変える 試みる 小金井の人たち    file16

file16    投票率アップ↑キャンペーン事務局メンバーたち

 
 過去最低の投票率(43・97%)に終わった3月24日投開票の小金井市議選――。

 

 でも、この人たちによる、このキャンペーンがなければ投票率はもっと下がっていたかもしれない。投票した際に要求すれば発行される「投票済み証」を、お店に提示して、様々な割引やちょっとしたサービスを受けられるという「選挙でおトク!」の仕組みをつくると、趣旨に賛同した28のお店が協賛店に加わった。全国紙の地域面にも大きく報じられた。

 

 キャンペーンが終わった今、事務局をになった4人の市民に話を聞いた。

 

 事務局メンバーは、このキャンペーンを最初に提案したライターの宇野祐子さんのほか、酒井美帆さん、矢澤朋香さん。それに匿名希望の30代男性のSさん。いずれも無党派の「普通の市民」だ。

 

――今回の市議選で投票率アップのキャンペーンをやろうと思い立った動機や経緯は?

 
宇野さん 以前から、近年の投票率の低さが気になっており、機会があれば投票率を上げる活動に参加してみたいと考えていました。昨年の初冬頃から、市議選で「選挙割」キャンペーンをやってみてはどうだろうかと考え始めました。


 昨年秋に負傷したケガが治りきらずにまだ体が不自由なことと、協賛店が集まるかどうか自信がなかったことから躊躇していましたが、今年に入ってテレビで、ごみ問題について他市の方が小金井をどう見ているかを聞き、「市民が市政に無関心じゃ恥ずかしい」と発憤したのです。

 

「やるのなら知り合いのお店を紹介しますよ」と知人に励まされたこともあって、ものは試しとやってみることにしました。

 

酒井さん 議会のUST中継を視聴をしたり、「子どもと未来を守る小金井会議」や「小金井市放射能測定室」といった市民活動に参加したりしたことで、市議会議員が以前より少し身近な存在になっていました。

 

そして、自分の1票を投票するだけではなく、違う形で選挙や市政への関心を盛り上げたいと思っていました。あと、言いだしっぺの宇野さんのキャラクターに興味がありましたね。


矢澤さん 自分と同世代の小金井市民が投票に行っていない事実をどうにかしたいと思っていました。嘆くならば、なにか行動をしないと事態は変わらないと思ったので参加したのです。

 

Sさん 若い人の投票率を上げたいと以前から考えていました。

 

――キャンペーンをやるうえで大変だったのはどんなところですか?

 
Sさん 公私とも多忙で、なかなか活動時間が取れなかったことですね。

 

宇野祐子さん。「選挙でおトク!」のチラシを手に
宇野祐子さん。「選挙でおトク!」のチラシを手に

宇野さん なれない協賛店への勧誘で、人様に信用していただくことはなかなか難しいことだなと感じました。

 

特に最初のうちは協賛店がなかなか増えず、このままではキャンペーン自体を成り立たせることができなくなるのではと、毎日ヒヤヒヤしていました。また、日頃なら力を貸して下さる知り合いの大部分が選挙で忙しくしていたこともあり、人手不足も悩みの種でした。


酒井さん 最初に何か裏方でお手伝いできればと協力者募集の説明会に参加したのですが、話を聞いた段階でちょっと私じゃメンバーとしてはダメそうだなと思いました。平日に営業的に協賛店探しが動ける人がもっと必要なんだなと。春休み中なので、どこへ行くにも子ども連れで動かなくてはいけなかったからです。でも、動きづらいながらも何店舗か協賛店を集められたので、ちょっとほっとしました。


スーパーや駅前でチラシ配りをしたときに気が付いたことは、「選挙で... 」という内容で耳を傾けてくれたりチラシを手に取る人は、すでに市政に関心があってご褒美がなくても投票に行ってくれる人であって、全く耳に入らない人、「選挙で... 」と言っても「いらない」という人にはなかなか声もチラシも届かないなと感じました

 

矢澤さん 仕組みをわかってもらうには、チラシを読んでもらったり、口頭で説明しなくてはいけないので、とにかく知ってもらうのが大変でした。


――逆に楽しかったこと、うれしかったことは?

