第5回 普通の母たちは市政を変えられるか

        小金井の給食を守るために――

                  沢口絹枝

 

 2013年5月。小4の息子が学校から手紙をもらってきた。
 「新しい経営方法による学校給食調理業務へ向けてのアンケートのお願い」であった。さらに小学校給食調理業務委託を5校委託、4校直営の方針、全校での説明会の日程も記載されていた。

 

 説明会に出席したが、どの保護者からも厳しい意見と批判が相次いだ。教育委員会側の説明は、調理員が民間の会社になるだけ。味も質も今までとまったく変わらないという。民間委託することで4000万円の財政効果があがるという、メリットばかりの説明であった。

 

 はたして、本当にそうなのだろうか。説明会後も不信感ばかりが募った。長年、小金井の給食を守る活動をしてこられた先輩母たちのおかげで、すでに民間委託されている中学校の給食事情がどんな様子であるかを多少知っていた私は、息子の小学校が委託校になることで大変ショックを受けた。
 
 小金井市が正規職員を採用しなかったことで調理員は過酷な労働を強いられ、その結果、組合が民間委託に合意。するとすぐさま、民間委託を9月から開始すると保護者に発表――。

 

 今回の委託の進め方はあまりにも性急すぎる。なぜ、重要なことは保護者をスルーするのか。憤りばかりが心の中でわきあがる。

 

 3.11以後、「子どもと未来を守る小金井会議」に所属している。幸いなことに私と同じ思いの保護者がたくさん集まっていた。説明会後、まずはより多くの保護者に給食のことを知ってもらおうと勉強会が開催された。

 

 その後は、給食を守りたい志のあるメンバーでメーリングリストが作成され、6つの陳情案の作成、提出、署名集め、集計、議会へ提出に至った。6つの陳情とは、以下である。

 

22号 市民参加による学校給食の指針の実施プラン検討委員会の設置を求める陳情書
23号 小学校給食調理民間委託について、十分な情報公開と説明を求める陳情書
24号 小学校給食調理業務の民間委託化のプロポーザルに関する陳情書
25号 「おいしくて安全な給食のまち」宣言を求める陳情書
26号 給食調理業務において直営職員と委託先職員の交流を求める陳情書
27号 学校給食の「新しい経営方法」の検討に財団法人設立を加えていただくことを求める陳情書

 

 署名を集めたのは22号と23号。両方とも2700筆を超える署名が集まった。実質6日間ほどしかなかったのに、素晴らしい成果である。保護者の関心の高さがわかる。 

 

 私は陳情作成班には加わっていなかったが、この間の母たちの素晴らしい連携プレーにただ圧巻し、感動するばかりだった。協力してくれた方々は、必ずしも自分の子どもが小学校の給食を食べているわけではない。それでも徹夜してでも協力してくれたのだ。これは、委託校に該当する私がもっと頑張らないと申し訳が立たないという思いでいっぱいだった。

 

 2013年6月12日、厚生文教委員会で初めての陳述者になる機会に恵まれた。24号のプロポーザルに関する陳情を陳述した。陳述を引き受けたのは、もう少し活躍しないと尽力してくれている仲間に申し訳ないという思いがあった。

 

 しかし、署名をお願いした小学校の保護者から言われた一言が一番のきっかけだったのかもしれない。

 

 「こんなことをしてもどうせ、変わらない」
 「署名をするのは構わないが、他の人に声をかけることはできない」

 

 自分の子どもが食べる給食を、安全でおいしいものにしたいと思わないのだろうか?と、私の頭の中はぐるぐるまわった。様々な考えの人がいる。しかし悔しい。その夜は悔しさで眠れなかった。

 

 だったら変わるか変わらないか、普通の母が市政を変えられるかどうか、見せてやろう――。そう思ったのだ。

 

 以前、「町の政治 べんきょうするお母さん」という映画を見たとき、大変に感銘を受けた。そして、元国立市長の上原公子さんの講演の中での言葉が私の心に強く残った。
 「黙っていることは罪」

 

 小金井市が給食調理業務を民間委託する。しかも、丁寧な説明と進め方であるとはとても言えない。それを黙っていたら、経費節減のために子どもの給食を犠牲にされてしまう。黙っていること=賛成とみなされる。

 

 冗談じゃない。今まで、カレーもルーから手作り、だしも昆布やかつおぶしからとり、化学調味料も無添加のおいしい給食を、これからも小金井の子ども達に食べさせてあげたい。

 

 すでに民間委託されている中学校の例を見ると、格段に味が下がったと聞いた。行政のお金の都合のために、子どもを犠牲にされてなるものか。

 子どもには選択肢がない。与えられたものを食べるしかないのだ。これは大人の責任である。原発事故もそうだ。いつだって被害を受けるのは子ども。そんな社会はごめんだ!というのが、当時の私の心の中で叫んでいた本音である。

6月12日の厚生文教委員会
6月12日の厚生文教委員会

 陳述中、「はぁ~」とため息が聞こえた。
 陳情に対してのため息だったのか、長く続く会議に対してのため息だったのか、それはわからない。こちらは子どもの食、すなわち健康がかかった大切な陳情だ。もう少し真剣に受け止めてくれないか?と陳述しながらも心で叫んだ。

 

 しかし、採択されるように尽力くださった市議会議員の皆さまのおかげもあり、22号、23号、24号、26号は厚生文教委員会、本会議ともに採択された。

 

 23号は本会議で賛成11名、反対10名、退席2名という大変、厳しい状況での採択だった。心の底から感謝するばかりである。25号と27号は継続審議となった。市民の声を無視するわけにいかないという思いを市政は感じてくれたのだろうか、と考えてしまう。

 

 少しずつではあるが、私たちの活動も成果がでているはず。母たちの働きかけで牛乳が放射性物質不検出のものに変更された経緯もある。

 

 汚染されてしまった日本で、これからも子どもを育てていかなければならない母親の目からみた脅威とは――。それは、国民の「無関心」なのかもしれない。選挙の投票率の低さからみてもわかる。子どもも大人も、ハンディを持っている人にもやさしい、暮らしやすいまちでありたい。

 

 そのためにごく普通の母にも、何ができることがあるはずと考えるのである。50年前の国立市の普通のお母さんたちが文教地区を勝ち取ったように。

 

こがねいコンパス第32号(2013年7月6日更新)

沢口絹枝(さわぐち・きぬえ)さんのプロフィール
 小学4年生と4歳の子どもを育てることによって、「食」の大切さを切実に感じている。


 2013年6月12日、小金井市議会厚生文教委員会で「小学校給食調理業務の民間委託化のプロポーザルに関する陳情書」について陳述。国分寺市では学校給食の調理業務を委託する業者を選定する際、業者側のプレゼンテーションを市民に公開している事例を資料とともに議会側に示し、次のように述べた。


 「私たち保護者は今後、学校給食の調理業務をになってくださる業者さんについて、委託審査の段階から可能な範囲で知りたいと思っています。当市ではプレゼンの公開の前例はないと聞いていますが、子どもがかかわる分野においては、できる限りの公開を望みます。

 

審査の段階から可能な範囲での情報を公開して頂くことで、市民や保護者が透明性を感じ、不安への払しょくにつながるのではないでしょうか。委託は契約に関わることなので一般市民に公開できることと、できないことがあるのは私たち保護者も理解しています。

 

国分寺市では会社名を秘し、ヒアリングは非公開、プレゼンのみ傍聴できるという形になっています。参考にしていただき、このように差し支えのない範囲での公開をご検討をお願いします」

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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