変える 試みる 小金井の人たち  file19-2

file19-2 『き・まま』編集部の4人の女性たち (後編)

 

「はけ」界隈の魅力を伝え、そこに住む人々を繋ぐ存在でありたい。

そうした思いを込めてつくられている雑誌『き・まま』。素敵な場所や素晴らしい人々との出会いは、彼女たちに何をもたらしたのか――。

(前号からの続きです)
――少し下世話な話になりますが、『き・まま』は紙質も良いし、ずいぶんとおカネがかかっているような感じですね。広告もとっていませんし。

 

碧野さん いや、広告はとりたいんですよ(笑い)。

 

一同 取れていないだけです(笑い)。次号はとらないと。

 

鈴木さん 営業とかなかなか手が回りきらないのです。

 

――発行部数はどれくらいですか?

 

碧野さん 地域雑誌としては少なくない部数です。だから在庫はまだあります。

碧野圭さん
碧野圭さん
鈴木佳子さん
鈴木佳子さん

――その部数はどのように決めたのですか?

 

鈴木さん 原価計算はしましたが、おおざっぱですね。

 

碧野さん 原価計算して見積もりをとったら、千部くらいの違いなら金額的にそんなに大差がなかったんですね。だったら多めに刷っちゃえ!という感じで決めました。

 

鈴木さん かといって定価の500円というのは変えられないところがあり、それでペイするためにはなるべく多くの部数を売らなければならない。でも、そんなに多く売る自信はないよね、どうする?というような話もしていました。

 

会社で働いていたころは、営業から「在庫を抱えたらどうするんだ」とか言われ、それと戦っていたわけですが、「地道に売ればいいじゃん」という思い切りと、モノの知らなさでやってしまった、ということですかね。

 

西尾さん 創刊号は、「のちのちまで売れるのでは」という甘い気持ちもありましたね。

 

鈴木さん 今思いかえすと、営業と(発行部数について)戦ってきた時に「ああ、営業(の主張)は正論だったんだな」と(笑い)。私たち、だれも営業をやっていませんので。

 

西尾さん 雑誌を作るのはみんな経験があり、楽しくできます。一方、営業と戦った歴史は持っているが、営業の能力は持っていない(笑い)。

西尾涼子さん
西尾涼子さん
安達友絵さん
安達友絵さん

――500円という価格は?

 

碧野さん 大体、こういうリトルプレスの先例を見ると、価格はだいたい500円なんですね。ページ数もほぼ同じで、オールカラーで。

 

鈴木さん 自分たちで(イベントなどで)売ることも多いんですね。創刊号は、「武蔵野はらっぱまつり」で売りました。そうなると、やはり売りやすい価格の方がいいんですね。おつりなどのことも考えると。

 

碧野さん 買う立場からみても、「ワンコイン」じゃないかなと。

 

鈴木さん それで逆算していくと部数を売らなければならないのですが・・・。まあ、ね、これからですよね。

――雑誌の中身の話に戻りますが、《木と暮らす》というシリーズがあります。これはどのような企画意図だったのですか。

 

碧野さん この近所は都心ではお目にかかれないような、すばらしい木のある家があって、それを内側からじっくりと見たいという気持ちがまずありました。それに、大きな木々と暮らすというのは大変じゃないですか。それでも、木を切らずにいっしょに暮らそうと思うのはどうしてだろう、という疑問もあって、そういう暮らしをしている方たちにお話を聞きたかったのです。

 

――創刊号では、「はけの道」沿いにあって、敷地内から湧き水が流れ出ている谷口邸を紹介されていますね

 

碧野さん こちらの取材にあたっては、市役所の方にご仲介をお願いしました。実際に取材してみて、谷口邸の人たちの(木と暮らす)文化を守るという意識を強く感じました。うまく原稿の中に入らなかったのですが「残そうという意識がないとこういうところは残りませんよ」とおっしゃっていました。

 

かつてはもっと敷地は広大で、ボートを浮かべることができるような池があったそうです。今お住まいのご夫妻も大事にしようという使命感が強くあります。若い方たちなのに、その意識の高さは素晴らしいことだと思います。このシリーズでは、木と暮らすうえでの大変さ、誇り、様々な考えなどを紹介したいのです。

 

――もう一つのシリーズ《はけに生きる仲間たち》は、動物が主人公ですね。創刊号では「『また明日』の犬たち」、第2号では陶磁器デザイナー・岡田ちひろさんの家の黒猫「黒豆くん」でした。

 

碧野さん 読み物っぽいページにしたかったんですね。植物があるので、動物もという感じです。そんなに深い意図があったわけではありません。

ただ、創刊号で「また明日」の犬を取り上げたのは、認知症のお年寄りのデイサービス、保育所、だれでも立ち寄れる地域の寄合所という3つの顔を持つ「また明日」の活動を紹介したいという気持ちもありました。

 

――犬、猫と来て次は・・・。

 

碧野さん 小金井市内にたくさんいるというハクビシンの写真が撮れるといいんですけどねえ。

 

――(ちょっと自慢気に)僕は、夜の帰り道、電線の上をつつつ、と小走りに行くハクビシンのカップルを見たことがあります

 

一同 おおっ!

