変える 試みる 小金井の人たち  file18-2

file18-2『手づくり文房具』『ちょいワザ文具術』などの著者・雑貨デザイナー

  宇田川一美さん(後編)


 それまでの仕事が新しい仕事を連れてくる。人と人とのつながりから、新しい活動が始まる。彼女はこれまでの道のりを振り返り、そう語る。

 

 彼女の柔らかな感性と人柄が、そうした発展をもたらしているのだろう。

 

 小児病棟に入院している小さな子どもたち、施設に入所しているお年寄りたちーー。

 

 彼女の技とセンスが、多くの人たちの心を温め、豊かにしていく。とても静かに、とても優しく。

 

 

――後編では宇田川さんの創作の秘密に鋭く迫りたいと思います。さまざまなアイデアはどこから生まれるのでしょう? 噂によれば「可愛いものファイル」というものを持っているとか・・・。


(名刺を入れるファイルを棚から取り出して)こういうファイルに「可愛いもの」を入れておくのです。ちょこっとしたアメの包み紙とか、ちょっと変わったニンニクのキャラクターとか、日本のものとか外国のものとか特に区別をせずに、ランダムに集めているのです。


もともと、雑貨のメーカーの商品企画室で働いていたときに、商品のタグのデザインを考える際の資料として集めていました。でも、どんどんこんな・・・変なもの、カッコ悪くてぷぷっと笑ってしまうものも、集めだすようになってしまったのです。

 

――ファイルは分類したり、整理したりしているのですか?

 

いいえ。ジャンルごとに整理するということはなく、集めたものから、どんどん入れています。

 

(ファイルの空欄を見せながら)友だちへの手紙の封緘(ふうかん=封を閉じること)に使ったりしているので、なくなったものもあります。でも、それはそれでいいなと思っていて。

 

―なぜこんなもの・・・こんなものと言っては失礼ですね・・・このようなものに愛着を(笑)?

 

なぜでしょうねえ。「伝えたいものは分かるけど(デザインとして)統一されていない感じ」とかが愛おしくなるのです。つい、集めてしまいます。


会社員時代は、みんなが買ったお土産の中にこんなものが入っていると、私の机のうえに黙って置いてくれていました。果物のシールとか。それでどんどんとコレクションがたまっていったのです。

 

――もう4冊もあるのですね。

 

この名刺ファイルが小さいものを集めるのに、ちょうどいいんです。切手も入りますしね。

 

――学生時代の話にさかのぼりますが、映画をみたり、レコードを聴いたりしたことも今の仕事に結びついていますか?

 
今の仕事にすごく生きていると感じています。例えば、レコード屋さんに行くのも好きでしたが、レコード・ジャケットは大きいし、書体、写真、構図のデザインがとても勉強になった気がします。

 

その当時、そうは感じなかったのですが、レコード屋さんに行くと、(レコードを)こう次々に見るじゃないですか。ちゃちゃちゃと。そうすると大量のグラフィックを次々に見ていくことになります。

 

ジャケ買い(=ジャケットのデザインが気に入って買うこと)もするので、好きなジャケットの時に手を止めるアンテナというのが、すごく研ぎ澄まされていたような気がしますね。

 

浴びるように、レコード(ジャケット)のグラフィックを見ていた時代があったのが、自分の栄養になっている感じがします。

 

――それと「可愛いものファイル」ですね。

 

そうです。ちまちました、こういうものを可愛がるのも好きですし。


――むしろ絵画展とかはあまり行かないのですか?

 

そう、行かないんです。「なぜ、それを知っているんですか」と言いたいぐらいですね。


美術展にいかない理由というのは、行くとすごく嫉妬を覚えるのです。「こんなのをつくって!」と。

 

それもなんとか時代の仏像に対してもそう思うのです(笑)。「こんなすごいのをつくってくやしい!」と思ってしまう。偉大な作品まで自分の目線で見てしまうので、うらやましいと、くやしいというのがごっちゃになって。複雑な気持ちになってしまうのです。

 

鑑賞者という立場ではなく、なにをおこがましく思っているのか、「自分もやればできるのに、できない私」と、帰り道は落ち込んで、何日か引きずってしまうので、あまり展覧会にいかない(笑)。

 

――ところで、ボランティアで、長期入院している子どもたちと一緒に遊んだり、ものづくりを教えたりする「移動アトリエ・オモレード」で活動されています。これはどんなきっかけから?

 

武蔵美時代の友人が、卒業した後で医大に入り直し、医者になったんです。彼女によれば、病院の小児病棟というのは、治療に集中していますから、遊びの要素が入るところがありません。長期入院している子どもは退屈だそうです。

 

そうした話をしているうちに、「私たちは(工作をつくったり、絵を描いたり)こういうワザがあるのだから、プロジェクトを始めたいね」と。

 

――では、「オモレード」は大学時代の友人たちでつくったのですか?