 

宇野さん 活動をしていく中で、たくさんの方々に助けていただいたことと、共感しあえたことです。今まで言葉を交わしたこともなかった方々とも、「このまちのために」、「できることから少しずつでもやろう」という気持ちを分かち合うことができました。また、活動を通して、小金井市やそこにあるたくさんのお店の魅力を改めて知ることができたのも楽しかったです。

 

酒井美帆さんと赤ちゃん。赤ちゃんも低投票率を心配するかのような面もちだ
酒井美帆さんと赤ちゃん。赤ちゃんも低投票率を心配するかのような面もちだ

酒井さん 協賛店のお願いで最初に1店舗からOKをもらえたときはとってもうれしかった。とりあえず資料をお渡ししたときはダメそうなお店が、後日思いがけずOKの返事がきたり、お店開拓に苦戦していることをお話していたら、系列店を紹介して頂いたりしたこと。これもうれしかったですね。


また、事務局以外にも、チラシ配りを手伝ってくれたり、掲示板に貼ってくれたり、ツイッターで盛り上げてくれたり、周りでたくさんの方が協力してくれたことです。

 

矢澤さん チラシ配りをしていて、「応援している」「よいことをしてますね」などと肯定的な声をかけてもらったときは、やってて無駄じゃないんだと励まされました。


Sさん 市内で人気があるお店のキャンペーン賛同が得られたことです。投票済み証がいつもよりたくさん発行された(注)と聞き、市民に参加する方がいたことから、キャンペーンへの理解はあったと考えています。

 

(注)小金井市選挙管理委員会によると、今回の市議選で投票日に発行された投票済み証は290枚。期日前投票では205枚発行されており、計495枚が発行されたことになる。これまでの選挙での投票済み証の発行枚数のデータは把握されていない。もともと存在があまり知られておらず、そんなに出るものではないからだ。担当者は「今回は10倍以上、発行されたのではないか」と話している。

 

――投票率は残念ながら過去最低だったわけですが、率直な感想は?

 
宇野さん 候補が多かったこともあり、前回より少しは上がるのではと予想していたので、正直驚きました。同時に、市民の市政への無関心あるいは無力感の深刻さを改めて感じました。


私たちのキャンペーンがあまり効果を上げなかったことにもガッカリしましたが、もともと今回は試行的な位置づけでしたので、今回だけで善し悪しを判断するのはやめようと、今は考えています。

 

Sさん 予想の範囲内でしたが、残念でした。

 

9万3千人の有権者のうち、投票所に足を運んだのは4万1千人しかいなかった
9万3千人の有権者のうち、投票所に足を運んだのは4万1千人しかいなかった

酒井さん ごみ問題で周辺あちこちの市に助けてもらっているのにこの投票率は恥ずかしい。キャンペーンに関しては、やっぱり周知が足りなかったと思います。


矢澤さん チラシ配りや、知り合いの小金井市民と話をしていても、市議選があることを忘れている人が何人もいたので、候補者は多かったが市民の関心は低いことを実感しました。

――低投票率に終わったのはどのような原因があるとお考えですか? 

 
宇野さん さまざまな原因があると思いますが、例えば昨年、議会運営委員会が行った「市民アンケート」では、「今の市議会をどのように評価しますか?」という問いに、50%近い市民が「あまり評価しない」、「まったく評価しない」と答えています。


このような議会への評価の低さが、誤解も含めてですが、市政への不信、さらに低投票率へとつながっているように感じています。また、2年前佐藤市長が辞任へと至る流れの中で、少なからぬ市民が市政に期待することへの無力感を感じた、その影響もあるように思います。

 

酒井さん 市政、政治に対する不信というよりも、そもそも関心がない人がやっぱり多数派なのではないかと思いました。候補者が35名もいるので選挙期間中は華やかに感じたけれど、訴えていることや選挙公報をみてもみなさん良いことが書いてあるので違いが分かりづらい。


他の自治体にはない問題が山積みだったり、あの大きな震災があったりしてこの数字というのは、あとは何が起きたら投票率は上がるんだろう...。あと、とばっちりかも知れませんが、桜の開花が早すぎました。

 

Sさん 市政について、市役所や議会など様々な関係団体のPR不足があるのかもしれません。学校や家庭教育でも、若い人へ選挙や投票について市民としての自覚を促す取り組みをしていただきたいと思います。


矢澤さん 小金井市では、2年前に市民派市長が低投票率でありながら当選しました。そのときは既成政党ではない「市民派」に相当な期待があったのだと思います。しかし1年も続かず辞任し、その明確な説明も市民にはされていません。その結果、既成政党以外の人への信頼がなくなったのではないかと思います。既成政党には1票入れたくないけど、無党派はどうせダメだ、というあきらめ感のようなものを、今回の開票結果を見ても思います。


――選挙では男性よりも女性の方が3~4ポイントも投票率が高いのはなぜだとお考えですか?

