小金井 坂下・坂上探検隊 「坂の途中で会いましょう」

第5回 質屋坂から妙貫坂へ

 

●隊員(随時募集中/悪いようにはしません)

1号 Koganeist 市内坂下に住む5歳男子の母の夫

2号 Folkway 市内坂上に住むムジナ


昼下がりの店内には、私以外の客はいない。アンティークのインテリアをさりげなく配した居心地のよい空間に、おだやかな時間が流れている。

 

テーブルの上のタブレットのディスプレイに踊る文字を追うことに疲れて、ふと視線を上げると、通りに面した大きな窓の外には、冬の曇り空が広がっていた。

その空を不安そうに見上げながら、幼い娘を連れた母親が足早に通り過ぎていく。

 

まもなく雨になりそうだ。

 

私は小さくため息をつくと、ふたたびタブレットに視線を落とし、物語の世界に戻る。いま、この町で静かな話題を呼んでいるショートストーリー、「坂の途中で会いま…… 

 

 

 

 

 

K「ちょっとちょっとちょっと、なに気取っちゃってんの!」

 

F「ん?」

K「ん? じゃないでしょ。文字の色も薄くて読みにくいし。それに何気なくiPad mini買った自慢してるでしょ」

F「自慢して悪い?」

K「……うらやましい」

F「書き直す?」

K「全部書き直しですよ! だって、質屋坂を下り始めて左側にある『カフェbroom & bloom』は、店内のアンティーク家具が落ち着いた雰囲気を醸し出しているし、質屋坂通りに面した窓は大きいし、「坂の途中で会いましょう」は静かな話題を呼んでるし……あれ? ほんとのことしか書いてないね」 

 

↑学校机や椅子も店内に溶け込んでいる(というか古道具屋みたいです)
↑学校机や椅子も店内に溶け込んでいる(というか古道具屋みたいです)
↑ベジタブルカレーもオススメだよ
↑ベジタブルカレーもオススメだよ

 

F「ところで質屋坂ってどこにあるの?」

K「小金井街道の前原坂上の交差点から南西に入っていく「質屋坂通り」の途中ですよ」

 

 


↑左が小金井街道、右が質屋坂通り。質屋坂通りは下りの一方通行
↑左が小金井街道、右が質屋坂通り。質屋坂通りは下りの一方通行

F「ああ、質屋坂通りにあるから質屋坂なんだね」

K「いえ、質屋坂があるから質屋坂通りなんです」

F(……)

K(……)

F「さっそく下ってみよう!」

K「はい……」 

 

↑建物が道に沿って律儀にカーブを描く
↑建物が道に沿って律儀にカーブを描く

 

 

 

K「お店の中もカーブしてるのかな」

F「お店の人もカーブしてるのかな」

K「意味わかりません」

 

 

F「たしかめてみよう。こんちはー!

K(いきなり入ってくのかよ!) 

洋品店の店主さん(以下Y)「いらっしゃい」

F「正面のガラスと店内の壁って、微妙に斜めですよね」

Y「建物が曲がってるからね。あと、店の奥に行くほど床が低いんだよ」

↑絶妙な角度で直線が組み合わされた店構え。それにしてもショーウンドウと壁の角度が極端な鋭角。店の奥が一段低くなっている
↑絶妙な角度で直線が組み合わされた店構え。それにしてもショーウンドウと壁の角度が極端な鋭角。店の奥が一段低くなっている

 

Y「ところで、何かの取材?」

F「ええ。『こがねいコンパス』というインターネットのフリーペーパーみたいなものがあって…」

Y「フリーペーパーねえ。趣味なの?

