第15回の2 「坂の上には何があるんだろう」

~探検隊結成1周年記念イベント「坂翁に訊け!」 後篇~

小金井 坂下・坂上探検隊

(c)illust_Ueki
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1号 koganeist(K)市内坂下に住む元々5歳男子の母の夫。

2号 folkway(F)市内坂上に住むムジナ。

坂翁 中川湊さん。プロフィールは前回参照

 

 

●番外篇

K「前篇から1か月経ちました」

F(モグモグ)

K「おいしそうですね」

F(モグモグ)

K「ラチがあきませんな。ええと、ご紹介が遅れましたが、本日のスペシャル坂スイーツ、“坂まんじゅう”です」

坂まんじゅう
坂まんじゅう

F「みんな(ゴクッ)……忘れてると思うから(うぐぐ)……前篇をふりかえってみるよ」

K「あわてるとノドに詰まりますよ」

F「ええと……〈たまらん坂の由来を語る坂翁が、思わず洩らした詠嘆の声とは……〉」

坂翁「あ~、こりゃたまらん!」

F「ありがとうございます!」

K「では、忘れた頃にやってきた番外篇です」

 

①経験坂(中野区)

経験坂(提供:坂翁)
経験坂(提供:坂翁)

坂翁「哲学堂(中野区)のなかに経験坂というのがあります。みなさんがこの1年、小金井の坂をめぐって、どういう経験をされたかなと思って、この坂を出してみました。上ってみたら、ほんの15歩か20歩くらいです。

 この近くに井上圓了さん(仏教哲学者。東洋大学創立者)のお墓がありますが、丸いお墓です。丸い人は人柄がいいですよ

K「とくに異論はありません」

 

②のぞき坂(豊島区)

のぞき坂(提供:坂翁)
のぞき坂(提供:坂翁)

坂翁「これは学習院大学の東側、目白駅を出て目白通りを右に行ったほうにあります。のぞき坂というのは、単純にいえば、坂上から見ていると車がすーっと沈んでいくように見えて、思わずのぞき込むような坂ということですね。

坂下から見ると、お嬢さんが上っていくときにまた何か見えたりして情緒豊かです」

F「こりゃたまらん!

K「やっぱりそれですか」

 

③切通しの坂(渋谷区)

切通しの坂(提供:坂翁)
切通しの坂(提供:坂翁)

坂翁「これが僕の最も好きな坂なんです」

F「なのに番外篇」

坂翁「岸田劉生さんという画家がいらっしゃって、フランスへ行ったり来たりしながらすばらしい作品を残した人ですが、その方が写生したのがこの切通しの坂です。

実は、僕の田舎の信州松本の近くに三才山(みさやま)という低い山があって、その山に行く途中にこんな坂がありました。ちょうどこのような赤土の坂道で、子どもの頃、親父とよく歩いたんです」

《道路と土手と塀(切通之写生)》(1915年/東京国立近代美術館)
《道路と土手と塀(切通之写生)》(1915年/東京国立近代美術館)

坂翁「皆さんのお父さん、お母さんはどんな地方の方かわかりませんが、大正時代であればどこへ行ってもこんな感じでしょうね。この小金井あたりも畑ばかりで、風が吹けば家の中に砂が入ってざらざらするくらいだったと思います。今はどこも鋪装して蓋をしてしまっていますが、こんな坂は、土の匂いがして、非常にいいですね。

 坂の上には何があるんだろう、という期待を込めて、下から上を見るのもいいものです。そんな、少年のころのイメージがダブるので、載せてみました」

F「坂を写真に撮っても、坂らしく写すのはむずかしいですが、さすが、岸田劉生さんの絵は、坂感に迫力がありますね」

坂翁「みなさんにちょっとお聞きしますけど、世に坂はたくさんありますが、上り坂と下り坂は、どちらが数が多いと思いますか?

