1号 koganeist(K)市内坂下に住む元5歳男子の母の夫。
2号 folkway(F)市内坂上に住むムジナ。
3号 hayamapapa1966(H)市内坂上に住む3児の母の夫。9回目。
11号 Lee(L)市内坂上に住む元3歳の早熟な坂児。6回目。
13号 kengo_tank(T)市内坂上に住む元3歳の坂児の母の夫。6回目。
K「終わるね」
F「長かった」
K「2012年9月からあしかけ3年の連載でした」
F「そだね」
K「感慨はありませんか」
F「……」
K「……」
●新しく5坂の愛称が決まったが……
18回の連載の間に、市内の名前がついている坂はすべて回った(と思う)。そのほかに、無名だけどよい坂がたくさんあった。そんな無名坂に、小金井市が市政施行55周年を記念して市民から愛称を募集、昨年末に新名称が決まった。
K「でもね、新しく決まった愛称の地図をじーっとみると、〈みはらし坂〉は〈稲荷坂〉、〈荒牧坂〉は〈つづら折りの坂〉(貫井大坂)という名がすでについているように思うのですが……。〈稲荷坂〉は連載2回目でもやりましたよ」
F「名前があるのに、なんで新たに坂名を募集したのかなぁ?」
K「屋上屋を架すというか、坂上坂を架すみたいな。〈荒牧坂〉などはトリプルネームですよ。教育委員会が発行した『小金井市の歴史散歩』にも掲載されています」
F「よし、市に聞いてみよう。あ、もしもし、オレだけど。え?! うんうん。なるほど。ほうほう。それで。はいはい。わかった」
K「市の人とツーカーですか。で、なんですって?」
F「生涯学習課の人に聞いたんだけど、なんかね。まあ、いろいろあるんだって」
K「いろいろって、どんないろいろですか」
F「まあ、そこは分かってくれよ。人生いろいろみたいな」
K「もういいです! 私が電話します。あ、もしもし、オレだけど。え?! うんうん。なるほど。ほうほう。それで。はいはい。わかった」
F「君もツーカーかよ。で、なんて言ってた?」
K「いろいろあるそうです……いや、ちゃんと聞きましたよ。ちょっと下にまとめておきますね。ちなみに、市の募集なので公道に限っているそうです」
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〈稲荷坂〉
昔は「花咲稲荷」があって〈稲荷坂〉と呼ばれていたけれど、今は稲荷もなくなり坂の名を知る人も少ない――という郷土史家の意見を参考に新たに愛称を募集した。
〈つづら折りの坂〉(貫井大坂)
元の坂は貫井トンネルが完成したときになくなった。『小金井市の歴史散歩』の地図は正確ではないので、版を重ねることがあれば訂正する。
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F (ゆかりのものが現存しないから新しく坂名をつけるという判断だけど、『小金井市の歴史散歩』的にはどうかと思うけどね)
K「まあ気を取り直して、新たに愛称がつけられた5坂を東から順番に巡ってみましょう」
●〈みはらし坂〉
F「ここは、一昨年(第2回 稲荷坂)もうやっちゃったんでねぇ。しかし、降ったねぇ。雪国みたいだよ」
K「となると、ここが〈みはらし坂〉かどうかということですね」
F「坂を上がっても、いっこうにみはらしがよくならないんだけど」
K「確かに。みはらしがよいとはいえません」
F「市に聞いてみよう!」
K「いや、もうやめときましょう。人生いろいろ、愛称もいろいろなんですよ」
F「妙にものわかりがいいね」
L(決まったものは、いまさらしょうがないよ)
F「まあ、そうだね。困る人もいないだろうし。え?! また超能力坂児のテレパシーか!」
●〈観音坂〉
