考え、動き、そして地域のコミュニティの力によって、自立的で持続可能な低エネルギー消費社会に移行(トランジション)しよう――。

それが英国生まれで世界に広がる「トランジションタウン」運動だ。

小金井に種をまき、仲間とともに一緒に育ててきた。

 ――トラジションタウン小金井は「日本という国で考え、小金井という地域で活動する」を合言葉に、地域コミュニティの復活や、化石燃料への依存を減らすことなどを掲げています。具体的にはどんな活動をしているのですか?
 「私たちは毎月一回、『トランジションタウン・バー』という集まりをもっています。みんなが顔を合わせ、色んなアイデアをブレインストーミングで生み出す場です。食事をしながら、ソフトドリンクやお酒を飲みながら、とてもリラックスした雰囲気でね。これをずっと続けていきたいと考えています」

 

――楽しそうですね。他には?
 「中心的な活動(コア・アクティビティ)として、ワークショップやイベントを開いています。その一つが、生ゴミを処理する『キエーロ・プロジェクト』です。『キエーロ』というのは、神奈川県葉山町などが購入の補助対象にしている生ごみ処理容器『バクテリアdeキエーロ』のことです。私たちのメンバーの何人かがこれを使っていますし、使い方を学ぶワークショップを何回か開いてきました」

 

――生ごみ処理の手段として、なぜ「キエーロ」を?
 「家庭での生ごみ処理機はいくつもありますが、まず私たちは電気を必要としないものを選びました。さらにキエーロは生ごみを投入してもほとんど量が増えません。正しく使えば、バクテリアが生ごみを分解し、ゼロになるのです。嫌な臭いもしません。土の庭がない家庭でも利用できます。開発者によれば10年は使えるとのことです。とても環境に優しいタイプです」

 

――小金井市で「地域通貨」を導入しようというアイデアがあると聞きました。
 「そうです。私たちは、まちの活性化、地域コミュニティの強化を考えています。地域通貨は人と人を結びつけ、交流させることによって、地域コミュニティを強めます。国家単位の経済から離れた地域経済を生み出すのです。例えば大手スーパーやコンビニエンスストアで買うと、それらのお金は都心の本社に行きます。会社の税金は小金井市には払われない。しかし、地元の商店主は小金井市に税金を収めている。私たちは地域のお店で買うことを奨励したいと考えています。コーヒーを飲む場合もスターバックスではなくて地域のコーヒー店という具合にね」

 

 「そして、私たちは市内で『仕事の機会』をつくることができるのです。英語が上手な人は英語を教える。買い物に行けない人に代わって買い物をする。そうした場合に地域通貨を使うのです。これは比較的始めやすいプロジェクトだと思います。すでに先行して始めている自治体がいくつもあるのですから。私たちはそうした自治体から学ぶことができます」

 

――ところでトランジションタウン小金井が生まれたのはいつですか?
「2008年の8月です」

 

――創設を提唱されたのは、なぜ?
 「当時、私は地球温暖化の問題や、持続可能な社会の問題について憂慮していました。『今の社会は持続可能ではない』と心配していたのです。そこでいろいろと自分なりに調べていました。トランジションタウン運動と出会ったのは2008年の春ですね。家族に会いに英国に戻った時のことです。私は直感的に、これは可能性を持った、全く新しいアプローチだと感じました。そして、日本でうまく適用できるだろう、とも」

 

――トランジションタウンのどこが、ポールさんの心に響いたのでしょう?
 「まず気に入ったのは名前です。トランジションという言葉には、一歩ずつ移行していく旅であり、共同体的なプロセスという意味があります。真のエコタウン(ECO town)になるためには20年はかかるでしょう。だからすぐに自分たちのまちをエコタウンと呼ぶことはできません。しかし、よりエコ的なまちにしようと歩んでいるのであれば、『トランジションタウン』と、すぐにも名乗ることができるのです」

 

――なるほど。
 「第二には環境問題だけを扱うのではなく、食品の安全性やピークオイル問題、気候変動、地球規模の経済的不安定さといった課題に対応する、地域共同体の復元力、レジリエンス(resilience)の問題も扱っていることです。トランジションタウンの重要な考え方は、地域が元気になることであり、地域同士の相互依存です。第三の理由は、底辺からのアプローチです。限られたおカネしか使えない小さなグループでも、何かを始めることができます。それは場合によっては地方自治体の行政という上からの支援がなくともできるのです。どこのトランジションタウンも、自治体の行政や商工会という組織と共同で進めることを次第に希望するようになっていますが、初期段階ではそうした支援は必ずしも必要ありません」


