変える 試みる 小金井の人たち  file19-1

file19-1  『き・まま』編集部の4人の女性たち(前編)



おしゃれで、可愛らしいデザインに美しい写真の数々。そして丁寧に時間をかけて取材された記事がふんだんに掲載された地域雑誌『き・まま』が昨年、小金井市内に事務所を構える編集ユニット「リュエル・スタジオ」によって誕生した。

 

半年に1冊という超ゆっくりペースで、5月末に待望の第2号が発刊された。編集・執筆をしているのはどんな人たち? どうしてこんなにゆっくりペースなの? 

リュエル・スタジオのHPから
リュエル・スタジオのHPから

――編集部メンバー5人のうち4人が小金井市にお住まいですね。みなさんは、どのようにして出会われたのですか?

        碧野さん
        碧野さん

碧野圭さん もともと私と鈴木さん、私と安達さんが知り合いでした。鈴木さんと西尾さんが同じ会社の職場での知り合いです。

私は3年前の2010年10月に小金井に引っ越してきて、その翌年2月に鈴木さんが、さらに5月に安達さんが引っ越してきたのです。

別に示し合わせたわけでもなく、まったくの偶然で3人が(小金井で)そろったわけです。そこで「何か、できるかな?」みたいな話をしていたのです。

 

       鈴木さん
       鈴木さん

 

鈴木佳子さん 引っ越した当初は地域の情報を知らないじゃないですか。だから「そういう情報を集めながら、自分たちで何かやれるといいね」みたいな感じで。

碧野さん みんなここがすごく好きで来たというわけではなく、なんとなく縁があってそれぞれ引っ越してきて、「住んでみたら結構いいとこじゃん」ということで(笑い)。私はそれまで新宿区に住んでいたのですが、まったくしたことのなかった散歩がここでは趣味になりました。歩きながらあちこち見ると「いやあ、良いところだなあ」と思うんですね。

 

その時はまだ、私は西尾さんを知らなかったのですが、いよいよ形にしようという頃になって西尾さんも会社を辞められたので「じゃあ、一緒にできるね」と。

   西尾さん
   西尾さん

 

西尾涼子さん 私は10年ぐらい前から小金井に住んでいました。仕事場で一緒だった鈴木さんから「今、こんな感じで動いているんだけど。会社を辞めたなら一緒にやらない」と声をかけてもらったのです。

――みなさんが小金井に住むきっかけは何だったのですか?



西尾さん 結婚を機に家を探していて、UR(都市再生機構)の新築物件を申し込んだところ、特に小金井を狙っていたのではないのですが、小金井市内の物件にあたってしまったというわけです。

 

碧野さん 私の場合は、それまで新宿区の2LDKのマンションに住んでいました。子どもが大学生になり、個室がそれぞれに取れず、部屋の間取りが原因でケンカが絶えなかったんです。どうしようかなと思っていた時、小金井市内の知人が自分の家を貸そうとしているのを知り、「じゃあ、私に貸して」と頼みました。もともと卒業した大学が学芸大学でしたので、小金井にはなじみもあったし、大家さんもよく知ってるので安心でしたし。

 

鈴木さん 主人の実家が近くにあり、義母から「(市内に)良いマンションが空いたから見に来ない?」と誘われ、そこにするすると引っ越しました。

       安達さん
       安達さん

安達友絵さん 5年ぐらい吉祥寺の賃貸に住んでいたんです。契約更新のタイミングで「そろそろ家を買おうか」という話になり、最初は吉祥寺で探していたのですが、住宅街では狭い物件しかなく、こっちに足を延ばしました。

すると野川沿いに一目ぼれした物件があったのです。「川沿いに住みたい」。そう思って決めました。

――それぞれの住宅事情で小金井市に来られたのですね。それからどうなったのですか?



碧野さん 「編集者が3人集まったら、本つくるでしょ」という話に自然に進みました。今はこういうリトルプレスが気軽にできる時代ですし、流行りでもあります。「小金井のことや、近辺のことで(雑誌が)できるといいよね」みたいなノリで。

 

リトルプレスとは 大手の流通を通さずに個人で発行して販売している本や雑誌のこと。本屋さんだけでなく、カフェ、雑貨屋さんなどに置いてあることが多い。》

 

たまたま、岩手の「てくり」というお手本になるような雑誌があって、それを見て「こんなのをつくってみたいね」となったのです。

 

――いつごろから動き出したのですか?