(フロア)「え? 数は一緒ですが…」

坂翁「正解! 拍手! うっかりすると、坂下の人は“上り坂のほうが多い”と言っちゃったりしますが」

F「下り坂と上り坂の数は人の人生にある。坂を下ったまま帰って来ない恋人もいるかもしれません」

K「意味がよくわかりません」

 

④綱坂(港区)

綱坂(提供:坂翁)
綱坂(提供:坂翁)

坂翁「これは、小金井にもちょっと似た坂がありますね」

K「平代坂が似てますね」

坂翁綱坂といって、渡辺綱(平安時代の武将)という人が、この坂上で生まれたという伝説がある坂です。坂上に住む人は、どっちかというと有名な人とか資産がある人とかが多いですね」

K「……いま、ちょっと坂下をサベツしませんでしたか?」

F「私も早く坂下でくつろげる身分になりたいです」

K「坂下だからと言って、くつろいでいるわけではありませんよ」

F「坂下のくせにくつろげないとは!」

K「坂下と坂上、どっちが上でも下でもないんですよ!」

坂翁「坂下は坂下で、お店をやる人が住んでいたりして、僕は両方好きですよ……と言っておいた方がいいですね(笑)」

 

⑤鐙坂(文京区)

鐙坂(提供:坂翁)
鐙坂(提供:坂翁)

坂翁「鐙(あぶみ)って聞いたことありますか。馬に乗るときに、足を引っかけるところですね。鐙坂は、坂のかたちが鐙に似ていると言われています。

この近くに樋口一葉さんが住んでいて、いつもこのあたりを散策したと言われています。散策というか、あの人の場合は勉強に通ったわけですが。

このあたりから東京大学に行くと菊坂になります。菊の花を植えたので、あのへん全体を菊坂と言うそうですが、たとえば赤坂なんかも同じで、どの坂がほんとうの赤坂なのかわかりませんね。

樋口一葉さんも、ちょっと遠くの半井桃水の家に行ったり、上野の図書館に行ったりしていますが、昔の人はずいぶん遠くまで歩いてゐますね」

F「坂翁、旧仮名になってますよ」

坂上からの鐙坂(提供:坂翁)
坂上からの鐙坂(提供:坂翁)

坂翁「これは鐙坂を上から見たところです。このあたりに馬の鐙を作る家があったという説もあります。一つの坂の名前の由来には、民話とか説話によって二つか三つの説があるものですね」

 

⑥モザイク坂(新宿区)

モザイク坂(提供:坂翁)
モザイク坂(提供:坂翁)

坂翁「これは……もう雑談中の雑談になっちゃいますが(笑)。新宿駅の西口のほうにあるモザイク坂ですね。このハイカラな女性の靴はどうですか」

K「どうですか、と言われても……ハイヒールですね」

 

どうですか
どうですか

坂翁ハイヒールそのものが坂なんです。婆さんになると低くなってきますが」

F「ハイヒールはかなり急坂ですね」

坂翁「何度あるんでしょうか。坂の傾斜は、「~度」という場合と「~パーセント」という場合がありますが、僕は度数で言うほうです

F「そうでしたか」

坂翁「坂を計る器具があって、小金井の坂はだいたい5度だとわかります。5度あれば「ああ、坂だなあ」というくらいになりますし、10度になると、かなり急な感じになります。パーセントでいうと17~18パーセントにもなります。

スカイツリーだとか大川端だとか六合川の外れだとかに、喜び勇んで行かなくても、小金井の周辺にも坂はいっぱいあります」

 

●番外篇の番外篇

K「写真はもうこれで終わりですが……」

坂翁「ははあ……。同じ町でも、春夏秋冬4回くらい歩くと、非常に楽しいということがあります。京都の方には二年坂というのがあるそうですが、来年、探検隊の2周年をやることになったら、皆さんが2年間で回ったところを教えてもらえるとありがたいなあと思います。

瀬戸内寂聴さんというお婆さんが、80歳を過ぎてからやったことのないことをたくさんやったと書いていますが、僕も80歳の峠を越したけれど、これからまたいいことがあるかなあ、と。また来年みなさんと会えればいいですね」

