第12回 坂翁に訊け!

小金井 坂下・坂上探検隊「坂の途中で会いましょう」

1号 koganeist(K)市内坂下に住む元5歳男子の母の夫。

2号 folkway(F)市内坂上に住むムジナ。

【特別ゲスト】

坂翁 市内坂上に住む坂の達人。

 

 

(c)csuwama
(c)csuwama

 

連載1周年記念特別企画

 

K「連載12回だよ」
F「連載12回だよ」
K「1年経ったね」
F「1年経ったね」
K「繰り返すのやめてもらえますか」
F「繰り返すのやめてもらえますか」
K「……」
F「……」

 

ということで、今月は祝・連載1周年記念特別企画「坂翁に訊け!」をお届けする。坂翁(さかおう)というのは、われわれが勝手にそう呼んでいるだけで、小金井市にお住まいの中川湊さん(81)のことである。中川さんは、前回の坂探検のときに偶然お会いした坂愛好家で、20年間も都内の坂を巡っておられる。われわれは、たった1年で「坂の魅力は坂中にあり」なんてわかったようなことを言い始めたが、20年のキャリアの前ではヒヨッコ以前のタマゴだ。タマゴが先かヒヨコが先かだ(なにいってんだ)。そんなわけで、探検隊では、中川さんのことを敬意を込めて坂翁とお呼びしている。

そんなわけで、今月の坂探検はいったんお休みして、坂翁に坂の魅力をたっぷり語ってもらった。インタビューは、7月15日に小金井市民交流センター1階ロビーで行なった。

 

↑2時間を超すロングインタビューとなった
↑2時間を超すロングインタビューとなった

 

リタイアしてから逆向きに歩き始めた

F 「坂翁が坂に興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。というか、もう何年くらい坂を探訪してらっしゃるんですか」
K (ほぼ同じことを訊いてますよ、Fさん)

坂翁 「はいはい。定年後は嘱託で65歳まで務めておりましたので、本格的に坂を訪ね始めたのはそれからですね。きっかけは、リタイアの少し前、1992年でしたか、写真家の中村雅夫さんの『東京の坂』という写真展を見たのが発端でしょうか。ですから、もう20年以上になりますかね」

 

↑坂の写真展を見に行ったのが坂巡りの発端となった
↑坂の写真展を見に行ったのが坂巡りの発端となった

 

F 「どうして坂に? というか、なんで坂にご興味を」
K (また同じこと訊いてるよ、この人)

坂翁 「はいはい。仕事のときは平坦地ばかりでしたから、フリーになってからですね、こう、なんか変化のあるところに行きたくなりまして。それから、自宅が坂上にありますので、リタイア後は仕事で通う道とは、逆の方向に歩き出したというか

F 「なるほど、逆向きに歩き出したと。でも山ではなくて坂なんですね。というか、山じゃダメですか
K (質問ポイント外してるよ。というか、くどいよ)

坂翁 「というか、山はタイヘンでしょう。その点、坂は老若男女誰でも上り下りができます」

F 「あのう、坂翁。写真撮ってもいいですか」
坂翁 「あ、いいですが、帽子は被っていてもよろしいですか」
F 「いつも被っていらっしゃるのでしたら、そのままでけっこうです」

 

坂翁 「いやー、こう暑いと帽子は必需品です」
F「ホントホント、帽子がないと坂の途中で死にますよ
K (死ぬとかいうなよ)

↑じゃ、帽子はかぶったままで
↑じゃ、帽子はかぶったままで

 

都内の1000以上の坂を制覇

F 「山じゃダメですか」
K (ここまでしつこいと感心するわ)

坂翁 「登山は高いところに行くので、誰でもできることではありません。でも、坂はそこまでタイヘンじゃない。どなたでも歩けます

K 「どなたでも、というのがいいですね。退職されてから逆に歩き出したというあたり面白いですね(ここだろ、ポイントは)」

坂翁 「駅とは逆の方向ですね。小金井の場合、逆に向かうと坂がたくさんあるんです。市内にも坂がたくさんありますが、都内には23区などにもいい坂がたくさんあります。そんな坂を全部巡ってみようと思ったんです」