H「あっ、富士山やー」
K「おおっ、この坂の方がみはらしがいいじゃん」
F「〈第2みはらし坂〉ということにしよう!」
T「勝手に命名していいんですか。ここ〈観音坂〉に決まったんですよ」
F「そうじゃった、そうじゃった。ここは紛う事なき観音坂じゃ。坂の途中に観音様が祀ってある」
K「ストレートですね。というか、〈観音坂〉としか思いつきません」
F「で、観音様がなくなればまた愛称募集と」
K「またやりますかね」
F「やりかねないね。まあ、子育て観音なんだから、これを機に市も認可保育所の待機児童解消に向けて本気度を見せてほしいね」
K「なんですか突然。社会派モードですか」
F「いや、先日の母親たちの異議申し立て(「認可不承諾」に対する不服申し立て)に子育て観音も行けばよかったのにと思ってね」
K「来たら市の人もビックリだね」
F「母親たちもビックリだよ。どうやって来たんですか! って」
L(あのう……われわれはそろそろこの辺で)
K「え?! もう帰っちゃうの」
L(元3歳児もヒマじゃないのよ)
●〈金蔵院の坂〉
H「あっ、金蔵院やー」
K「ゴメンねHさん。今日は読み上げるものがなくて」
F「この坂も〈金蔵院の坂〉としかいいようがないね。ちゅうか、今まで名無しだったことが信じられないよ。行政の怠慢だね」
H「まあまあ。このあたりには、いい坂が多いですね」
K「そうなんですよ。〈金蔵院の坂〉の下から階段坂の〈大久保墓地の坂〉(第6回)が分かれていて、上りき切ると今度は、〈妙貫坂〉(第5回)が待ち受けています」
F「〈妙貫坂〉いいよね。小金井街道一の大坂である〈前原坂〉の脇にひっそりと佇む、地元の人々の暮らしをじっと見守ってきた階段坂ですよ」
K「無理に作らなくてもいいですよ」
●〈サボテン坂〉
新しく命名された坂のうち、残る2坂は西小金井にある。そこにたどり着く前に…
F「せっかくここまで来たからには、〈サボテン坂〉に寄っていこうよ」
K「ちなみに、この連載で〈サボテン坂〉が登場するのは、なんと4回目です」
H「好きなんやな~」
F「好きなんや~」
K「好きなんや~」
F「雪が左右に積まれて狭くなったところから、ちょっと覗いている階段の健気さがいい」
K「がんばってますね、〈サボテン坂〉」
K「サボテン、パーツが減っちゃったようですが」
F「激痩せしてる。サボテンダイエットだね」
K「いろいろ違ってる気がします…」
H「それにしてもみはらしええなあ!」
F「〈第3みはらし坂〉と名づけたいね」
K「もはや、みはらしがよくないのは〈みはらし坂〉だけですね」
●〈荒牧坂〉
西へ向かい新小金井街道をくぐると、〈荒牧坂〉の坂下だ。
H「おおっ! これが〈貫井大坂〉とか〈つづら折りの坂〉とも呼ばれて…」
K「…いなかったという坂です」
F「「荒牧坂 つづら折りの坂 貫井大坂」と詠んだらしいね、芭蕉が」
K「詠んでませんから」
F「『おくのおくのそのまたおくのほそ道』に…」
K「そんなんないでしょ!」
F「トリプルネームが実現しなくて残念だな」
K「残念のツボがずれてますよ」
ちなみに、「荒牧」は現在の前原町から貫井南町にあった昔の字名で、野川の少し下流には「荒牧橋」、上流には「荒牧遺跡」がある。
坂上には雪かきに精を出す坂民の男性が。坂民にとっては、雪は死活問題ですからね。カメラをぶら下げてうろうろしている我々に、坂民が声をかけてきた。
坂民「ナニやってんの?」(※「ニ」にアクセント)
K「市内の坂を巡ってるんですよ」
F「最近、この坂に名前がついたのはご存じですか」
坂民「知らんな」
FK「……」
小金井の坂も、知名度的にはまだまだこれからなのかもしれない。連載、終わっちゃっていいのかな。
