シンスケの行政道場

第4回 議会基本条例の制定状況、何が変わったか

 

 

 

小金井生まれ・育ちの若手行政学研究者、伊藤シンスケができるだけわかりやすく、地方政治と行政の問題を解説します。

 

 今回は、前回から引き続き議会基本条例について、全国の地方自治体の議会基本条例の制定状況や栗山町の事例について説明して行きたいと思います。それでは、お付き合いください。

 

1 議会基本条例の制定状況

 20065月に北海道栗山町で議会基本条例が制定されてから、全国の自治体で議会基本条例の制定に向けた動きが活発になっていると前回の行政道場で述べましたが、いくつの地方自治体が議会基本条例を制定しているのでしょうか。自治体改革フォーラムの調べによると都道府県15、政令市4、特別区0(東京23区)、市94、町51、村4の計168の地方自治体が条例を制定しています(201138日時点)。全国の地方自治体の数は、20113月末で1727となっています(注1)

 

 したがって、1割弱(9.7%)の自治体が制定済みということになります。この数字をみると思ったより多くないと感じた方もいるかもしれません。しかし、議会基本条例の制定を検討又は制定に向けて着手している地方自治体の数も含めると32.2%にもなり、ここ数年でこのような傾向が強くみられる事を考えると議会基本条例に関する動きはやはり高まっているといえるでしょう(注2)。  

 

 次に議会基本条例が制定されている都道府県、政令市、市、町、村別に制定の割合を見てみましょう。都道府県は31%、政令市21%、市12%、町6%、村2%となっています。この数字から分かることは、町村以外は、制定率が1割を超えていることと地方自治体の規模が小さくなるにつれて制定率が少なくなっていることが分かります。

 

 ところで小金井市の近隣の地方自治体(多摩26市)の制定状況はどうなっているのでしょうか? 多摩市が201038日に多摩市議会基本条例を制定していますが、他の自治体(多摩26市)ではまだ制定はされていません(201138日時点)。

 

 次に全国で最初に議会基本条例が制定された北海道栗山町の議会基本条例について見てみましょう。

 

2 制定の契機

 制定の背景には、全国的にみれば、前回の道場で説明した地方分権の流れと自治基本条例の具体化がありますが、栗山町ではどのようなことがきっかけで議会基本条例が制定されたのでしょうか。

 

 栗山町の場合、議会報告会の開催が大きなきっかけになったといわれています。地方分権が進む中で、議会と住民との関係に目を向ければ、議員個人は個人後援会でしか住民とつながっていないので住民の多くは、議会(議員が議会で何をしているのか)が何をしているのか良く分からない。したがって、「議員あって議会なし」という感は否めない(注3)

 

 このような問題意識からまず議会を知ってもらうためにインターネットによる議会ライブ中継(20026月運用開始)を行い、議会と住民とを結ぶ入口を作りました。これが議会基本条例制定への第1歩となっています。しかし、ただ議会を見てもらうだけでは、「議員あって議会なし」の状況を打破できません。そこで、「住民との対話」を通じてより多くの住民に議会を直接的に知ってもらい、かつ議会及び議員全体が評価される機会を設けるための1つのツールとして「議会報告会」を始めました。この「議会報告会」を住民たちが高く評価したことによって、このツールを常設する必要性を感じ、議会基本条例への制定とつながったそうです。

 

3 反響

 以上のように、栗山町議会は全国に先駆けて20065月に議会基本条例を制定しましたが、制定当時、先行事例がなかったこともあって、制定後2年間で2081人もの視察者が栗山町議会を訪れたようです。当初は、議長と議会事務局職員の2名で視察の対応を行っていたようですが、予想以上に視察が多いことから最終的には全議員が各班に分かれて視察の対応をしています。

 結果的に、全議員が視察者の質問に答えることによって、議員の質を高め、自ら議会基本条例を作ったという認識を強く持ってもらうことができたようです(注4)

 

4 議会と町民の関係

 栗山町の議会基本条例は、議会を「討論の広場」と位置づけて、①議会と町民、②議会と首長・行政、③議員間ーーというそれぞれの「関係」を重視しています。「議会と町民の関係」について見ると、注目すべき取り組みとして「議会報告会」の他に、「一般会議」というものを設けています。