 

 

F K(趣味…)

Y「ま、がんばってください」

FK「ありがとうございます!」


↑坂の途中にはマンション『小金井スカイコーポラス』。ここも道に沿ってカーブを描く
↑坂の途中にはマンション『小金井スカイコーポラス』。ここも道に沿ってカーブを描く
↑熊本銘菓『武者がえし』(お菓子の香梅HPより)
↑熊本銘菓『武者がえし』(お菓子の香梅HPより)

 

K「市内で一番古いマンションだそうです。この曲線、お城の武者返しみたいですね」

F「武者がえし?」 

 

 

 

 

 

K「お城の石垣のことでしょ!」


↑熊本城(画像提供:663highland氏)
↑熊本城(画像提供:663highland氏)

 

F「ああ。築造は熊本城と同じ15世紀と言われてるからね」

K「だれが言ったんですか! そこまで古くないです」 

 

 

↑スカイコーポラスのテナントには、小金井街道側からも質屋坂通り側からも入ることができる
↑スカイコーポラスのテナントには、小金井街道側からも質屋坂通り側からも入ることができる

 

K「あ、あの床屋さん、小金井街道から見ると路面店なのに、こちらからだと3階になってる!」

F「さすが坂中マンションだね!」

 

↑質屋坂側の入り口。三色ねじり棒がかわいいね
↑質屋坂側の入り口。三色ねじり棒がかわいいね

 

K「ちょっと床屋さんまで行ってみましょうか」

F「裏側も床屋さん。リバーシブルです」

 

↑レタリングは管理人さんのオリジナルか。濁点の位置もオリジナル
↑レタリングは管理人さんのオリジナルか。濁点の位置もオリジナル

 

 

K「古い建物ですが、よく管理されていますね」

F「ソダイ゛コミ…」

 

K「え?」

F「ソダイ゛コミ…。発音難しいね。舌を軽く噛みながら唇を突き出して息を吐くようにして発音する、と辞書にあります」

K「どこの辞書ですか?」

 

 

 

F「それにしても粗犬てなんだろね」

K「『犬』じゃないよ!

 

 

スカイコーポラスを離れて、ふたたび質屋坂へ。

 

↑自転車がガタガタと下っていく
↑自転車がガタガタと下っていく

 K「路面が石畳なのは風情があるけど、スピード出し過ぎを防ぐためかもしれませんね。でも一方通行で前方から自動車が来ないせいか、勢いよく下っていく人も多いですね」

F「ガタガタガタ……」

K「あなたは歩きでしょ」

F「寒いんだよ」

K「たしかに」

坂の途中には、例によって小金井市が立てた由来の標識が。

 

 

 

〈この坂道は、埼玉県志木から府中へ商人が往来した志木街道の旧道で、この街道では最も険しい坂であった。この坂に沿って、幕末から明治の初めにかけて、当時の下小金井村の星野家が開いていた質屋があったので、質屋坂と呼ばれるようになった。また、坂が鎌の形に似ているところから、かま坂ともいわれている〉

 

 

 

K「たしかにほかの坂に比べると、大きく蛇行しています」

F「ああ!」

K「今度は何…」

F「巳年だから、坂初めは蛇行した坂を選んだんだね!」

K(坂初め?)

 

 

 

坂を下りきって左手、自然食品店『ろばや』 の赤い屋根が目を引く。

 

↑こぢんまりした店から溢れるように、自然食品やフェアトレードの珈琲豆などが並ぶ。昨年、東久留米での創業から20周年を迎えた(小金井に移転したのは1999年)
↑こぢんまりした店から溢れるように、自然食品やフェアトレードの珈琲豆などが並ぶ。昨年、東久留米での創業から20周年を迎えた(小金井に移転したのは1999年)

 

F「ロバはどこで売ってるの? って言おうと思っただろ」

K「自分の思いつきを他人に押しつけないでください」 

 

↑昔ながらの店構えの豆腐店のあたりで坂は平坦になり、薬師通りと交差する。交差点から西に進むと「幡随院の坂」の坂下だ
↑昔ながらの店構えの豆腐店のあたりで坂は平坦になり、薬師通りと交差する。交差点から西に進むと「幡随院の坂」の坂下だ
↑薬師通り沿いに立つ案内板
↑薬師通り沿いに立つ案内板

 

F「あれ? 質屋坂が途中で切れてる…」

K「金蔵院のところの「黄金井の水」って、六地蔵のところの「黄金の水」とは違うのかな」

F「謎だね…」

K「謎だね…」

 

 

 

薬師通りを東へ進むと小金井街道との立体交差にぶつかる。もちろんそのまま小金井街道をくぐることは可能だが、少し北に進むと小さなトンネルに出会う。

 

 

F「小金井市内には、こういうアーチ型のトンネルが全部で3つあるよ」

K「そんなにありますか」

F「Q1. あとの2つはど~こだ?」

K「えええええっ、クイズなの?」(※読者のみなさんも探してみてね!) 

