シンスケの行政道場

第3回 議会基本条例とは?


 

 

小金井生まれ・育ちの若手行政学研究者、伊藤シンスケができるだけわかりやすく、地方政治と行政の問題を解説します。

 

 第1回と第2回では、地方自治体の最高規範とされる自治基本条例(自治体版憲法)について見てきましたが、今回は、小金井市でも条例の制定が検討されている議会基本条例について見て行きます。どうぞお付き合いください。

 

1.議会基本条例制定の背景

  北海道の栗山町が2006年5月に「議会基本条例」を制定して以後、全国で議会基本条例を定める動きが目立っています。では、なぜ近年このような動きがみられたかというと2つの流れから説明できます。

 

 1つは、2000年4月に地方分権一括法が施行され、地方自治体に権限が移譲されたことです。この法律の施行により、地方分権改革の流れが加速されたといえます(注1)。

 

 もう1つは、第1回と2回の行政道場で述べた自治基本条例の制定にあります。自治基本条例は自治体版憲法(最高規範)という性格上、理念条例という感は否めません。理念をかなえるための具体的な仕組みが必要となってきます。そこで、自治基本条例にみられる個別の自治体の理念を実現するための方策の1つとして、議会の新しい仕組みを盛り込んだ議会基本条例が制定されるようになったと見ることができるといえます(注2)。

 

2.議会基本条例制定の狙いと変化

 議会基本条例とは、「議会運営の理念とそれを具体化する議会運営に関する新しい仕組みを盛り込んだ条例」のことを指します。

 

 この条例を制定する前にも多くの地方自治体では議会改革は行われてきましたが、従来の改革との大きな違いは、「市民と議会の関係」をより重視している点にあります。

 すでに議会基本条例を制定している地方自治体では「議会報告会」等が行われ、議会と市民との対話が制度的に確保された点が大きな変化といえるでしょう。

 

 他には2つの変化があります。

 1つは、議会の透明性です。この条例の制定を契機に議会のインターネット中継や議会資料の閲覧等が進んだという点です(注3)。

 もう1つは、議会の討論方式の変化です。1問1答方式の導入などが代表的な例です。1つの項目について1つの答弁をすることで議論がより鮮明になる点がメリットとして考えられています(注4)。

 

3.議会基本条例制定のポイント

  議会基本条例制定のねらいは、自治体の理念を実現するため、議会運営の体系化や総合化を図ろうとする点にありますが、その中身のポイントは概ね以下の6点に集約できるといえるでしょう。少し長いですが、順を追って見て行きましょう。

 

①基本原則:議会基本条例がどのような位置付けかを規定することです。例えば、北海道のニセコ町や三鷹市の自治基本条例が「市政運営の最高規範」という位置づけになっているように、議会基本条例がどのような位置づけになるかを決めることです。加えて、議会の方針や、あり方が明記される必要があります。

 

②議会運営:議会運営を構成するメンバーは、議員、市長、副市長、教育長、各担当部長や課長といった議会で討議するメンバーと議会運営の裏方である議会事務局の職員等(注5)がいます。

 これら議会に直接関わるメンバーがどのようにして議会を運営して行くかについてルール化する必要があります。もっとも、議会基本条例の制定の有無に関わらず多くの地方自治体は会議規則といった議会運営の柱となる規則を設けています。したがって、既存の議会に関する諸規則や条例との関係でどのような規定を設けるかがポイントとなってきます(注6)。

 

③参加:参加には時間軸でいえば2つの考え方があります。

 1つは条例が制定されるまでのプロセスで市民がどのように参加(関与)していくのかという点と、もう1つは条例が制定された後、議会との関係の中でどのような参加が可能なのかという点です。

 小金井市ではまだ議会基本条例が制定されていません。したがって、条例が制定されるまでの間に、小金井市議会が考える議会基本条例を一般市民にも分かるように説明することが求められます。その上で、市民との対話の中からどのような条例を目指すかの十分な議論が必要です。このようなプロセスを経て条例が制定された後は、議会と市民との関係をどのように構築していくかがポイントとなってくるといえるでしょう。

 

 議会基本条例が制定された事による市民と議会との関係の変化の例として挙げられる代表的なものに先に挙げた「議会報告会」があります。議会報告会の形式は地方自治体によって様々ですが、概ね以下の流れについては共通のようです。

 まず、定例会終了後(小金井市の定例会は3月、6月、9月、12月の年4回)全議員で複数の班に分かれます。各班には班長を設け、班長と議長が中心となって、何を報告会で伝えるかについて議論します。報告内容が決まったら、全議員がその内容(議会でどのような議案が審議され最終的な議決結果が出たのか等)を各集会所などに出向いて報告するというものです。報告後参加者からの質疑応答を受け付けたりもしています。

 

④政策立案討議:地方自治体は二元代表であることから、機関競争主義等とも呼ばれ、市長(首長)と議員とがお互い切磋琢磨して政策討議をする事が望まれています。

 その政策立案討議の1つとして、反問権があります。

 反問権とは、市長や市当局(職員)が議員の質問に答えるだけではなく、逆に聞き返すことができることをいいます。この狙いは、議員の質問の意図をより明確にする点で効果が期待されます。

 

⑤自由な討議:議会運営に関する新しいルールを設けることで議会運営の効率化が進む事も議会基本条例の制定の効果といえます。しかし、効率性を重視するあまり、議員相互間の活発な議論が失われてはいけません。そのためには、重要案件についてはより慎重かつ多角的な視点から議論を進められるように自由な討議方式は確保する必要があるといえます。

 

⑥公開性(透明性):せっかく、①~⑤までが整備されても、それが市民に公開されなくては意味がありません。そこで、議会基本条例が制定された後、議会全体がどのように動いているかがわかるようにすることが求められます。

 これは議会の広報・広聴活動に加え、先にあげた議会報告会との関連で考えて行く必要があるでしょう。

 

 以上、議会基本条例の中身を考える際の大まかなポイントについて解説してきました。次回は、全国の地方自治体の議会基本条例に関する動向や個別の事例などを踏まえてより具体的に解説して行きたいと思います。

 

 では、また道場で。

 

 

 

(注1)地方分権一括法の施行による大きな変化は機関委任事務の廃止、通達の制度の廃止等がある。

(注2)多くの自治基本条例は理念条例であるが、三鷹市の自治基本条例は市政運営についてより具体的に書かれている。

(注3) 小金井では、昨年度(23年度)市民による議会のUSTをお願いする陳情(23陳情49号)が採択された。試験的に議会のUST中継が行われているのでインターネットで議会中継を視聴出来る。

(注4)1問1答方式は、小金井市議会では導入済である。

(注5) 小金井市議会発行の「知ってみよう行ってみよう小金井市議会ガイドブック2009年」に小金井市議会の説明が分かり易く紹介されている。その中で議会事務局の職員は10名とされており、その主な事務は、①議会の庶務事務、②本会議や委員会の議事運営の補助、③会議録の作成、④議員提出案件の補助、⑤議会活動のための調査、議会広報等の大切な事務、とされている。*ガイドブックは議会事務局で配布している。

(注6) 小金井市HP例規類集1章議会の欄で議会に関する条例や市議会会議規則等が見られる。

 https://www3.e-reikinet.jp/koganei/d1w_reiki/mokuji_bunya.html

 

【参考文献】

・加藤幸雄『議会基本条例の考え方』自治体研究社、2009年

・兼子仁『変革期の地方自治法』、岩波書店、2012年

・神原勝『自治・議会基本条例論』公人の友社、2008年

・佐々木信夫『地方議員』PHP新書、2009年

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

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