 

(しばしハクビシンの話題で盛り上がる。)

(漢字だと「白鼻芯」なんだよ)
(漢字だと「白鼻芯」なんだよ)

《ちなみにハクビシンによる住宅や農家への被害の問題は小金井市議会では数回取り上げられている。以下は2012年10月2日、市議会決算特別委員会での環境政策課長による答弁。

 

「(ハクビシンは)近隣市などを見ましても、ここ3年ぐらいの間に増加してきている傾向があるようでございます。ただ、何を食べるかというと、庭の果実などを食べて、人が家の中に置いている食べ物とか、そういったものを食べていくというわけではない、一定野性的な生物でございますので、今後爆発的に増えていくということはちょっと考えづらいのではないかなというふうに考えてございます。
 駆除につきましては、こちらは特定外来生物ではございませんので、東京都の有害鳥獣の駆除の許可を得て、捕獲等を行うということになってまいるかと思ってございます。
 それから、対策でございますけれども、(ハクビシンは)子育てなどを終えると、1回入り込んだ屋根裏などからも出ていくというようなお話もあるようでございますので、くん煙材などをたくことによって1回出ていって、入り込んだところをふさげば、また入ってこられるということは防げるということがございますので、電話でのご相談で、ご自分でまず対応してみたいというようなお話をいただいている方には、そういった自衛策のようなものをご紹介しているところでございます。」》

――みなさん、仕事はどんな感じで進められているのですか。

 

碧野さん 毎週水曜日はなるべく集まって、色んな打ち合わせをしています。あとは、インターネットで「サイボウズ」というグループウェア、つまり同じ組織で情報共有やコミュニケーションができるようにするソフトウェアを使って日常的に連絡をとっています。もちろん、取材や入稿の時期には、ひんぱんに会っていっしょに作業していますけど。

 

西尾さん それぞれ子育てがあったりするので、夕方5時以降はもう動けません。子どもを寝かしつけなければなりませんし。

 

――こちら(リュエル・スタジオ)では、『き・まま』をつくる以外にはどんなことを?

 

鈴木さん 最近では「はけの森美術館」のポスターやチラシなど、次の所蔵展のものをつくりました。お店からの依頼でショップカードなども作成しています。

――1号、2号を出された後、みなさんの日々の生活レベルでどのような変化がありましたか?

 

碧野さん 知り合いが劇的に増えました。それと・・・顔が見えるところに読者がいるから、「良かったよ」とか「小金井をこんなに良く紹介してくれてありがとう」と言われたこともあります。取材をした人とは友だちのようになっています。買い物をする場合も、同じものを買うのならば取材をしたところで買うようになりましたね。

 

鈴木さん 本当に知り合いは増えました。小金井に引っ越した当初は、知り合いがいなかったのですが、最近は道を歩いても「こんにちは」とあいさつする関係の人が増えました。そうしている間に、「こういう仕事があるけど、どう?」ということも言ってくれたりとか。

 

西尾さん 私は今年で小金井10年目なのですが、これを始める前は都心でずっと仕事をしていたこともあって、全然小金井のことを知らなかったんですね。買い物も吉祥寺とか新宿とかに行っていました。「はけのおいしい朝市」も始まってから3年ぐらい経っていたのですが、私の家が線路の北側で、JR中央線が高架になる前は線路の南側になかなか行かないこともあって知らなかったんですね。

 

初めて知ったときには「こんな面白いことを小金井でやっていたんだ」と思いました。今小さなこどもを育てているということもあって、日々の生活の中に、知っているものとか好きなものがすごく増えると、安心感があります。不安なことが多い時代だけに、確かなものがあるという安心感です。

 

自分は地方の出身で、もともと東京への愛着があまりなかったのですが、最近どこかに出掛けて帰ってきたとき、「ああ、帰ってきたなあ」という気持ちになります。

 

安達さん すっごくよく分かります。「ただいま」という気持ちになるんですよね。

 

西尾さん そういう気持ちにいままでなったことがなかったんですよね。小金井に10年も住んでいたのですが、『き・まま』をつくり始めて、初めてそう思うようになりました。それはすごく大きな変化だと思います。

――安達さんは?