宇野さん 女性のほうが生真面目な人が多いからではないでしょうか。また、女性の方が身近な暮らしと政治との関係について実感する機会が多い、というのもあるかもしれません。


酒井さん 男性は日中職場で過ごすが、女性は主婦でも働いていても、保育園、学校のつきあいなどで地域、地元の情報を得やすいから? よくわかりません。

 

Sさん 男女間で社会に対する意識の差があるのではないでしょうか。女性は子育てや介護など家族の課題に正面から向き合う時に、政治への期待を高める機会を得ているのでしょう。


矢澤さん 子どもの関係や、ボランンティア活動などで地域のつながりがあり、市議会や議員の情報が入りやすく、なじみがあるからではないでしょうか。

 

――これからも投票率アップキャンペーンをやってみたいとお考えですか?

 

Sさん 市民だけの活動では限界を感じるので、事務局は商工会や市役所など公的な団体におき、多数の市民が実行委員会形式で参加できる仕組みを望みます。一市民として、よろこんでお手伝いしたいです。


宇野さん 人手がある程度揃いそうならやってみたいですね。

 

酒井さん 市民有志の活動で中立性を保つのはちょっと難しいのではないかと思います。選挙管理委員会や市の商工会など、大きな視点で投票率アップをはかって欲しいですね。


投票日前日、武蔵小金井の駅前に「投票に行きましょう」といったプラカードを持った方たちが整列していました。「選挙割り」だけが正解とも思っていないけど、プラカードを持って立ったり、ティッシュ配ったりでは投票率は上がらない。そういうんじゃないだろうと感じました。

 

「こきんちゃんも一緒にやろうよ!」と話す矢澤朋香さん
「こきんちゃんも一緒にやろうよ!」と話す矢澤朋香さん

矢澤さん できれば選管にしっかりやってもらいたい。しかし、憂いているだけの評論家にはなりたくないので、できることは行動したいと思っています。


――これからも投票率アップキャンペーンをやるとして、どんなところをバージョンアップしたい(あるいは改善点)とお考えですか?

 

宇野さん 協賛店をもっと増やし、また宣伝ももっとしっかりできるように、選管や商工会、JCなどど協力しあうか、またはバトンを引き継いでいただければと思っています。幸いにしてそうなった時は、規模を大きくすることと、「市民の思いのつながり」としての魅力をどう共存させていくかが課題になるのではと考えています。


酒井さん 今回の仕組みづくりは、ほぼ全部宇野さんがやってくださいました。協賛店がFAXで申請するシンプルな仕組みを作ってくれたり、新聞の取材記事もあったので、(協賛店を集める)営業的にはとてもやり易かったです。残念だったのは、準備期間が短かったのでキャンペーンの周知活動や協賛店情報がネット中心でしかできなかったこと。

 

準備期間があれば、協賛店が掲載された市内のマップ、例えば「てくてくスタンプラリー風」のものをつくったり、ネット以外のツールをもっと使ったりして、周知を行った方がいいと思います。

 

協賛店探しやチラシ配りは、どうしても自分の生活圏内のお店やエリアに偏ってしまうので、市内に住む大学生もキャンペーンの活動に参加して広げてもらいたいですね。

 

協賛店については、うちには小さい子どもがいるので、ゆっくりランチをしたり、熱々のラーメンを食べたりするのがなかなか難しいのです。テイクアウトのお店や子連れで利用できるお店をもう少し増やしたかったなと思いました。

 

矢澤さん 知名度を上げたい。選管や商工会、青年会議所などと一緒にできればいいなと思っています。「こきんちゃん」にも一緒に活動してもらいたいですね。

 

Sさん まち全体の事を考えるという視点をもっと取り入れる為に、キャンペーンへの参加者を増やし、様々な方のご意見を取り入れながら運用を改善していければ、小金井のまちをもっと良いものにしていけると思います。


――ありがとうございました。


*投票率アップ↑キャンペーンのホームページはこちらから。

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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