 

碧野さん 編集部にはもう一人、練馬に住んでいる見野(歩)さんというメンバーがいます。もとは私たちと同じ会社にいたのですが、彼女も会社を辞めてデザインの仕事をしていたので、「ちょっとアドバイザーに入って」と声をかけました。彼女が入ったおかげで、ものごとがぱきぱきと決まっていきました。それで、きっちり始動したのは2012年の花見のころかなあ。野川の河川敷で花見をしたのがスタート。その前に何度かご飯食べながら話はしていましたけど。

 

――創刊号が2012年の11月発刊でした。中身の骨格が固まったのはいつごろでしたか?


西尾さん 私が最初に参加したのは6月ごろでしたが、その時にはタイトルとかは決まっていましたね。

 

鈴木さん えっ、そうだっけ?

 

西尾さん そうそう。「はけのおいしい朝市」を特集でやるというのも決まっていましたね。

 

《 「き・まま」というタイトルについて、表紙の裏にこう書かれている
  き・ままは気まま
  き・ままは木 間々
  き・ままのままは母のママ
  『はけ』の古い呼び名のママ 》

――創刊号の表紙は、森のなかで立派な大木に木登りする幼児の写真でした。「木と暮らす」というシリーズの記事もあり、樹木へのこだわりを感じます。

碧野さん 特に(木を)研究したいとかそういうことではないのですが、こっちへ引っ越してきて感じたのは木の多さでした。

 

ここに来るまで都内をあちこち転々といましたが、何か落ち着かなかった。それがこっちに住んでみると、気持ちがすごく落ち着くんです。それはなぜだろうと考えてみると、木の多さなんですね。

 

小金井に引っ越してまもない頃、学生時代に通った学芸大学のキャンパスに30年ぶりに行ってみたんですよ。そしたらキャンパスの雰囲気が昔と違うんですね。30年分、木が大きくなっていて、道の両脇に生えていた木が伸びて枝を広げ、アーチ状になっているんです。それがすごくいい感じだと思いましたし、木の生命力に感動しました。

 

――なるほど。ところで、創刊号の特集「はけのおいしい朝市」(略称・「はけ市」)と、「江戸東京たてもの園」というテーマはどういう観点か

ら選ばれたのですか?

 

安達さん 小金井に古くからあるものも紹介したかったのですが、新しく何かを始めている人たちを紹介したいとい気持ちがありました。「はけ市」は、その集大成というか、あそこに集まっている人たちはすごく地元愛も強くて、新しいことをやろうという人たちが多かったので、「最初(創刊号)は、あそこを絶対やろう」と決めていました。お客さんとして毎月、はけ市に行っていましたしね。

 

碧野さん 私たちも新参者なので、朝市の特集をやっていろんな人と知り合いたいと思いましたし、「ここで、こんなおしゃれなことをやっているんだ!」という驚きもありましたから、ぜひ紹介したかったんです。

朝市を巻頭の特集でやることを決めた後は、次は「場所」を紹介する第二特集があるといいよね、という話になり、ま、小金井と言えばやはり「江戸東京たてもの園」ですよね。

 

――2013年5月29日に発刊された第2号の巻頭特集は「国分寺 おさんぽ道の楽しみ方」です。小金井から国分寺へと広がったわけですが

 

碧野さん 創刊号で「『はけ』界隈の魅力を伝え、そこに住む人々の絆をつなぐ存在でありたい」と書いたように、対象を小金井市だけに限定した雑誌ではないんですね。

 

《 *創刊号の巻頭には次のように書かれている。「そうした『はけ』を中心とした場所――小金井、国分寺、府中あたりには、これといって派手なスポットはないけれど、ゆったりとした時間が流れています。都心からわずか30分の距離なのに、四季の変化や風の音、空気の色までも鮮やかに感じ取ることができます。武蔵野の自然と都会の利便性が、絶妙なバランスで成り立っている土地なのです」 》

 

私自身も買い物に国分寺に行くことが多いですし、銀行は府中に行くし、生活するうえでは市という単位にこだわることはあまりないですから。

2号ではカフェを扱おうと思っていて、なかでも国分寺の「ねじまき雲」を取り上げたかったんですね。最初は安達さんが提案していたのかな。もともとは青梅で営業していて、当時からとても有名な店だったのですが、国分寺に移って来たらしいよ、ということでみんなで行ってみたんです。そうしたら、「素晴らしい」ということで全員の意見が一致しました。なかでも、珈琲好きの安達さんと西尾さんが強く推して。西尾さんは珈琲教室に通うほどの珈琲通ですし。

 

西尾さん 基本的に、取り上げたいところはみんなで行って「良いな」と思ったところをやるんです。

 

――みなさん全員で、ロケハンティングというか、掲載するかどうかを調べに行くというのがすごいですね。「みんながすきなものを掲載する」というのは結構、大事なんですか?