 

そう、友人4人で。全員が武蔵野美大を卒業した女性たちで、アイデアを出し合い、3年前から始めました。主にハロウィーンとクリスマスの時期に小児病棟に行って活動をしています。例えば、クリスマスの時には、紙コップとレースペーパーと画用紙で、ベッド脇に飾れる”サンタさんのブーツ”をつくるワークショップをしています。

 

大人のワークショップでもそうですが、短い時間でできるように、紙に折り目をつけておくとか、少し工夫はします。ちょっとハサミをつかってもらいたいところは、レースを切ってもらうとか、道具を使う楽しさを味わってもらうようにしています。

 

大人でも子供でもそれは同じ。「飽きないように、ちょっとした達成感をもってもらうように」とワークショップでは心がけています。

 

――「オモレード」という名前の由来は?

 

友人が命名したのですが、「何か面白そう」というのと、日本語ぽくない、ラテンな響きから(笑)。「楽しいんじゃない」という感じで。もっと、この活動は増やしていきたいですね。

今まで、仕事をしてお給料を頂くということだけやってきたので、初めてこれをやらせてもらって、(子どもたちから)笑顔をもらい、保護者の方や病院のスタッフにも喜んでもらっている。お互いの時間の中でつくり上げている不思議な感じが、商業的な活動とは違った手ごたえがあります。

 

それと、ある出版社からもうすぐ新しい雑誌が発刊されるのですが、そこでは介護施設に入居しているお年寄りの方のための手芸とかレクリエーションを扱っています。私は、手作りページの企画を担当しました。

 

私はこれまで、同じような感覚を持つ健康な人たちに向けての仕事をしていた気がしますが、違う世代や社会的に弱い立場にある人とか、体調がすぐれない方にも、こういう形でアクセスができるのだという、そういう喜びが最近あります。

 

――新しい発展ですね。

 

そうです。20代の時にはできなかったことが、仕事の経験と社会人になってからの人脈が、今まろやかに熟成してきているかなという気がしますね。

 

 

――最後に、小金井との関係をうかがいたいと思います。小金井へはいつからどのようなきっかけで?

 

生まれた時から! ふふふ。気がついたら住んでいました。梶野町の法政大学の近くに2歳ぐらいまでいて、その後はこちらに。幼稚園から中学校までここから半径1キロ以内のところに通っていました。

 

だから私は、小金井の環境とか(住宅の)物件を見て、ここを選んで住んだ方よりも、小金井へのこだわりがちょっと浅いかもしれません。今、「はけのおいしい朝市」の方に、小金井の良さを改めて教えてもらっている感じがします。

 

――うーん、そうなると次に用意していた質問が聞きにくいのですが、でも聞きましょう。小金井のどんなところが好きですか?

 

ははは、好きとか嫌いとかないですね。原住民としては「へえー、そうなんだ。いいとこなんだ」って感じ。

 

ただ、ここを離れなかったというのは、たぶん暮らしやすいからでしょうね。中央線に乗って仕事から帰ってきて、ホッとできる場所。微妙にのどかで、便利で。都心で暮らす気にはあまりなりません。

 

宇田川さんの『手づくり歳時記12か月』から
宇田川さんの『手づくり歳時記12か月』から

(終わり)

 

こがねいコンパス第30号(2013年6月1日更新)

◆宇田川一美(うだがわ・かずみ)さんのプロフィール

 1970年生まれ。結婚をした最初の時期を除き、ずっと小金井市で育ち、暮らす。緑小、緑中を卒業。

武蔵野美大視覚伝達デザイン科を卒業し、雑貨メーカーの企画室へ。現在はフリーで、雑貨の商品企画、手づくりに関わる仕事や、女性やこどもの暮らしに関するイラストを描いている。

緑町3丁目在住。雑貨メーカーで知り合った夫と二人暮らし。

 

雑貨メーカーとの商品企画、雑誌や書籍の手づくり企画の仕事を基盤とし、手づくりにまつわるワークショップなども行う。著書は『手づくり文房具』(池田書店)、『手づくり歳時期12ヶ月』(幻冬舎エデュケーション)、『ちょいワザ文具術』(ポプラ社)など。これまでに共著も含めると9冊。イラストでは『料理上手の魔法のひと匙』(宝島社)、『医師が教える冷え取り生活のすすめ』(アスペクト)、『国立行政法人アートカードセット』(独立行政法人国立美術館)など。宇田川さんのしごとブログはこちらから   

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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