加藤春惠子(かとう・はるえこ)の

もう一つの日本       Alternative Japan

第27回 結び合う「西東京」

~自然エネルギーを生み出す人々の多様性と連携~

 

<「西東京」の夏>


 昨年の夏は、多摩市の「平和展」に通って、多摩電力のパワーの根底にある想いに共感したものだった(注1)。


 その頃、私にとって、多摩市は、モノレールの向こうに存在する遠いまちであり、その後取材に出かけた小平や練馬も、ポツンポツンと別個に存在する「点」のような感じがしていた。


 ところが、この夏、次のような集会に参加して、多くの刺激を受けるうちに、少なくとも市民発電についていえば、ひとつながりの大きな「地域」が形成されており、その結びつきが色濃くなりつつあるのだと実感されてきたのである。


7月29日 「東京市民ソーラー 出資者説明会」(代表 浅輪剛博) *会場は西東京市障害者総合支援センター


8月2日 「武蔵野で市民発電を。む~ソーラープロジェクト始動(NPO法人むさしの市民エネルギー設立記念フォーラム)」(講演 飯田哲也) *会場は武蔵野市武蔵野公会堂 


8月3日 「みんなで!三鷹で!市民発電(NPO みたか市民共同発電設立記念フォーラム)」 *会場は三鷹市市民協働センター。映画『シェーナウの想い』の上映と千葉恒久弁護士による講演など

 

8月22日 「東京各地ご当地エネルギーの集い」 *会場は中野駅から徒歩7分ほどの環境エネルギー政策研究所(ISEP)会議室

  

8月30日  「みんなでつくろう!練馬生まれの自然エネルギー(練馬グリーンエネルギー設立イベント)」  *会場は練馬区民・産業プラザ。映画『パワー・トウ・ザ・ピープル』の上映と山川勇一郎さんの講演など

     


 方向音痴の私は、「西東京」という言葉は苦手だったのだが、この5つの集会を経て、ごく自然にこの言葉が頭に浮かぶようになった。


 田無市と保谷市が合併してできた西東京市とまちがえないように、「 」を付けた「西東京」をイメージしてみると、多摩30市町村と呼ばれる自治体とともに、23区のなかの練馬・杉並・中野・世田谷まで含めた、東京の西部が浮かび上がってくる。


 これらの地域に住む人々が、地元の多様性を活かし、「ご当地愛」を発揮しながら、自治体の垣根を超えて、「ご当地」間で互いにエールを送り合い、助け合う――。上記の集会に行く度に、住民の手による発電に関しては、そんな姿がすでに実現しており、さらに進展中であることが実感されてきたのである。

<三鷹市・武蔵野市のイベントから>


 三鷹市のイベントでは、「こがねい市民発電」主催の今年5月のイベント(注2)と同様、映画『シェーナウの想い』の上映と、そこに描かれた出来事が進行していたころ環境問題専門の弁護士となるべくドイツで学んでいた千葉恒久さんの講演の組み合わせで、会が進められた。


 プロジェクターで大きく映し出された生々しい写真を紹介しながらの講演を通して、シェーナウの人々が動き出す以前からドイツで続けられてきた真剣な運動のなかでシェーナウの画期的な変革が実現した事情が詳しく語られた。


 市民が発電事業を自分たちのものにするということは、息の長い社会運動であり、社会を未来の人々のためによりよいものに変える根気強い変革への取り組みなのだ、ということがよくわかる、意義深い学びの機会だった。


 三鷹のイベントのときにも行われたことだが、武蔵野公会堂でのイベントでは、こがねい市民発電を含む多摩各地の団体とならんで、世田谷、練馬など区部を含めた近隣各地の組織から、お祝いの一言メッセージが贈られた=下の写真。

<ISEPによるネットワーキング>


 環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、武蔵野市での出会いから20日も経たないうちに、近隣各地の団体の役員や、より広範な地域の団体に呼びかけて、中野区役所の近くの事務所の会議室で、「東京各地ご当地エネルギーの集い」を開いた。


 あらかじめメールで送られていたシンプルな開催概要によると、その「ねらい」は、「東京各地で立ち上がりつつある『ご当地エネルギー』の皆さんと、ISEP、全国ご当地エネルギー協会との顔あわせ」である。


 ISEP所長の飯田哲也さんは、「地域主導型の再生エネルギー事業に取り組む組織やキーパーソンのネットワーク」として、2014年3月の「全国ご当地エネルギー協会」の立ち上げに深く関わってきた。協会は、「地域でつくる、地域のエネルギー」をスローガンに掲げ、情報共有、政策研究・提言、社会モデル開発、人材育成、ネットワーキング、ご当地エネルギーの認証や事業支援を行うという。(注3)。


