ザ・コラム

市内在住の論客たちによる論考やエッセイです。

ジャーナリスト山本俊明の「眼」      第2回

「大阪維新」現象を切る

政党政治のメルトダウンか


 現時点で政界の「台風の目」は、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の動向だろう。坂本竜馬の「船中八策」と称した自分たちの衆院選挙向けの大綱骨子を明らかにした。橋下人気にあやかりたい既成政党・議員らの右顧左眄ぶりには呆れかえるばかりだ。地方自治の在り方にも大きな影響が出かねないので今回取り上げる。


◇人気の背景分析

 維新の会ブームの背景には何があるのだろうか。過去にも「地方(雄藩)連合」による改革構想などは何度もあった記憶があるが、掛け声倒れに終わった。それに対し、橋下氏は、大阪府知事時代に府職員給与の削減など改革の「成果」を具体的に見せているのが違うのではないか。公務員組合など「仮想敵」を作り、メディアを動員して団体交渉などもオープン化し、「官治」システムの異常さをあぶりだし、世論の支持があるとしてばっさりと切って捨てる。さらにスピード感もある。

 

 歯に衣を着せぬ物言いと、けんか腰の活劇スタイルで、「吉本興業政治部」と揶揄(やゆ)されながらも、一定の成果を出し圧倒的な支持を集めているとみたい。大阪特有のオカミ嫌いの風土も作用しているだろう。

 

◇問題点=勝てば官軍
 しかし、どこか違和感があると感じている人も多いようだ。筆者もその一人だ。
まず思想調査。赤旗(電子版)によると、橋下市長は大阪市職員に対し、業務命令で「組合にどんな力があるか」「特定の政治家を応援する活動に参加したか」など22項目の労使関係に関するアンケート調査を実施。正確な回答がなければ処分すると脅したという。 市労組は府労働委員会に救済を申し立てた。

 
 問題となった質問を具体的に見よう(大阪弁護士会声明から)。
 ①「あなたは、この2年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したことがありますか」との質問をし、「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q7)。
 ②「あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか。」として「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q6)。

 

 大阪弁護士会は会長声明で、①について、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を侵害する、②について、職員の労働組合活動の自由を侵害する-恐れがあるとアンケートの即時中止を求めた。勤務時間内に公然と政治活動をしていたというのは困るが、公務員も制限付きながら基本的人権は当然ある。

 

 もう一つは政治スタイルの問題。
 政治は権力闘争であり、最終的に選挙で勝てば「官軍」の論理だ。
 橋下氏の権力観を示した文書がある。「体制の変更とは、既得権を剥がしていくことです。いまの権力構造を変えて、権力の再配置をする。これはもう戦争です。新聞は、もっと話し合いをしろ、議論を尽くせと書きます。(中略)しかし権力の再配置に関しては話し合いでは絶対に決着がつきません。」「民主主義の政治にとって、話し合い、議論は大切ですが、最後は選挙によって決着をつけなければニッチもサッチもいかない」(「体制維新-大阪府」橋下徹 堺屋太一・文春新書)。

 

 議員定数の削減や、身分保障に守られてきた公務員の解雇を可能とする職員基本条例などを念頭に置いた考えだ。

 

 だがこれはかつてナチスが政権を取った後の悪名高い「全権賦与法」を彷彿とさせる。橋下氏の物言いには、選挙で勝てば「白紙委任を取り付けた」といわんばかりの「飛躍」が透けて見える。後述するように、条例という「法律」を作りさえすれば、力で押し通しても構わないという印象が否めない。もちろん中央・地方を通じて国民本位の改革が進まないことへの苛立ちが国民側にあるのは事実だが。

 

 ◇「法の支配」
  自由人だった坂本竜馬ならどうするか。日本初の帆船衝突事故で、紀州藩との交渉に当時最新の「万国公法」を持ち出した竜馬なら、どうするか。法曹出身の橋下市長には失礼かもしれないが、あえて「法の支配」という考えをぶつけたい。

 