K 「今までどのくらいの坂を訪ねたんですか」

坂翁 「1000以上はまわったでしょうか」
KF 「イチ、ジュウ、ヒャク、セン!!」

坂翁 「最初は、文京区の坂などを訪ねて行きました。鷺坂とか、鼠坂とか風情のある坂がございましてね」
K 「ああ、このあたりに親戚が住んでいるのでよくわかります。ここのカーブいいですね」

↑文京区の鷺坂(1996年2月/撮影:中川湊)
↑文京区の鷺坂(1996年2月/撮影:中川湊)

 

坂翁 「こんなん持ってまいりました。勾配を測るものです。ちょっとこれ測ってみましょう。何度ありますか?」

↑突然、ICレコーダーの角度を測り始める
↑突然、ICレコーダーの角度を測り始める

 

F 「30と少しです」
坂翁 「あー30ね。東京じゃこれだけあれば急坂ですよ。小金井はだいたい10度くらいですね。愛宕(港区)の男坂なんかは石段なので40何度あります」
F 「それいいですね。どこで売ってるんですか
坂翁 「たしか神田あたりで買いました」

坂巡りの楽しさが倍増する

K 「今日は資料もたくさん持ってきていただきました」

坂翁 「この岡崎清記さんの『今昔 東京の坂』がなかなか充実していいですよ。小金井の坂も載っています。ただ、残念なのは白伝法の坂自伝坊の坂になっている。あとから出た坂の本も、この本を参考にしているからみんな自伝坊になっています。みんな行かないで書いているからこうなる」

K 「小金井市民としては非常に残念ですね」

↑坂巡りのバイブル、『今昔 東京の坂』(岡崎清記著/日本交通公社出版事業局/1981)
↑坂巡りのバイブル、『今昔 東京の坂』(岡崎清記著/日本交通公社出版事業局/1981)

 

坂翁 「ちょっと手を貸してもらえますか」
F 「え?!

坂翁 「指を開くと東京の地形に似ています。電車に乗っていると分かりませんが、線路はけっこう丘を越えているんです。武蔵野の東端(山の手地域)は七つの丘になっていて、それが指を開いたときの形に似ています。指2本足りませんけどね(笑)。で、ここが国分寺崖線とすると、こうなっても、こうなって、こうなってるんです」

F 「ぐへへ。こそばゆいです」

坂翁 「できれば、国分寺崖線の端っこからずーっと歩いていって多摩川(二子玉川)までの坂を巡ると、新発見ができて楽しいですよ。こんなところに竹林が、なんて自然にも親しめます」
F 「 野川沿いに二子玉川まで歩いて行かれたのですか! 20㎞はありますよ」
坂翁 「はい。歩いて」

↑「ここが丘陵地になっていて、ここが谷で水が湧いている」(坂翁)
↑「ここが丘陵地になっていて、ここが谷で水が湧いている」(坂翁)

 

K 「近隣から都心から多摩地方まで、あらゆる坂を巡っておられる」
坂翁 「いや、まだ板橋や多摩地区にもたくさん残っていまして、残り100以上はありますかね。年齢的なものもありますので、全部巡りきれるかどうか」

↑びっしり書き込まれた手書きのリスト。巡った坂にはマーキング
↑びっしり書き込まれた手書きのリスト。巡った坂にはマーキング

 

K 「板橋も坂が多いんですか」
坂翁 「意外に知られていないんですが、いい坂がたくさんあります。『叱られて』という童謡がありますが、作詞者の清水かつらの碑が板橋区の成増にあります。ここが叱られて歩いた坂かな、などと思いながら歩いたり」
F 「叱られて~、叱られて~、と坂を歩くのは哀愁です」

坂翁 「芳須緑さんが書かれた小金井風土記のシリーズ3冊目の『続々小金井風土記』にですね、別荘物語という項がありまして、それを読むと小金井の坂のあたりに建てられた別荘のことがよく分かります」
K 「三楽の坂の前田家の別荘などがそうですね。ところどころ大きなお屋敷がありますよね」
坂翁 「そんな先人の本などを読みながら歩くと、坂巡りの楽しさが倍増します