 

 一般会議とは、町民の希望に応じて議会と住民がいつでも意見交換をすることができるもので、「多様な住民の意思・意見を聴取し、そこから発生する町政上の課題に対応するための政策提案の拡大を図ることを目的」(栗山町HPから)としているものです。

 

 議会報告会は、議会が日程や報告内容等を決定するのに対して、一般会議は、日程さえ合えばいつでも開催可能な点と内容において特に制約がない点で異なります。一般会議の概要は、栗山町のHPで閲覧できますが、近年では、①地元の病院経営、②第5次総合計画後期実施計画原案、③教育に関する事務・管理といったようなテーマが取り上げられています。

 

5 変化

 議会基本条例を制定した後、栗山町ではどのような変化があったのでしょうか。条例制定当時の議会事務局長だった中尾修さんたちが書かれた『議会基本条例の展開』によれば、条例制定に関わった議員たちは、議会のインターネット中継や議会報告会等は条例制定前から行っていたので、大きな変化とは制定当初は感じていなかったようです。しかし、先ほど述べたように視察が殺到したことで各議員の議会改革に対する意識は自然と高まって来ているようです。これが1つ目の変化です。

 

 2つ目の変化は「議員になるためのハードルが上がった」とされています。条例制定後、従来以上に議員個人の能力や説明責任が問われる仕組みになったことにより、特に実績のない新人の場合、議員になることが難しくなっているようです。

 

 3つ目の変化は、「住民意識の高まり」です。条例制定後2年を経て議会報告会での質問が町の将来や地域経営の視点からの質問等が出て来るようになり、住民として町全体を考える意識が強くなったというのです。

 

 4つ目の変化は、行政(町長)による議会への説明責任(政策案に対する説明)が強化されたことにより、議会と行政との緊張関係が実質的にも進展して来た点とされています(注5)

 

 以上のように、議会基本条例を制定し、様々な反響や変化があった栗山町ですが「議会と住民との対話」を実現するために「議会報告会」や「一般会議」を制度として盛り込み、議員と住民の意識が高まったことは一番の大きな成果といえるでしょう。

 

 特に、「一般会議」の活用によって、議会で把握していない問題等が政策のアジェンダ(議題)に載ることは注目すべきことだと思います。「議会報告会」や「一般会議」以外にも学ぶことはまだまだありそうですが今日はこの辺で終わりにしたいと思います。

 それでは、お付き合いありがとうございました。 

 

(注1)市町村のデータは、総務省自治行政局HP内H11.3.31以降の市町村数の変遷を用いている。

(注2)自治体議会フォーラム調査データ(全国自治体議会の運営に関する実態調査2010集計表)を用いている(回答団体(地方自治体)は、1527団体)。

(注3) 2012325日に小金井市で行われた議員研修会で講師を務めた元栗山町議会事務局長の中尾修氏(東京財団研究員(現))は、本会でも同様の話を含む講演をされた。

(注4) データ及び内容は、橋場利勝・中尾修・神原勝『議会基本条例の展開』公人の友社、2008年に基づいている。

(注5) 栗山町議会基本条例 第4章 町長と議会との関係 第6条(町長による政策等の形成過程の説明)において、町長は政策を提案するときに7つの項目①政策等の発生源、②検討した他の政策案等の内容、③他の自治体の類似する政策との比較検討、④総合計画における根拠又は位置づけ、⑤関係ある法令及び条例等、⑥政策等の実施にかかわる財源措置、⑦将来にわたる政策等のコスト計算、について説明するように努めなければならないとされている。

 

【参考資料】

・橋場利勝・中尾修・神原勝『議会基本条例の展開』公人の友社、2008

・神原勝『自治・議会基本条例論』公人の友社、2008

・廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム編『議会改革白書2011年版』、生活社、2011

・自治体議会改革フォーラムHP [http://www.gikai-kaikaku.net/index.html]

・総務省HP内自治行政局 [http://www.soumu.go.jp/gapei/gapei.html]

・栗山町HP [http://www.town.kuriyama.hokkaido.jp/]

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

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*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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