 その活動をふまえて、「東京各地ご当地エネルギーの集い」のお誘いがあり、多摩各地や世田谷、練馬などの団体関係者が集まり、飯田さん以外にも全国ご当地エネルギー協会からの参加があったというわけだ。


 まず、「経験共有」として、「しずおか未来エネルギー株式会社」社長の服部乃利子さんから立ち上げ経験を踏まえての報告。


 続いて、むさしの市民エネルギー、こがねい市民発電、練馬グリーンエネルギー、世田谷みんなのエネルギー、たまプラ電力、大磯エネシフト、多摩電力合同会社,調布まちなか発電株式会社、八王子協同エネルギー、市民電力連絡会、みたか市民協同発電、こだいらソーラーが、とびいりのかたちの我孫子市の市民グループも交えて、自己紹介と活動概要を紹介し、引き続き意見交換を行った。


 意見交換のポイントも、事前に5点ほど示されており、「行政との関係構築について」というテーマにかなり質問が集中した。


 それに対して、行政からの屋根借用による太陽光パネルの設置に多くの実績がある多摩電力の山川陽一さんや、調布まちなか発電・未来のエネルギー協議会の小峯充史さんからじっくりと経験が語られ、短い時間に多くの情報がえられる充実した会合だった。


 記念撮影まで行われて、しっかりとお互いを心に刻んだ参加者は終わった後も、15人ほどで、駅の近くの――陸軍中野学校跡を明るいスペースに生まれかえらせた――ビアガーデンに行き、暑さの極みとも言うべきこの日を締めくくったのだった。


<多様化する市民発電パワー>


 私は、7月29日に西東京市にでかけて、出資者説明会と言う形で、世田谷の浅輪さんを代表に、すでにご当地エネルギーを立ち上げた先駆者たちが参画して設立した「東京市民ソーラー」の狙いなどを聴いたところだった。先の会合で、飯田さんに広域型の市民発電が加わったことについての意見を聞いてみた。


 とにかく、各地の状況を踏まえて、多様なかたちの自然エネルギー関連の組織がどんどん市民パワーで立ち上がって社会を動かしていくことが必要だ、という意見だった。


 ファンド型でも、寄付型でも、ご当地型でも、広域型でも、売電型でも、独立型でも、太陽光発電でも、水力発電でも、その他諸々の自然エネルギーでも、各地・各人の状況・特性を踏まえて、全国各地で多くの人びとが自然エネルギーに力を注いで、エネルギーを自分たちの手に取り戻していくこと――。それが制度変革を呼び起こし、社会を変えるうねりとなっていくのだ、と改めて思った。

 

 地元に、市民発電の主体が設立されにくかったり、生まれたばかりの組織はあっても、屋根貸し成立の条件が難しく経験豊富な組織の力を必要とするような案件に悩むといったこともあるだろう。広域的な活動を通して自然エネルギーの発電量を増やしていこうとする経験豊富な人々を集めた組織の誕生も、新たな状況を創り出していくことだろう。


 気さくに話しながらビールでのどを潤した飯田さんは、「祝島を守らなくちゃ」と、郷里山口県のご当地電力のファンド募集のビラを配り、翌日の福島県会津若松市でのご当地エネルギーの集会に向けて、旅立って行った。


 そのあと、近隣からの参加者とは、かなり遅くまで話し込んだのだが、情報の豊富さに加えて、ネットワーキングの達人でもあるISEPが、「ご当地」というかたちで近隣の諸団体をつないでくれたことは、「西東京」の自然エネルギー事業の活性化に、大きな刺激となることと期待される。


<多摩に学ぶ練馬>

 

 昨年の7月6日に恵泉女子大の屋上で1号機が動き出したばかりだというのに、多摩電力は、たゆみない努力で、「西東京」の市民発電事業の先達として、練馬から招かれるまでに成長している。行政から多くの屋根を借り受け、2回目のファンド募集を行い、若い層の関心醸成にも力を尽くしている。


 8月30日の練馬グリーンエネルギーの設立イベントに、『パワー・トウ・ザ・ピープル』の上映に続いて講演者として登場したのは、山川勇一郎さん。先のISEPの集まりに登場した父の山川陽一さんや多くの仲間とともに、多摩の発電事業を支えている若きリーダーだ=下の写真。

