シンスケの行政道場          第6回

ん? 「条例」とはそもそも何でしょう

 

 

小金井生まれ・育ちの若手行政学研究者、伊藤シンスケができるだけわかりやすく、地方政治と行政の問題を解説します

 

 

 

 今日、多くの地方自治体では、「地方自治の本旨」を実現するために、自治体版憲法とも呼べる自治基本条例(理念条例)や、議会基本条例など自治体独自のルールや基準を盛り込んださまざまな条例が制定され、地方自治体の制定する条例への期待や関心は高まりつつあります。そこで、今回の道場は、「条例」について。「法律」と「条例」の関係や条例の類型を中心に解説していきたいと思います。どうぞおつきあい下さい。


1 条例制定権の法的根拠

 

 条例は、国の法律の制定と違い、都道府県や市町村が条例を制定することになっていますがその法的根拠はどのようになっているのでしょうか?

 

 条例の制定権の法的根拠は、憲法94条、地方自治法14条1項にあり、それぞれ以下のように書かれています。


 憲法94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。


 地方自治法14条1項 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。


 憲法においては、「法律の範囲内で条例を制定できる」、地方自治法には、「法令に違反しない限りにおいて・・・条例を制定できる」と書かれており、憲法・地方自治法ともに条例の制定においては法律(法令)に違反しないこと(法律の範囲内)を前提として、条例を制定する事が可能となっています(注1)。

 

2 条例の制定

 

 ところで、条例の制定はどこで決められるのでしょうか? 地方自治法96条1項の中に、地方議会の議決事項(地方議会が決定する事項)について、「1条例を設け又は改廃すること、2予算を定めること、3決算を認定すること…」と第1号から第15号まで列挙されており、条例の制定が議会によって決められるということが明記されています。


3 条例の分類

 

 一言で、条例といっても教育や福祉、環境、議会といったように、政策分野別にみても実に様々な条例が存在しますが、広義に、条例は①任意条例と②義務付け条例とに分類することが出来ます(注2)。

 

 「任意条例とは、自治体で実施するかどうか、実施するとしても条例で定めて実施するかどうか任意に任された事項を定める条例」(山口2002)のことを指します。

 

 任意条例は、地域の課題に対応したものであり、「政策条例」や「自主条例」と呼ばれるものがそれにあたります。任意条例は、法律により、制定が義務付けられていないことから、その条例の内容は地域の特性によって異なります。

 

 例えば、小金井市議会が制定を検討している「議会基本条例」などは、国の法律による条例制定の義務は課されていない(条例を制定することも制定しないことも可能である)ため、任意条例にあたります。

 

 一方、義務付け条例は、法令によって制定が義務付けられている条例のことをさします。この義務付け条例は更に、二つの考え方に従い制定されます。

 

 一つは、地方自治体が、住民に義務を課したり、権利を制限するときに、法令に特別の定めがない時に制定される場合で、条例制定の根拠が法律(地方自治法第14条第2項)に明記されているものです。

 

 もう一つは、国が制定する法律の「○○は条例で定める」という条文を根拠に制定される条例を指します。

 

4 条例制定権の範囲 

 

 次に条例制定権の範囲について見ていきましょう。先ほど条例の法的根拠のところで、法律の範囲内で制定することができると述べましたが、法律の範囲を超えた形で条例が制定されることもあります。

 

 これらの条例には、「上乗せ条例」「横出し条例」と呼ばれる2つのタイプの条例があります。順に見ていきましょう。

 

 上乗せ条例とは、国の法律による基準より厳しい基準を設定し、その基準を条例の条文の中に明記したものを指します。

 

 例えば、景観条例などがその典型で、国が制定する建築基準法による高さ制限よりも厳しい基準で建物物の高さを制限する場合などがそれにあたります。

 

  次に横出し条例について見てみましょう。横出し条例とは、国の法律により規制の対象としていない分野や対象施設に対して、新たに規制の対象を設けるために制定する条例を指します。

 

 例えば、バリアフリー法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化に関する法律)では、「高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図る(第1条)ために、法律で指定されている特定建築物以外に、条例で必要な事項を付加することができる(第14条3項)ということが条文に明記され、法律により横出し条例の制定が認められています。

 

 バリアフリー法のように法律の条文の中に、条例による横出し基準の設定が認められているものもありますが、法律の条文の中に「横出し」や「上乗せ」を認める規定がない場合はどのように理解したらよいのでしょうか?

 

 この点については、新たに制定された条例の趣旨や目的、内容、効果が法律のそれと矛盾するものでなければ、「上乗せ」も「横出し」も認められるとされています。

 

 条例は、地方自治体の地域の特性や課題に応じて制定されることが、地方自治の理念からしてふさわしいといえますが、条例を制定するには、今まで見て来たように、法律と条例の関係や条例を制定する際の基準をどこに置くかなど詳細な検討と分析が必要となって来ます。

 

 この点については、近年、行政法学者によって「政策法務」という発想のもと、条例制定についてより実践的な議論が行われていますが、その点については、またの機会ということで本日は、これで終わりにしたいと思います。

 

 どうもお付き合いありがとうございました。まだ次回の道場でお会いしましょう。

 

本日のおさらいなど

①条例制定の法的根拠は、憲法94条及び地方自治法14条に基づき、地方議会で制定される。

②条例は、大別して、義務付け条例と任意条例に分けられる。

③法律の範囲を超えた形で上乗せ基準と横出し基準による条例制定も可能であるが、その場合、法律と条例との比較において、法律の趣旨、目的、内容、効果と矛盾するものでなければよいとされる。

 

(注1)法令とは、法律に付属している政令や省令を含んでいるものの総称である。政令や省令は法律との関係で存在するものなので、法令の範囲内というのは、最終的に法律との関係(法律の範囲内)になると理解できる。詳しくは、参考文献1(兼子2012)を参照。

(注2)条例の分類は、参考文献4(山口2002)に基づいている。

 

【参考文献】

 1兼子仁『変革期の地方自治法』岩波書店、2012年。

2北村喜宣『分権政策法務と環境・景観行政』日本評論社、2008年。

3原田尚彦『新版地方自治の法としくみ』学陽書房、2003年。

4山口道昭『政策法務入門』信山社、2002年。

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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