F「坂翁の行動力には驚きます。この前、北坂場でもお見かけしましたよ」

坂翁「最後に、その他の坂をいくつか紹介しますね。

その他の坂といってもいろいろありますが、たとえば希望の坂。文京区の護国寺の左側の小学校に上がる道が「希望の坂」と呼ばれています。

それから、急坂というのがあります。田園調布のほうですが、「急坂」という案内板が立っています」

K「よっぽど急坂なんですね」

坂翁無名坂はご存じでしょうか。名前のない無名坂はたくさんありますが、世田谷区の岡本というところに、仲代達矢さんの無名塾があって、そこの坂が「無名坂」という名前ですね。

あと、“消えた坂”というのもあります。再開発によって消えた坂ですね。六本木通りからテレビ朝日通りに向かっていく玄碩坂という坂がありましたが、六本木ヒルズをつくるときに、これがすっかり無くなってしまった。

こんど、7年後にオリンピックが来るそうですが、まさか、また坂が消されちゃうということはないと思いたいですね」

K「最後は細かいダジャレで締めていただきました。ありがとうございました!」

 

●番外篇の番外篇の番外篇

 

坂翁「そうそう、再開発と言えば……」

K「締めてなかった」

坂翁「スカイツリーのほうにも坂があるのを知ってます? ソラミ坂といって、空を眺めながら楽しめるそうです。スカイツリーには、あとハナミ坂というのもあります。

F「坂翁、新しい坂もぬかりなくチェックしてますね」

坂翁「新聞でも“”の字が出てくる記事は必ず目を通してるんですが、この前も、坂だと思ったら、かみさんに「これはでしょ」と言われたり(笑)。

そういえば、お二人に初めて会ったときに、板橋区の話をちょっとしたんだけど、あそこには40くらい坂があるらしいですね」

F「もはや坂橋区と改名したいですね」

坂翁の坂本ライブラリーの一部
坂翁の坂本ライブラリーの一部

坂翁「諸先輩方の坂の本を読むと、だいたい700~800くらい紹介されていますが、東京中を見れば1200どころか3000も5000もあると思います。

 どこへ行っても、傾斜があれば、それは坂なんです

F「どうもありがとうございました。皆さん、来年までに質問を考えておいて下さい。今回は“坂翁に訊け”というより、“坂翁が訊いた”というイベントでしたが」

坂翁「じゃ、また来年。……“また”といえば、猫又坂なんていうのもあってね。

 いや、これは切りがないですね(笑)」

FK「今度こそ、ありがとうございました!」

終了後、参加者の有志で、学校の坂(三楽の坂)水琴窟の坂第二サボテン坂弁車の坂サボテン坂を散策した。

 

F「そういえば小金井市の市制施行55周年記念に募集していた、坂の愛称が決まったね」

K「さわらび坂に決まったところが、われわれが水琴窟の坂と呼んでいたところでしょうか」

F「「水琴窟の坂」は採用されなかったの?」

K「すみません、応募しませんでした」

F「探検隊なのに応募しなかったの??」

K「ごめんなさいごめんなさい」

F「応募しなかったら採用されるわけないじゃない」

K「何を応募したんですか?」

F「オレは応募してないよ」

K「……」

F「……」

 

サボテン坂では、サボテンの植え主さん(テン主)にたまたま遭遇。なんと、サボテン坂のサボテンは、第二サボテン坂のサボテンに憧れて植えたという驚愕の事実が発覚したのであった!

第二サボテン坂のサボテン(左)と第一サボテン坂のサボテン(右)
第二サボテン坂のサボテン(左)と第一サボテン坂のサボテン(右)

F「第二サボテン坂にあるのが第一サボテンで、第一サボテン坂にあるのが第二サボテンだったということか!」

K「わかりにくいです」

坂児に先導されて、坂散策をする一行
坂児に先導されて、坂散策をする一行

ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました!

 ●次号(12月中旬更新)野川の源流で豚汁こぼすなよ!に続く。

(c)illust_Ueki
(c)illust_Ueki

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

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