 「法の支配」とは、専制的な国家権力の支配(人の支配)を排除し、権力を法で拘束することによって国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である(「憲法」芦部信喜)。「国王は何人の下にもあるべきではない。しかし神と法の下にあるべきである」という言葉が本質を示しているとされる。
 

 これは戦前のドイツ・日本のような「形式的に法律に依りさえすれば、権利・自由を制約できる」いわゆる法治主義と似て非なるもの価値観だ。戦前のファシズム体制下でも、人権を制約する際には、法律によってという体裁は整えたのである。

 

 ここで言いたいのは、選挙で勝った多数派が作る法律・条例によっても奪うことのできない「大事な何か」(基本的人権)があるということだ。憲法学の教科書には明示的には書かれていないが、法の背後にキリスト教の根本原理である「神の愛」があるとされる。
 近年では、東欧民主化革命が起こった際にも、反体制派はキリスト教会を拠点として活動していた事実を思い起こしてほしい。法の支配の価値観からは、君が代・日の丸を「上から強制」したり、思想チェックしたりする発想はでてこないはずだ。

 

 ◇ 昭和維新に近い
 2.26事件を描いた映画「動乱」(1980年東映) を30数年ぶりに観る機会が最近あった。高倉健演じる皇道派の青年将校、宮城大尉と、貧しい農村出身で芸者に身を落とした吉永小百合演じる薫の「悲愛」というラブストーリーの伏線がある。


 クーデターを決行した宮城大尉については、監視役の憲兵は「俺が憲兵でなければ同調していたかもしれん」、監獄で担当兵が「全国から減刑の嘆願書がぞくぞくと届いております」と伝えるなど、皇道派の青年将校たちが決して国民から遊離し跳ね上がっていた存在ではないことを間接的に表現している。草の根のファシズム運動が全国津々浦々に高まっていたのだ。合法路線の統制派も民主主義の価値を軽んじる点では同じであろう。陸軍は事件からわずか1年半後に日中戦争(1937年7月)をおっ始めるのだ。

 大阪維新の会は、明治維新をモデルにしているというが、なぜか社会を見つめる価値観において昭和維新の青年将校とダブって見えてしまう。

 

 2.26事件を持ち出したのは、笑って済ますことが出来ない状況があるからだ。それは現在の政党政治の「メルトダウン」とでもいうべき現象だ。
 2月の世論調査(時事通信)によると、民主党は10.1%、自民党は12.3%で、公明党は3.4%、共産党は1.6%で、社民、国民新党、みんなの党などはすべて1%未満。最大は支持なし層(無党派)の68.2%と、1960年以来最も高い数値となった。政党への不信感は相当なものだ。これでは二大政党制は機能しようがない。

 

 朝日新聞と朝日放送の2月の大阪府民世論調査では、橋下氏への支持率は70%に達したという。また「次の衆院選挙で国会で影響力を持つよう議席を取って欲しいか」には59%が「とってほしいと」と回答したそうだ。
 

 調査の種類は違うが7割近い無党派層と、橋下支持の70%の一致は何か不気味だ。長く日本政治を見つめてきた知人は「無党派層のマグマが溜まっている。(大阪・東京・名古屋で連携する動きがあれば)100議席の大台もありうる」とみている。

 

 ちなみにナチスのドイツ国会の議席は、1928年には12議席にすぎなかったが、30年には107議席。32年には230議席に達した。そして33年1月にナチスはついに政権を獲得するスピードぶりだったのだ。大阪の動きは注意深く監視する必要があろう。
 他方、草の根民主主義勢力は、現状打破のための対抗策を描き切れていない。もしあるとすれば、都市の基礎自治体が連携してスピード感のある改革の実績を上げることしかないのではないか。平たんではない道だが、民主主義的な熟議と、法の支配に裏打ちされた人権感覚のある改革で、民衆の不満を理性的な形で解決させていくしかないと考える。

 

◇著者プロフィール
小金井市在住のジャーナリスト。記者歴30年、ニューヨーク特派員などを歴任、国際問題から地方自治まで幅広い分野を扱う。「一市民」として本コラム陣に参加。

 


 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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