●〈さわらび坂〉
愛称がつけられた最後の坂が、ここ、〈さわらび坂〉。
F「〈さわら・び〉?」
K「それは『たまら・び』でしょ」
F「最新号は小金井特集です」
K「宣伝かよ」
「さわらび」は漢字で書くと「早蕨」(芽吹いたばかりの蕨)。坂上の連雀通り沿いにある「さわらび学童保育所」にちなんで命名されたようだ。
F「ここは傾斜がきついね。家の敷地も斜めになってる」
K「カメラが斜めなんですよ」
K「そういえばこの坂、われわれは〈水琴窟の坂〉(第11回に登場)と名づけてましたが」
H「音がせえへんな」
K「あれ、マンホールの蓋が変わってる!」
F「われわれに水琴窟と呼ばせないための市の陰謀じゃな」
K「今回はずいぶん市に絡みますね」
K「わだちのおかげで、坂のカーブ具合がはっきり見えてますね」
F「あの、キュッと上がってからグイッと曲がるところがグッとくるんだよね」
K「それで読者に伝わりますか」
●〈第二サボテン坂〉から〈三楽の坂〉へ
〈さわらび坂〉の西にあるのが〈第二サボテン坂〉だ。
K「サボテンに雪というのも不思議な感じですね」
H「立派なサボテンやな~」
F「こっちが第一だからね」
〈第二サボテン坂〉にあるのが第一サボテンであるというのは、連載第15回の2で紹介した通りです。
坂と、坂中を水平に走る道とが交差する、入り組んだたたずまいは西小金井ならではの風情だ。
〈三楽の坂〉を上りきると「三楽の森」。緩斜面に雪が積もった様子は、まるでスキー場のようだ。
F「生まれ変わったら、小金井の坂でスキーをやるのが夢です」
K「どうぞ現世でスキー場に行ってください」
●あの坂、この坂 ~連載を振り返って~
K「てなわけで、坂巡りもこれにて終了です。Fさん、いちばん印象に残った坂はどこですか?」
F「うーん、最初のころの〈ムジナ坂〉(第1回)とか〈80階段〉(第4回)とか、あのころは素直に感動していて、われわれも初々しかったね。それが、回を重ねて西小金井の入り組んだ坂あたりまでくると、この坂感がいいねぇ、なんて分かったようなことを言うようになってしまって、坂擦れしてきたよね。Kさんはどうよ?」
K「私はやっぱり〈サボテン坂〉(第8回)ですね。行き止まりの袋坂であることと、人目に触れなさ加減というか、見つけた! という感じです」
F「それが、ハケから中央線をまたいで北坂場に行けば、どこが坂なんだかみたいな平坦坂ばかりで、連載も苦労したね。だいたい写真を撮っても違いがわからない」
K「坂がわかったような気分になっていたところで、いきなり北坂場に放り出されてわれわれの実力が試されました。でも歩くうちに、だんだん北坂場が好きになりましたよ。自転車で過ぎるだけではわかりません」
F「坂翁が北の坂を巡るように示唆してくれたのは、そんな意味もあったのかもね」
K「坂翁に訊け! イベントも楽しかった」
●感謝! 感激!
これまで、坂探検に参加してくれた25名の隊員のみなさま、どうもありがとうございました。みなさんのおかげで毎月楽しく坂巡りができました。読者のみなさん、ご愛読感謝です。ステキなイラストを描いてくれた、隊員のスワマさんとウエキさん、ほんとうにありがとうございました。それから、いつも遅れがちの原稿を、辛抱強くかつイライラしながら待ってくださった編集長にはもう言葉もありません。
F「………」
K「………」
相変わらずKとFのコンビで、この春から新連載を開始するべく準備を進めています。5月かなぁ、たぶんそのくらいから始めると思います。ゆるめでご期待ください!
ではひとまず。
K F「ごきげんよう~~~」
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