加藤春恵子(はるえこ)の

もう一つの日本 Alternative Japan  第9回

「ピースウィーク in くにたち」という試み

 国立は大好きな街で、1年ほど住んだこともある。今も、なじみの店にヘアカットに通い続けており、とりわけ、春ともなれば、大学通りの桜を見ないことには落ち着かない。

 

 そんな国立ファンでありながら、《オルタナティブな国立》に出会ったのは、今回が初めてである。エネルギーシフトに関するシンポジウムの情報を頂いて出かけたのがきっかけで、1週間の間に各種の集会に計4回通いつめることになったのだ。


 一つの集まりに出かけると、関連のテーマの集会のビラを何枚か頂いて次のところに出かける、というのは珍しいことではないけれど、あまりに次々興味深い情報が・・・と思っていたら、「第5回 ピースウィークinくにたち2012 3.11後をともに生きる」の開催中で、10月25日から11月18日までの間に、国立の街のあちこちで合計52のイベントが行われていたのだった。

 

 すべてのプログラムと35の協賛店(スタジオ・教室などを含む)は、イラスト地図入りの素敵な1枚のしっかりした紙に収められ、写真のような素敵な表紙が見えるように三つ折りにされて、町のあちこちで配付されているので、人びとはこの期間中、ポケットにこの紙をつっこんで、思い思いにあちこちのイベントに参加できる。協賛店のカフェなども、会場を提供して新しい顧客にであうことができるしくみだ。


 市民によるオルタナティブなまちづくりの仕組みについては最後にもう一度触れることにして、私が参加した集会・イベントをご紹介したい

 

◆「くにたちで“市民エネルギー” をつくろう! みんなのシンポジウム」

 
 11月11日の日曜日の夜に、市の後援を得て商工会議所のホールで開かれたこの集会は、エネシフくにたちと一橋大サークル・エスラボの共催。


 NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)顧問の竹村英明さんの講演に続いてワールドカフェがあり、15分の休みに会場で売られていた協賛店の自然食弁当で空腹を満たし、後半は多摩地域から集まった、山川陽一さん(多摩市循環型エネルギー協議会事務局長)、都甲公子さん(こだいらソーラー代表)、リプトンさん(トランジション高尾&多摩)、藤井智佳子さん(東電値上げに抗議して契約を解除し「ひとり脱東電」を実施中)の実践報告によるパネル・ディスカッションという盛りだくさんのプログラム。司会は、一橋大学社会学研究科の学生を中心とするサークル・エスラボの佐藤圭一さんである。


 タイトルからして、国立でもいよいよ市民発電所づくりが具体化してきたのかな、と思っていたところ、そういう話は出てこなくて、前半は竹村さんが関わっているさまざまな取り組みについての講演を聴き、グループで話し合った。後半は、4人のパネラーの発言を通してそれぞれのかたちの「市民エネルギー」づくりのとりくみがくっきりと浮かび上がり、参加者ひとりひとりがこれからの取り組みのヒントを得たところで時間いっぱいとなった。

 

  すでに本格的なスタートを切った多摩市エネ協については広く知られており、本シリーズで何度か取り上げているが、小平市でのとりくみ開始が明確な形で宣言されたことは興味深い。生協を通じて購入し自宅の屋根に載せた太陽光パネルによる発電に早くから取り組んできた都甲さんが、市民発電所のプロジェクトにも参加することはうかがっていたのだが、代表を引き受けられたことはこの場で初めて知った。いずれ改めて本稿で取り上げさせていただくこととして、ここではリプトンさんと藤井さんの発言に注目しておきたい。

 

 省エネは発電所づくりに相当するとりくみだ、ということは知られているが、なんとなくイメージにとどまっているところを、リプトンさんは、数値を挙げて、家電の買い替えなどを通して、メガソーラーに相当する、大規模な節電によるまちぐるみの電気づくりを呼び掛けていくというビジョンを示した。一方、藤井さんは、東電と縁を切り、早起き早寝の省エネ生活を実践中と語った。

 

 つまり、①市民の手による大規模な太陽光市民発電所づくり、②個人宅での経験を生かした中規模の太陽光市民発電所づくり、③機器の買い替えなどを通したまちぐるみの大がかりな節電、④個人の脱東電の実践による節電、という4つのタイプの、都会でできる市民の実践類型が示されたわけで、市民ひとりひとりが「私が今できること、このまちで今できること」を考え、行動していくうえで、参考になったのではないかと思う。

 

 ちなみに私は、真夏の午後は極力南北の風を利用して頸には市役所配布の専用クール襟巻、というスタイルでピークカットに参加し、冷房は3.11以前からほとんど使っていない。

 

◆「福島原発4号機の核燃料問題を考える」


 11月16日の夜は、国立公民館で、「地震と原発」連続講座実行委員会により、8月31日に衆議院第一議員会館で行われたアーニー・ガンダーセンさんの講演をDVDを通して聴く会が開かれた。


 講演当日に参加した大貫淑子さん(食と農をむすぶ会)の解説で、改めて「収束」には程遠い危険が現存することを認識し、議員会館で開かれている市民と議員による会合を通して東電や資源エネ庁、原子力規制庁等からのヒヤリングという形の質疑応答が行われていることを知ることもできた。

 

 とにかく行動に移すことにして、集会で配られたビラを頼りに議員会館での11月22日の集会に参加してみた。東京に住む市民にとって、国会は遠いところではなく、行動の形は多様だ、と改めて思った。