 

 

トンネルをくぐって、小金井街道の向こう側へ抜けてみると……


↑突如現れる「はけの森緑地2」
↑突如現れる「はけの森緑地2」

 

K「2ということは1もあるのでしょうか」

F「ワン!」

K「犬じゃないよ!」

F「Q2. じゃあ、『はけの森緑地1はど~こだ?」

K「またクイズかよ…」(※読者のみなさんも探してみてね!)

 

↑「はけの森緑地2」の中は、幹線道路に近接しているとは信じられないほど閑静
↑「はけの森緑地2」の中は、幹線道路に近接しているとは信じられないほど閑静

K「日本庭園のようなたたずまいですね」

F「背中でわびさびを表現してみたよ」

K(単に後ろ姿がさびしいだけでは…)

 

 

「はけの森緑地2」を通り抜けたところは金蔵院の南側。小金井小次郎の墓がある、西念寺が目の前に現れる。 

 

 

↑西念寺
↑西念寺

元の道に戻って、「はけの森緑地2」の西側を小金井街道の陸橋沿いに北に向かうと、妙貫坂に出る。

↑マンションと墓地に挟まれ、谷底に向かうような妙貫坂
↑マンションと墓地に挟まれ、谷底に向かうような妙貫坂
↑手すりは古いけど、レリーフは桜
↑手すりは古いけど、レリーフは桜

 

 

〈前原坂上交差点は、その昔「六道の辻」といって、六本の道が交差していた。そのうちの一本がこの道で、畑や水田の耕作のための農道であった。急な坂の東側に墓地があり、その南側、現在のカシ並木があるあたりに、明治中ごろから大正の初めごろまで「妙観(貫)」といわれる僧が「庵」を造り住んでいたので、妙貫坂と呼ばれるようになった〉

F「Q3.交差していた6本の道ってど~れだ?」

K「クイズはもういいよ!」

F「意外に通行人が多いね」

K「実はこの坂、はけの上下を結ぶ坂のなかで一番短いんじゃないかな。ちょっと急だけど上るのが楽ですよ」 

 

実際には、妙貫坂のてっぺんは前原坂の途中なので、はけの上まで上りきったとは言えないが、上るのが楽に感じられるのはたしか。  

 

 

↑妙貫坂のてっぺん。「はけの道」の入口には「西之台遺跡B地点」の看板がある
↑妙貫坂のてっぺん。「はけの道」の入口には「西之台遺跡B地点」の看板がある
↑書いてあった
↑書いてあった

 

 

K「これがB地点ということは…」

F「ワン!」

K「犬じゃないよ! しかも、1じゃなくてAだよ!」

F「Q4. じゃあ、A地点は…」

 K「看板に書いてあるよ!」

 

 

(おまけ)

妙貫坂を上りきったあたりから少し下ると、前原坂の初日の出スポットだよ。

 

↑2013年元旦の朝、なんとなく集まった人びと
↑2013年元旦の朝、なんとなく集まった人びと
↑今年は少し雲がかかってしまった
↑今年は少し雲がかかってしまった

K F「本年もよろしくお願い致しますm( )m」

 

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T(富永さん)「僕の出番はまだかな」

F K「あっ」

 

 前号の予告をすっかり忘れ、富永さんをひと月も待たせたふたりであった。

 

 

 

 

再び、富永さんの見せたいものとは?

次号(2月上旬)大久保墓地の坂の支流は誰のため? に続く。 (※クイズの答も来月に続く)

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※このシリーズでは、★★★★★を満点に毎回坂を適当に採点していきます。項目は適当に変わることがあります。

 

 ■質屋坂

ガタガタ度 ★★★★★

自転車度 ★★★

蛇行度 ★★★★★

城壁度 ★★★★★

トンネル度 ★★★★


より大きな地図で 質屋坂と妙貫坂 を表示

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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