――以前から環境問題に関心があったのですか?
 「環境問題に目覚めたのは1970年代です。二度の石油ショックを経験したうえに、いつかは石油が枯渇することを知ったのです。1972年にはローマクラブの『成長の限界』リポートもでました。『スモール・イズ・ビューティフル』という言葉が世界に広がったころです。私は若く、そうした考えに強い影響を受けました」

 

 「17歳だったかな18歳だったかな、私はこういう誓いを立てたのです。『一生、自動車を持つことはしない。自転車利用者(サイクリスト)として生きていくんだ』とね。だから自動車免許証は持っているけど、車は持たないことにしています」

 

――それからずっと環境問題に取り組んでいたんですか?
 「いいえ。そのあと次第に環境問題についての意識が低くなってきました。日本で、新宿に住んでいた頃は、とてもエコ的ではない生活を送っていました。新宿だとどうしてもそうなってしまうんですね。それが小金井に引っ越すと、ゴミの分別のルールがとても厳しい。でも、それがもう一度環境問題や自分のライフスタイルを考える引き金になったのです」

 

――日本にやってきたのはどうして?
 「私の婚約者が日本人でした。彼女とはロンドンで出会いました。彼女に会いに日本に来たのが最初です。1980年代ですね。私たちは小金井市の東町に住みました。結婚の届け出は小金井市役所に出しましたね。それからまたイギリスに戻ったのですが」

 

――小金井にまた戻ってきたのは?
 「日本に再び来た後、新宿で暮らしていましたがその生活に疲れてきて、『じゃあ小金井に戻ろう』と決めました。80年代に小金井で過ごしたのが私たちの人生でも最も幸福な時期でしたから。特に東小金井ね。それが2005年10月からかな」

 

――そもそも小金井に住んだのはどんなきっかけですか?
 「日本に来て最初の頃、荻窪の四畳半のアパートで暮らしていました。あまりに狭すぎるので、大家さんに『もっと広いところはありませんか』と聞いたら、彼は小金井の物件を紹介してくれて、そこが気に入ったのです。小金井は公園がたくさんあるし、外国人としては暮らしやすい。新鮮な空気もね!」

 

――イギリスはどちらの出身ですか?
 マンチェスター近くのスットクポルト。ストックポルトは大マンチェスターを構成する区の一つだし、マンチェスターと書いても良いですよ。ストックポルトは工業都市で、工場がたくさんあって、環境汚染がひどかった。川の色は黄色で、近づくとひどい臭いでした。そこから16歳の時にロンドン近郊に家族で引っ越しました」

 

――小金井や小金井市民の印象は?
 「小金井には武蔵野公園、野川公園、小金井公園のほか、緑がたくさんあるから、ここに住むことを決めた人が多いと思いますね。学校も落ち着いた環境で、子どもたちが外で遊ぶのにも良い環境です。また、中流クラスの家庭が多く住んでいる。そして多くのNPOがあり、市民活動が盛んです。市民掲示板を見ると、たくさんイベントが掲示されている。八王子といった大きな都市と比べると、小金井は自転車でどこでも行くことができるほどの広さだし、知り合いの人も多くなる。その一方で、最初に農地を開拓した農家の人で現在の地主層と、新住民のサラリーマンの二つの層がありますよね。とにかく、小金井が好きです。洗練された街だと思う。緑があり、公園があり、住民はコンクリートジャングルよりも自然環境の方を重視しています」

 

◇ポール・シェファードさんのプロフィール


*1955年4月生まれ
*出身地:イギリスのストックポルト。16歳からロンドン
*仕事 :都内の私立中・高校の英語教師
*小金井歴:80年代に東町に、2回目は緑町に2005年10月から

◆編集部から:ポール・シェファードさんはインタビューの後、2月末に千葉県に転居されました。しかし、彼の温厚で包容力のある人柄と、小金井で果たした足跡をきちんと記録にとどめたいという思いを込めて、「小金井の人たち」の第2回で掲載した次第です。小金井が大好きなポールさん曰く、「月に一回は小金井に来ますよ」とのこと。

 

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

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コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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