◆ジャーナリスト山本俊明の「眼」 第1回

岐路に立つ民主主義  ODCと小金井TMで考えた

「貴方達(キャピトルヒル=米連邦議会)は私たちを代表していない」-。1月17日から会期が始まった米国議会を前に、「ワシントンDCを占拠せよ(Occupy DC=ODC)」運動の若者らがネット上で、こんなスローガンを掲げ、全米に衝撃を与えた。連邦議会こそ米国民を代表するところではなかったのか?

OWSからODCへ
 昨秋、世界の金融の中心地であるニューヨークで経済格差に抗議する若者たちによる「ウォール街を占拠せよ」(Occupy Wall Street=OWS)運動が突如現れた。フェースブックを駆使した中東民主化の動きに触発されたOWS運動は、世界中の注目を浴びている。

 

 OWS運動は、あえて組織を持たず、ネットワークで形成された全く新しいタイプの運動であり、拡散しすぎて主張がはっきりしない面もある。しかし、金融界を中心とする「1%」の富裕層がグローバル経済を支配し、バブルを煽って「99%」を占める庶民の暮らしを、崩壊の淵に追いやったことへの怒りや、経済格差への是正要求であることが見て取れる。そして首都ワシントンに拡大したODC運動は、連邦議会も富裕層によって支配される「1%議会」だと抗議している。

 

 裏付けもある。あるシンクタンクの調査によると、上下両院議員535名のうち、半数近い47%が百万長者だという。これでは議会が庶民の意向を吸い上げた政策を打ち出すことが難しいという見方が出てくるのも当然だろう。かねてから「金権政治」と批判された米国の代議制民主主義への不信感が、金融危機以降、一気に深刻化しているのだ。

 

 OWS運動とODS運動はともに、現代民主主義の「負の側面」に刃を突き付けたものであり、経済・政治の在り方を変えるパワーを秘めているように思われる。
 一方、緊縮財政を訴える草の根保守の「茶会(ティー・パーティー)」による新自由主義的改革運動も依然として有力だ。米国政治は、今年11月の大統領選挙に向けて、かつてない「階級対立」の様相を呈しており目が離せない。
 また欧州でもギリシャなど債務危機に見舞われた国々で、増税の犠牲となっている多数派の市民らが、緊縮財政や新自由主義型の生活切り詰め政策を主導する各国政府や銀行団などに抵抗運動を行っている。先進国で共通して、富裕層・大企業が大きな影響力を持つ傾向のある代議制民主主義が「正統性」を問われる事態が生じているのだ。1930年代のファシズム運動の高まり以来の異常事態と言えようか。

動員による改革か、熟議の改革か
 日本でも、最近、既存の政治体制を揺さぶる可能性を秘めたうねりが地方の「タカ派」陣営から出てきた。世襲議員が幅を利かす既存政党や経済団体、労働組合などの既得権益体系(エスタブリッシュメント)に阻まれて大胆な改革ができない苛立ちから、橋下大阪市長らの「大阪維新の会」の動きが台風の目になり、紙上を騒がせている。

 

 昨年末の大阪府知事・大阪市長選挙では「維新の会」がいずれも大差で勝利した。メディアを動員しての「草の根のファシズム」運動という感が否めない。20年デフレで痛めつけられた庶民の閉塞感が背景にあるのだろう。大正デモクラシーで政党政治が行き詰った後、超国家主義思想家の北一輝ら「転向右翼」や軍部青年将校らによるファシズム運動の暗い歴史を想い起してしまうのは私だけだろうか。

 

 さて、わが小金井市である。昨年秋のごみ問題に端を発した騒動の中で、気付かされたことがある。それは10月に計4回開催されたごみ問題の市民向け「タウンミーティング(TM)」での出来事だ。市当局からなされた、他市に全面的に依存したごみ処理体制には驚ろかされたが、同時に、TMに参加した市民から市議会議員への強い怒りが一様に繰り返し発せられたことにも大きなショックを受けた。

 

 「ごみ問題は貴方がた市議会の責任でもある」「なぜ当局と一緒に前に行って説明しないのか」などなど。現行市議会と、市民の間に埋めがたい「深い淵」が生じていると気付かされた。哀しい事だが、小金井市は、学者の本には必ずと言ってよいほど「ダメ自治体のお手本」として紹介されている。TMから見えてきたのは、市民の眼からも、小金井市政・市議会が機能不全を引き起こしていると映っている。

 

 2000年に自治体に大きな権限を与える「新自治法」が施行されてはや10年以上が経過した。北海道栗山町など「先進的な自治体」では、市議会と市民の対話を進める市議会基本条例などが次々に創設されている。

 

 もうそろそろ小金井市でも、地主層や町内会・PTAの「顔役」などを中心とする旧態依然とした市議会の構成とあり様を、11万の小金井市民全体の水準と願望を十分反映させたものに変える試みが必要になっていると思われる。もし試みに向けた動きがあるとすれば、大幅に加速させる必要があろう。市民には苛立ちがある。

 

 小金井市でも、大阪のような急進的な改革の動きが出てくるのだろうか。12月の市長選挙結果を分析すると、稲葉市長への批判票の多さにそうした傾向があるようにも読み取れる。現在も、一部市民からは急進的な改革待望論がでているようだ。

 

 政治学者の山口二郎北海道大学教授の現状分析が参考になる。それによると、「市民の参加や直接民主制には二つの可能性があって、(中略)橋下流のように、シングルイシュー(注:単一争点)で既存の仕組みを壊す方向に直接性を動員していく」やり方がひとつ。一方これに対抗する考え方としては、「自治体の大きな事業について住民が議論して住民投票で起債するかを決めるような、熟議による直接民主制」があると指摘。両者は「似ているようでも方向は全然違う」という視座を提示している(「世界」2月号「なぜ政治が機能しないのか」)。

 

 私たち市民は、タレント政治家をシンボルにし、メディアを総動員した「一夜でバラ色の解決」を求める改革路線を選ぶのか、それとも現代史の教訓を読み取り「熟議の民主主義」を一人一人の市民が深化させる方向で問題を解決する路線を選ぶのか、岐路に立たされている気がする。

 

 代議制民主主義が機能不全に陥った時、それを修復できるのは「政治的市民」の異議申し立てしかない。小金井でも「お任せ民主主義」ではなく、「熟議の民主主義」を求める政治勢力が結集し、改革が進むことを望みたい。市民も苦情を言うだけではなく、議会を傍聴し、投票行動を変えるなどアクションを起こす必要があるのではないか。意識の高い市民よ、「小金井市議会を占拠せよ」である。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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