↑たくさんの坂の資料をお持ちいただいた。これは一部
↑たくさんの坂の資料をお持ちいただいた。これは一部

 

1日15本の坂を巡る

K 「1日に何本くらい坂を巡られるんですか。坂を本で数えるのかどうか分かりませんが」

坂翁 「今はそう何本も行けなくなりましたが、多いときは、1日10本から15本くらい巡っていましたね」
F 「やっぱり坂はで数えるんですね!」
K (感心するところはそこじゃないだろ)

坂翁 「話が前後しますが、新宿に坂町というところがあります。そこにも坂がありまして坂町坂というんですね。くくく(と笑い声)。その近くに永井荷風が住んでいたことがあるんです」
F 「坂町坂だって。うひひ。上から読んでも下から読んでも……」
坂翁 「……坂町坂。面白いでしょ。くくく。新宿には芥(ごみ)坂なんでのもあります。小金井もゴミ問題で苦労してますが。いやー、話が前後ばかりして何がなんだかわからないでしょう」
F 「分かります。分かります。なんとなく分かります

 

小金井の坂ベスト5!

 

K 「小金井が出たところで、坂翁が選んだ小金井の坂ベスト5を挙げていただけますか」

坂翁 「第1位は平代坂ですね。坂の途中に森があって新緑の頃はいいんですよ。子どもの遊び場にいいですよ。2位は質屋坂。カーブがいいですね。質屋という名前が貧乏くさいというか古くさくていいです」

K 「3位は?」
坂翁 「ムジナ坂の石段4位は、昔の風情が残る二枚橋の坂ですかね」

F 「ジャーン!! いよいよ5位の発表です
K (5位でジャーン!! かよ)
坂翁 「白伝坊の坂も途中に墓があって小金井らしい。妙観坂も念仏坂も捨てがたいが、やはり白伝坊かな」

K 「坂翁のベスト5決まりました!

①平代坂
②質屋坂
③ムジナ坂
④二枚橋の坂
⑤白伝坊の坂

↑小金井の坂では一番好きな平代坂
↑小金井の坂では一番好きな平代坂

坂の上には未来がある

F 「ところで坂翁は、坂を上るのと下るのでは、どちらがお好きですか?」

坂翁 「夏目漱石は山路を上りながら、こう考えた(草枕)と書いたけれど、あれがもし「下りながら考えた」らどうなるかと考えると面白いですよね。わはは」
F 「で、どっちなんですか?」
坂翁 「うーん、私は上りですかね。坂の上には未来があるような気がします」
F 「ワオ、未来!!
K 「これからも未来を目指して、東京の坂を制覇してください」

坂翁 「年齢が年齢だけにどこまで動けるか分かりませんが、とにかくやれるところまでやってみると。やってみると

↑坂翁と平代坂を下るF。暑いので途中で引き返した
↑坂翁と平代坂を下るF。暑いので途中で引き返した

 

坂翁は「やってみると」を力強く繰り返した。後日、坂翁から、小金井の北口の坂の資料が郵便で届いた。それには「小金井市の北方の巡りにお使い下さい」と 一筆添えられていた。来月から連載も2年目。これまでひたすら西を目指してきたが、そろそろ北を目指すときがやってきたのかもしれない。

われわれ探検隊も、とにかくやれるところまでやってみると。やってみると。

 

------------------------------------------------------------------------------

※今月は坂の採点と地図はお休みします。

 

 

(c)illust-ueki
(c)illust-ueki

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
写真をクリックすると大きくなります
全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから

小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

メルマガ登録をどうぞ!

「こがねいコンパス」からのメルマガをご希望の方は以下にメールアドレスをご入力ください。新しい「市政フラッシュ」の掲載や、次号の主な内容などについてご連絡します。

コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

 ご連絡は koganeicompass@gmail.com まで。