 

 

◆「南三陸から‘生存’を考える――山内明美さんをお迎えして――」

 

 11月17日の土曜日の夜。雨の中を、一橋大学の側の「カフェ・れら」に早目にたどり着いておいしいケーキを食べて待っていると、店いっぱいに予約した市民が集まってくる。

 

 お話をされた山内明美さんは、宮城県の南三陸町の農家のご出身。地元で仕事をしてから、慶応大学環境社会学部を経て、一橋大学言語社会研究科博士課程に在籍。現在は、休学して、地元に宮城大学が開いた南三陸復興ステーションで特任調査研究員として働いている。

 

 南三陸町では、高台移転を決めたものの用地探しが難航し、その間に、海にも、川の両岸にも、高さ8メートル余の防潮堤を建設するという計画が進み、生存の基盤である海と人とのかかわりが破壊されそうな危機に直面している。高台移転と防潮堤を合わせて2重の安全を、という計画の背後に、巨大なコンクリート構築物の建設を通して地方に資金を回し、農業や漁業の土台を破壊し続けてきた日本の構図があることを、「東北学」の視点から日本の思想史・近代史を見つめてきた彼女は見抜いている。

 

 防潮堤を築いて景観を失い、漁業後継者も観光客も減少している奥尻島の調査を通して、確信を得て、警鐘を鳴らしているが、町の人たちに情報が十分伝わらないうちに事が進んでしまい、打つ手がみつからない状況――。涙で終わった報告に、参加者一同目頭を熱くした。

 

 山内さんのゼミの先生が差しいれたおいしいワインと、暖かいカレーで、夜更けまで話が尽きなかった。

◆「ともに生きる みんなのピースウォーク」 

 
 翌18日の日曜は,快晴。どんなに大勢が歩くのかと思って行ってみたら、いたってのんびり。出発直前まで、昨夜「カフェ・れら」で出会ったこの催しのリーダーの男性が芝生の上に座りこんで、クレヨンでプラカードの文字をなぞったりたりしているので、私も手伝った。さよなら原発小金井パレードなどよりはるかに人数は少ないのだが、心配する様子は全くない。


 とはいっても、真っ白なロングドレスのハワイアンダンスの一団が登場して、大学の南門前の小さな広場の桜の木の下で踊り、車道に出て歩くうちに人数はだんだん増えてくる。

 

 ウォークの最中はプロのバンドが演奏、缶ビール片手の歌手は美声を響かせる、といった具合で、駅前広場を回って大学の反対側の門の前に到着すると、警官も引き上げ、ビートルズナンバーが響き、再びハワイアンダンス、といった具合で、いかにも国立らしい。

 

 ゆるやかさの中でつながりが増え、世界が広がる

 

 実行委員会のメンバーの女性が挨拶して、お開きになったので、インタビューをお願いした。

 

 驚いたことに、ピースウィークは、毎年行われているのかと思ったら、そうではなく、時期も春だったり秋だったりして、長さもいろいろだとのこと。

 

 第1回は2005年春。その後WebやMLで連絡を取り合いながら、今年はやりたいね、というメンバーが揃って機が熟してきたときに、実行委員会をつくって開催の準備にかかる、というやりかたで、今年で5回目なのだという。

 2週間以上も続くピースウィーク――実行委員会は大変であろうけれど全体としてみると、かなりゆとりがある様子だ。イベントを開催するとしてもそれは毎日というわけではない人たちが大半で、残りの期間は、他の人が開くイベントの参加者として過ごすことができる。

 

 主催者側に回る機会のない人も、ベビーカーを押して昼間のイベントをのぞいたり、勤め帰りに夜の集会に参加したり、それぞれのライフスタイルに合わせて参加できる。ゆるゆるとした感じで町中が半月以上にぎわって、つながりがふえ、世界が広がるというのは、まちづくりとしても市民運動としても興味深いやり方だ。

 

 内容もゆるくて、私が参加した集会のような、テーマのはっきりしたものばかりでなく、音楽系・フィジカル系・暮らし系などさまざまである。このプログラムをポケットに入れて半月余りを過ごすことで、日ごろさまざまな活動をそれぞれの場所で行っている人たちが、関心領域を広げ、つながりをふやしていくことができるのだとしたら、市民の力は、しなやかで、層の厚いものになっていくと思う。

 

 もうひとつ、大学関係者の参加が目立つ、というのも興味深い点だ。サークル・エスラボのような関わり方もあり、山内さんのようなかたちもある。若い人も、中高年も、車いすの人も、女性も男性も、ともに集い、学び、楽しみ、交流する文化の中で、個人もコミュニティも、成長していく。

 

 小金井も大学の多いところで、さまざまな交流の場があるけれど、多様な経験や問題意識を持つまちの人々と学生・院生とが、市民活動の中で交流する機会が、さらに増していくとよいと思う。

 

こがねいコンパス第18号(2012年12月1日更新)

<参考>

◆ピースウィーク2012 inくにたちのブログ

◆アーニー・ガンダーセン 岡崎玲子訳『福島第一原発――真相と展望』集英社新書2012

◆山内明美『こども東北学』イースト・プレス (よりみちパンセ ) 2011年11月

◆山内明美「南三陸〈感情島〉――海と生きる」『Impaction』187号 2012年10月

 

加藤春恵子(かとう・はるえこ)さんのプロフィール
 『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。    

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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