変える 試みる 小金井の人たち file14-1

file14-1 NPO「アートフル・アクション」代表理事 緒方恵一さん(前編)

先進的で、実験的でもある「アート」が今、小金井市内で広がっている。

 

2009年4月に始まった小金井市芸術文化振興計画による推進事業「小金井アートフル・アクション!」がまちのあちらこちらで、市民とともに芸術・文化のイベントを展開しているのだ。

 

実行委員会方式で始まった事業は、2012年からはNPO「アートフル・アクション」が推進役に。小金井アートフル・アクション!はどんな考えで、何を目指しているのだろうか。アーティストでもある代表理事の緒方恵一さんに聞く。

 

◆小金井アートフル・アクション!とは

 
――「小金井アートフル・アクション!」という名前は知っていても、活動の内容などは知らないという方もいると思います。何を目的に、どんな活動を?

 
(活動の)基本は「アート」という言葉をキーワードに、まちにネットワークをつくるということです。

 

すでに様々なネットワークが(小金井市内に)あります。それは確かなのですが、「アート」というキーワードで人が集まった時に、これまでとは違ったネットワークがまたいくつか生まれると思うのです。これまでと重なっている部分もあれば、重なっていない部分もある。

 

これまでとは異なるネットワークのハブになって、(人が集まり、活動していくのを)盛り上げていければ良いと思いますし、その方法論として現代アートとか、もう少し広い意味での芸術・文化があると思います。

 

ただし、一つのムラ社会を作るわけではありません。僕らに一極集中する必要はなく、他の人たちがそれぞれつながって行くためのきっかけになるだけでもいい。

――どのようなネットワークが生まれつつあるのでしょう?

 

アートフル・アクションには、いろいろな事業があります。それに市民を含むメンバーの方は色んな形で関わってくださっています。


例えば市報での公募を見て来てくださった方。あるいはメンバーの知り合いで入って来られた方。そういう方が中心です。

 

もちろん市民以外にも、たとえば、アート部門を担当しているアートディレクター・小川希(のぞむ)は、現代アートの若手作家を中心に紹介するギャラリーを吉祥寺で運営しているのですが、実家が小金井というつながりがあります。アートフル・アクションのメンバーは、様々な結びつきによって、今の構成となっているのです。

(アートセンター オンゴーイングのHPから)
(アートセンター オンゴーイングのHPから)

*小川希さんは、吉祥寺にあるギャラリー「アートセンター オンゴーイング」の代表

◆市民がアートの企画に関わる

 
――市民がアートの企画に関わっているというのは素晴らしいですね。例えばどのような企画に?

 

今年(2013年)3月まで5回の連続講座でやっている「市民がつくる現代アート入門講座」というプログラムがあります。現代アートの作品を講師や作家とともに味わいながら、企画者と参加者が同じ目線で現代アートを学び、体感していこう、という企画です。


これに企画から運営までに市民の方がすべて関わっています。例えばレクチャアする場合でしたら、その講師の人選。またワークショップでしたら、アーティストの人選。そして当日の運営も。市民の方々を中心にプロジェクトが動いています。

 

ただし、そもそも集まった皆さんご自身それぞれが面白い方々なのです。あらゆる能力や才能に恵まれ、それに芸術や文化への思いもある。異なる背景から集まった人たちがお互いに刺激し合うこともありますね。

 

――ギャラリーのほかにも、小金井市内の街かどの路面や小学校の敷地で道路白線を素材にした地上絵が描かれていく淺井裕介さんの「植物になった白線@小金井」など、さまざまアートが展開されています。ひときわユニークなのが岩井成昭さんによる「イミグレーション・ミュージアム・東京」(IMM東京)というプロジェクトですが、これは?

 

2010年度から始めているプロジェクトです。市民を中心とする参加者が現代アートの手法を用いて表現者となり、地域に居住している、つまり私たちの身近にいる異邦人たちと交流し、コミュニケーションの蓄積を作品としてアーカイブ化し、ミュージアムをつくることを目指している取り組みです。


イミグレーション・ミュージアム(移民博物館)は世界中にある施設ですが、IMM東京は、美術家の岩井さんの企画と監修のもと、独自のコンセプトでこれまで活動を続けてきました。IMM東京で言う、イミグレーション・ミュージアムというのはバーチャルなミュージアムで、それを小金井で展開しているというわけです。

 

――具体的には何を? 写真とかですか

 

いいえ。このプロジェクトは岩井さんご自身が作品をつくるというのではなく、参加者、つまり市内在住の方々が自分の周りにいる異邦人をみつけ、その人とのコミュニケーションを通じ得たものを作品化するというものです。それをグループで展示するという形式です。岩井さんは、参加者に美術的な表現スキルは全く無用であると言っています。

 

――・・・作品の形としてはどのようなものになるのでしょう?