 

西尾さん それが一番大事です。

 

碧野さん みんなが好きで、取り上げたいものしか基本的には載せたくない、と思っています。

 

西尾さん 会社でやっているようなやり方はやりたくない。みんながやりたいことをやりましょう(というのが方針です)。

 

碧野さん 私たちは情報誌の編集の経験もありますから、その気になればこれぐらいの雑誌は2か月で、ライターとか使っていいんだったら1か月でつくることができると思います。大手の出版社でやるのなら、それが当たり前のペースですから。

 

ただ、そういう風にやった時って、楽しいと感じることが少ない。スケジュールありきで仕事をするので、ひとつひとつにこだわれない。そのつまらなさは身に染みてもいるのですね。この雑誌は自分たちでおカネを出しているのに、それと同じことをやりたくない。そう思っています。

 

――半年間で一冊、というのはそういう感じのテンポなんですね。

 

西尾さん 最初は3冊という話もあったのですが、こういうやり方でやってみるとそれは無理だなと分かりました。

 

碧野さん 「はけの朝市」も何回行きましたっけ? 毎月のように通いましたね。

 

安達さん すくなくとも3回ぐらいは行きましたね。

 

碧野さん 「たてもの園」は西尾さんが担当しましたが、すごい回数行ってましたよね。

 

西尾さん  私は年間パスポートを買いました(笑い)。

 

――(取材の)効率よりも・・・

 

碧野さん 楽しさかな。

 

西尾さん 効率はかなり悪いですよね(笑い)。

 

安達さん 地域雑誌なので、1回30分ぐらい話を聞いて終わり、というのではなく、何回もお店に行って、ちょっとずつ距離を縮めていって、実生活でも仲良くなってしまうという。そんな感じですね。そういう楽しさが仕事をしていた時にはありませんでした。

 

鈴木さん 人とのつながりを優先にということでしょうか。

 

(後編に続く)
こがねいコンパス第32号(2013年7月6日更新)

*写真はすべて宇野正樹氏の撮影

『き・まま』編集部の4人のプロフィール

 

碧野 圭(あおの・けい) フリーライターを6年、出版社でライトノベル雑誌の編集を14年勤めたあと「辞めない理由」(光文社文庫)で小説デビュー。その後、「書店ガール」(PHP文芸文庫)で書店小説を書いてからむくむくと書店に興味が沸き、北は盛岡から南は福岡まで、気の向くままに書店行脚。ほぼ自費で、延べ130軒以上周った挙句、逆に地元愛に目覚め、小説仕事のかたわら仲間と地域雑誌を作ることに。好きな言葉は「天は自ら助くる者を助く」

 

鈴木佳子(すずき・よしこ) 出版社にて漫画雑誌の編集を15年、書籍の編集を5年ほど経験。結婚、出産を経て仕事を続けるも、子育てと編集者というハードワークに挫折。震災にかこつけて会社をやめ、あこがれの専業主婦に。しかし1年たたないうちに、「家でぼんやり」はさせてもらえず、現在に至る。さそり座、AB型、趣味:寝ること、好きな言葉「まあ、いっか」

 

西尾涼子(にしお・りょうこ) 出版社にて詩歌雑誌と書籍の編集の仕事を15年続ける。出産を経て復帰したものの、はじめての育児と会社員生活の両立に悩み退社。田舎暮らしにあこがれつつ何をしようか考えていた時、地元で編集者の仲間に出逢い地域雑誌をつくることに。取材を通して今いる場所のよさを再発見中。水瓶座、A型。好物は蟹。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」

 

安達友絵(あだち・ともえ) フリーライターを5年、出版社にて小学生向け児童書の編集を4年ほど経験。出産を機に仕事を辞め、息子とのんびり過ごしていたものの、やはり本が作りたいという思いは捨てきれず。そんな時に地元で素敵な出会いが続き、あっという間に編集チーム結成、地域雑誌を作ることに。獅子座、B型。趣味は、音楽を聴くことと漫画を読むこと。好きな言葉は「終わりよければすべてよし」

 

*リュエル・スタジオのHPから引用させていただきました。HPはこちらから

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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