 

安達さん 今、全部言われてしまいました(笑い)。私も(小金井に)引っ越してきた当初は(それまで住んでいた)吉祥寺にすごく未練があったんですね。吉祥寺にいるころは友だちがどんどん遊びに来てくれて、「小金井」というとあんまり・・・。

 

でも、だんだんと『き・まま』をつくりながら、素敵な人とか素敵なお店に出会って、それを友だちに紹介すると「小金井に行ってみたい」と言ってくれています。すごく小金井のことを誇りにというか、堂々と「小金井が好き」と言えるほど愛着がわいてきました。

――小金井は「はけのおいしい朝市」に見られるような新しい試みもありますし、一方で神社のお祭り、お囃子のように古いものがきちんと伝えられています。小金井をどのようなまちだと見ていますか? 

 

碧野さん 面白いですよね。新宿や吉祥寺と比べれば田舎かもしれませんが、全国的にみれば全然、便利だし、都会です。そういう部分と、自然が多いというような田舎的な良さもある。人情的な面でも、新宿区から引っ越してきて思うのは「人が親切だな」ということです。

 

それはやはり、ゆとりがあるからではないでしょうか。新大久保だと人とすれちがっても、ちょっと殺気立っているんですね(笑い)。こちらでは、すれちがっても「ごめんなさいね」という言葉があったり、お店での対応ももっとフレンドリーです。

 

駐輪場で「駐車券を無くしてしまったんですが・・」というと、「じゃあ、良いよ」と言ってもらったり、財布を忘れてバスに乗って困っていたら、「今度乗ったときに払ってくれればいいですよ」と言ってもらえたり。住む人たちの気持ちにゆとりがある。それはこの豊かな自然環境とつながっている気がします。都会の便利さと自然の豊かさが、すごくいい感じで融合している場所だと思います。

 

鈴木さん 野川を見て「えっ、こんなのどかなところがあるんだ」と驚きました。子どもを育てるにしても、田舎で味わえるようなことがこの都内でもできる、というのがすごいですよね。

 

碧野さん 美しい自然環境がここまで残されているのは、小金井に暮らしてきた人たちの意識の高さの表れではないでしょうか。

 

 

――最後に、「リュエル・スタジオ」の名前の由来について。「リュエル」というのは裏通りとか小路という意味だと思いますが、どのような思いが込められているのでしょう?

 

安達さん スタジオの名前を考えた時にみんなで案をいくつか出し合い、私が「リュエル」を出しました。「リュエル」はおっしゃるようにメインストリートではなく、裏路地とかちょっと奥に入った落ち着く場所という意味です。

 

それは、東京の中での小金井もそうだと言えますし、私たちがつくっている雑誌も、大手出版社とは違って、ゆったりとしたところでつくれたらいいな。そんな思いからです。

(終わり)

こがねいコンパス第33号(2013年7月20日更新)

 

*写真は宇野正樹氏が撮影

『き・まま』編集部の4人のプロフィール

 

碧野 圭(あおの・けい) フリーライターを6年、出版社でライトノベル雑誌の編集を14年勤めたあと「辞めない理由」(光文社文庫)で小説デビュー。その後、「書店ガール」(PHP文芸文庫)で書店小説を書いてからむくむくと書店に興味が沸き、北は盛岡から南は福岡まで、気の向くままに書店行脚。ほぼ自費で、延べ130軒以上周った挙句、逆に地元愛に目覚め、小説仕事のかたわら仲間と地域雑誌を作ることに。好きな言葉は「天は自ら助くる者を助く」

 

鈴木佳子(すずき・よしこ) 出版社にて漫画雑誌の編集を15年、書籍の編集を5年ほど経験。結婚、出産を経て仕事を続けるも、子育てと編集者というハードワークに挫折。震災にかこつけて会社をやめ、あこがれの専業主婦に。しかし1年たたないうちに、「家でぼんやり」はさせてもらえず、現在に至る。さそり座、AB型、趣味:寝ること、好きな言葉「まあ、いっか」

 

西尾涼子(にしお・りょうこ) 出版社にて詩歌雑誌と書籍の編集の仕事を15年続ける。出産を経て復帰したものの、はじめての育児と会社員生活の両立に悩み退社。田舎暮らしにあこがれつつ何をしようか考えていた時、地元で編集者の仲間に出逢い地域雑誌をつくることに。取材を通して今いる場所のよさを再発見中。水瓶座、A型。好物は蟹。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」

 

安達友絵(あだち・ともえ) フリーライターを5年、出版社にて小学生向け児童書の編集を4年ほど経験。出産を機に仕事を辞め、息子とのんびり過ごしていたものの、やはり本が作りたいという思いは捨てきれず。そんな時に地元で素敵な出会いが続き、あっという間に編集チーム結成、地域雑誌を作ることに。獅子座、B型。趣味は、音楽を聴くことと漫画を読むこと。好きな言葉は「終わりよければすべてよし」

 

*リュエル・スタジオのHPから引用させていただきました。HPはこちらから

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

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コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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