 
それはプロジェクトごとに違います。過去には、音楽パフォーマンスもあったり、インスタレーションやイラストレーションもありました。それぞれの対象と自分が得意であったり、プロジェクトの関わりから見いだした表現方法によって、作品形態が決まっていきます。

 

1月から2月にかけて、「ペゴパヨ・パーティ」というのをやります。ペゴパヨというのは韓国語で「おなかがすきました」という意味です。

 

アートフル・アクションの活動の拠点である「小金井アートスポット シャトー2F」に集まって頂き、食べ物をつくり、食べながら、コミュニケートしようという試みです。

 

1年の期間で続く長いプロジェクトがイミグレーション・ミュージアムなので、これはそのプロジェクトの一つです。

 

3月の終わりには展示があります。そこで今年度のイミグレーション・ミュージアムが完結することになります。前年度のものよりも視点が変わってさらにグレードアップしたものが、この3月には展開すると思います。

 

――「ペゴパヨ・パーティ」は何のためにやるのですか?

 

ここに参加されるのは韓国人とかアジアの方が多いのですが、そういう人たちの「食」を材料にした「おつまみ」を作って、意識の違い、味覚の違いを探ろう、知ろうという企画です。簡単に言えば、異文化交流であり、異文化のコミュニケーションです。

 

◆コラボレーションとラボラトリー

 
――アートフル・アクションは「さまざまな人々が一緒に芸術の創造に関わっていく=コラボレーション」と「地域資源や芸術、自らの潜在能力を発見していく=ラボラトリー」を目指してきたそうですね。

 
コラボレーションの一つとして、南小や本町小の6年生の卒業制作に関わる学校連携プロジェクトという事業も進めています。アーティストの淺井さんが子どもたちと一緒に「植物になった白線」を描き、また岩井優さんは、パフォーマンスの映像作品「ダンシング&ウォッシング」を作ります。

 

また、理事の一人でもある東京学芸大の正木賢一先生はグラフィック・デザインが専門ですが、市内の、特に小金井市のデザインプロジェクトに関わっています。これは行政とのコラボレーション。また、相手が学校の場合には、美術の先生を始めとする学校の方々、子ども、保護者、アーティスト、それにアートフル・アクションのコラボレーションとなります。

 

――NPOアートフル・アクションは2012年1月に発足したわけですが、その前は実行委員会の形式でした。緒方さんはいつからこのプロジェクトに?

 

実行委員会は2009年度、行政(市役所)と東大の小林真理研究室のバックアップのもとに立ち上がりました。その時からメンバーとなっています。


「実行委員会から完全に市民主体のものに受け継がれていく。それがNPOに」というのが当初からの構想でした。それに沿った形で生まれたのがNPO「アートフル・アクション」です。

 

――関わるきっかけは?

 

当時の市役所の担当者から個人的に「やってくれないか」と声をかけられたのです。それ以前から小金井市環境市民会議の事務局長として活動している中で知り合い、「環境とアートを結び付けられないか」と言われて、環境市民会議のイベントの中にもアート的な要素を盛り込んだという経緯があります。そういったところでお付き合いするなかで「力を貸してください」と言われたわけです。もちろん、自分の背景にアートがあるというのがお引き受けする一番の理由でした。

「学校連携事業」でのワークショップ。男の子たちは喜びながら泡まみれに
「学校連携事業」でのワークショップ。男の子たちは喜びながら泡まみれに

――拠点となっているシャトー2Fですが、カフェが併設されているのは?

 
カフェを持っている理由は、ギャラリーだけでは集客がきついだろうという判断からです。それに、アートスポットにはカフェがつきものですよね。ギャラリーで作品を見た後や、見る前にお茶が飲めるといいんじゃないかとか。ギャラリーで待ち合わせしたりとか、お話するだけでも。そういうクリエイティブな空間になれば良いと考えたのです。ギャラリーとカフェはセットで考えるのが一番良いのではないか。そもそも僕自身、近いところにそういう空間があればいいな、と常日頃から思っていましたし(笑)。

 

――カフェの収入は財政的にも運営にプラスになっているわけですか?