 多摩電力(注4)、とりわけ、山川勇一郎さん(注5)については、この《もう一つの日本》のシリーズで何度か書かせていただいているので、講演の内容の詳細については省略するが、とにかく、映画の後半で若干うとうと気味だった人も皆ぱっちり目が開いてしまった。


 練馬の人たちは、寄付型の元気力発電所(注6)を長く続けてきた経験を持つメンバーはいるが、初めてファンド型の市民発電所にチャレンジするという不安や緊張を抱えている。山川さんは、多摩での経験をわかりやすく伝え、エールを送った。「大丈夫!がんばろうね」。素晴らしいスピーチだった。


 講演の後で行われた東京都の「東京ソーラー屋根台帳」を活用するワークショップも、興味深いものだった。


 関心の深い地域ごとに5つほどのグループに分かれた参加者は、日ごろ近くを行き来しているといった利点を生かして、地図のなかから太陽光パネル設置に適していると思われる屋根をいくつも探し出し、東京都のホームページで提供されている東京ソーラー屋根台帳を用いて、それぞれの屋根で発電が可能な数値をさがし、候補に挙げられたいくつもの屋根の数値を足し合わせて、担当地域の発電量予測を発表した。


 「石神井公園が好き」といった地域名入りのハッピを着ている体格のいい男性もいるなど、大変な盛り上がりで、パパに連れられた坊やも、退屈して泣くどころかアンパンを食べてご満悦だった。


 入会申し込みもすでに続々といった報告やスケジュールなどの案内のあと、会場の後ろに張り出されていた市民エネルギーの先達からの心のこもるメッセージが披露された。


 最後に読み上げられたのは、ISEPの集いで会ったばかりの調布の小峯さんからのもの。長文のメッセージは、


「・・・自然エネルギーの普及促進は、いかに政治を担う人間が代わっても、

大多数の市民の心の中では踏襲されることは疑う余地がありません。


そんな大勢の市民の心の声を具現化し、百年後、千年後の子ども達に、「あの時代の人々のおかげで今の暮らしがあるんだね」と言ってもらえるよう、素晴らしい

歴史を刻んでいきましょう。」


と結ばれていた。


 深い共感のうちに、記念撮影が行われ、長い奮闘の旅へのスタートが、改めて切られることとなった。


 先に述べたように、練馬グリーンエネルギーの担い手のなかには、衣類中心のリユースショップをベースに寄付型の小規模な市民発電所を13年にわたって展開してきた、元気発電所のメンバーが含まれている。


 その一人、新藤絹代さんはこれからも、リユースショップ「元気力発電所」3店舗を大切にして、寄付型の小規模な市民発電所づくり(注7)を続けながら、同時に、ファンド型でより規模の大きい発電を手掛ける、練馬グリーンエネルギーに関わって、より若い世代から選ばれた共同代表(渡辺由美子さん・原直美さん)を助けようとしている。

 

 広域型の東京市民ソーラーにも参画して、世代をつなぎ地域をつなぐ活動を続けようとしている彼女をみていると、練馬で育まれてきた脱原発への思いの深さに、改めて心を打たれる思いがする。


 肩の力を抜いて歩み続けながらも、未来の人たちに、「昔の人たち、ありがとう」といってもらえるような、「西東京」を、東京を、日本を、そして世界を、紡いでいく一人一人でありたいと思う。

こがねいコンパス第57号(2014年9月6日更新)

<注>


1) 加藤春恵子「核廃絶に向けて――『語り部』たちの夏』」『こがねいコンパス』「もう一つの日本」第18回


2)こがねい市民発電は、2014年7月20日に設立総会を開き現在、NPO認証の申請中。

3)「全国ご当地エネルギー協議会 団体概要」参照。


4)加藤春恵子「多摩市のエネルギー・シフト」『こがねいコンパス』「もう一つの日本」第5回・同「市民エネルギー創りを目指す人々」同上 第8回


5) 同「世代をつなぐ多摩」同上 第17回


6)加藤春恵子「練馬の元気力発電所を訪ねて」同上 第24回


7)新藤絹代「不用品リユースから生まれる市民発電所」市民のエネルギーひろば・ねりま編『地元で電気をつくる本――市民発電所でエネルギーが変わる』ぶなのもり 2014年2月刊。


*《もう一つの日本》の過去の記事は、右側に出てくるバックナンバーの目次をクリックすると、読むことができます。

加藤春惠子(かとう・はるえこ)さんのプロフィール

 『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。     

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

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民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

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「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

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イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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