 

その通りです。これまでお話をした事業は公費から出ています。事業費なのでその事業単体にしか使うことができません。このまちを起点に芸術・文化の振興のために使われるべきおカネなので、あくまでも事業費は特定のプロジェクトに対してという考え方で、スペースの維持費や日常の経費のために出ているわけではありません。

 

そのため、スペースの維持をする資金獲得のためにもカフェが必要なのです。事業費対象外の実験的な企画や、これはあまり知られていないのですが、ギャラリーのレンタルもやっています。もちろん、レンタルの場合は芸術や文化に関わるもので、事前に企画書を拝見させていただきますが。

 

シャトー2fのカフェで。奥には子どもたちが遊べる「キッズルーム」もある。
シャトー2fのカフェで。奥には子どもたちが遊べる「キッズルーム」もある。

◆この1年の成果と課題

 
――NPOが発足して1年。この1年の成果と課題は何でしょう?

 

単純に面白いと思って関わってくださる人が増えました。今、登録メンバーが35人から36人ぐらいいると思います。キュレーションを担当してくれている大学院生を含む若い女性や、学生、市民のボランティア、市外の人も、色んな関わり方で集まってくれています。様々な方がこれだけ多く集まったというのは僕にとっては正直驚きです。


それから僕がメンバーでは最年長に近いと思います。20代の若い人、子どもがまだ小さい30代の方も入っていますので、若い人が入ってきやすいような活動と言えるかもしれません。もちろん、年長者も大歓迎ですよ。(笑)

 

――小金井アートフル・アクション!の市民的認知度はどう評価されていますか?

 

「まだまだ」だと思います。われわれの難しさは、「今」を切り取ろうとしている作家さんの思い、彼らならではの視点を周囲にいる人に伝えることです。どういう言葉を使って翻訳し、説明するか。試行錯誤しながら、頑張ってやっています。でも基本は楽しくですね。

 

メンバーの全員が美術大学で美術史を学び、現代アートに造詣が深いというわけではありません。こういう雰囲気が良いとか、なんか面白いね、こんなことができるんだけど、ということで関わってくださる方がいる。

 

市民がつくるプロジェクトに関わりながら現代アートを中心に、アートに関わりながら知っていく。そして他の方に伝える伝え方も学んでいく。そしてそれが少しずつ広がって行けばいい。

 

やって来られて(作品などを見て)「分からん!」と言って帰られる方も当然いるのですが、それは正直なご反応だと思います。

 

現代アートとは、全部が全部そうではないのですが、ある種、提案のようなものもあります。新しい考え方とか、問題提起というものもあります。

 

――思考、考え方の地平を広げる、ということですか。

 

そうです。表に出ていないもの、つまり裏側に隠されているものを垣間見ること。それは、若い女の子の感性の時もあるし、もっと年齢を重ね社会経験のある人が見た今の世の中の姿ということもあります。そう思ってから改めて見つめ直すと、現代アートもけっこう伝わってくるものなのです。


それらは深かったり、重かったり、軽かったり、感覚的だったり、繊細で、過激な部分もあったりします。時には未完成で危ういこともある。そういう部分を我々が間に入って伝えて行く。難しいけれども、その半面、面白いところもあるのです。

 

「分からん!」と言って帰っていく人にも何か残るような形で、数日後に「あれはなんだったんだろう。何か気になるなあ。」とふと思い起こすような形で、何かを伝えられたら。そう思っています。

 

こがねいコンパス 2013年2月2日更新

 

緒方恵一(おがた・けいいち)さんのプロフィール

 
1961年4月生まれ、神奈川県相模原市出身。日本大学芸術学部で映像を学んだ後、ロンドンのアーキテクチュアル・アソシエーション・ディプロマスクール(AAスクール)で、映像的建築“シネマティック・アーキテクチャー”Cinématic Architecture”を研究。建築事務所Ushida-Findlay Architects (東京およびロンドン事務所)などに勤務。

 

帰国後、東京でインサイト(inSIGHT)を設立。映像制作の他、都市プランニング、建築、インテリアの企画・デザイン、建築・都市・映像などに関する執筆など。都市・建築ワークショップ主宰。

 

NPO法人「アートフル・アクション」代表理事、小金井市環境市民会議事務局長。日本都市計画家協会会員。

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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