加藤春恵子(かとう・はるえこ)の

もう一つの日本      Alternative Japan

第24回  練馬「元気力発電所」を訪ねて

 

 

<「元気力発電所」って何?――その1>


 1月半ばのある日、私は西武池袋線の石神井公園駅から歩いて3分ほどのところにある、「元気力発電所」石神井店を訪ねた。「元気力発電所」は、練馬区には、石神井店のほか、関町店、練馬店があり、女性たちの手による3つのリユースショップが連携して運営されている。


 石神井店は、衣類、小物、靴、食器などが工夫を凝らしてディスプレイされている。片側に3列にわたってぎっしりかけられている衣類とそれに付けられた値札を見なければ、リユースショップとは気付かない人もいるかも知れない。

 

 この日は、エコメッセ練馬の運営委員会がこの店の奥のスペースで行われるとのことで、創設から関わっている新藤絹代さんにインタビューをとお願いしたところ、「それでは会議の後にこのお店で」ということになったのだ。

 

 ちょうど、「元気力発電所」練馬店創設の時、新藤さんと組んで、マネージャーをつとめたという宮城恵子さんが、都合が悪くなったお仲間のピンチヒッターとしてカウンターにおられたので、一緒に写真を、とお願いした。(写真右が新藤さん、左が宮城さん)

 

 お店には、途絶えることがないくらいに、お客さんが入ってきて、それぞれ楽しそうに、真剣に品定めをしている。並べてあるものを手に取ったり、試着したりしながら、カウンターの人と地域の話が始まることもある。その合間に、寄付されたリサイクル品を確かめたり、値付けしたり、並べたり、といった具合にさりげなく仕事を進めておき、5時30分に閉店した後にきっちり整理して、1日が終わる。

 

 働き者の女性たちがつくる、楽しいお店。とても私のような散らかし屋ではボランティアは勤まりそうにないのだが、買うだけでもこの店に役立つということがわかっているので、気分がいい。

 

 毛皮つきのダウンのコートや毛糸の帽子等を買って、1500円ほど。2月にやってきたあの2週続きの大雪の日の外出のための準備をすることもできたのだから、ありがたい。

 

 「元気力発電所」は、女性たちの協働でもう12年も続いている、素敵なリユースショップのチェーンなのだ。

 

<「元気力発電所」って何?――その2> 

「元気力発電所」練馬店
「元気力発電所」練馬店
「元気力発電所」関町店=新藤さん提供
「元気力発電所」関町店=新藤さん提供

   「元気力発電所」石神井店
   「元気力発電所」石神井店

 

 土地柄や店舗の広さにあわせて、3店それぞれ雰囲気や扱っている品物は微妙に違うものの、店の中の様子は上に述べたような具合。いずれも繁ぎわっており、3店ともにかわいい子どもの絵のついた大きな看板を掲げている。

 

 看板の子どもの絵は、地域の人に広く知られており、道に迷って八百屋さんの店先で若い店員さんなどに尋ねると、「子どもの絵のあるお店ね」とすぐに教えてくれた。

 

 親しみやすい大きな看板を通して、元気力で自然エネルギーを増やそうという、店舗の目的を鮮明にしているところが、他のリユースショップとは違う、「元気力発電所」の大きな特色だ。

 

 リサイクルもしくはリユースショップというものは、地域に女性たちの職場を創り出す有効な手段であり、リユース(再使用)自体が消費社会の無駄を排してモノやおカネを循環させていく方法だから、社会をよりよくしていくための活動、ということもできる。地域のコミュニケーションを開き、情報を伝達するための「場」としての役割も、もちろん重要である。

 

 しかし、リユースショップのなかには、そうした機能とは別の、特定の社会的な「目的」のための資金づくりと言う役割を担って開かれているものがある。

 

 私がイギリスに滞在していたころ、便利なところに気持ちのよいリユースショップがいくつかあり、スカートやセーターなどをたびたび購入して、いまも愛用している。きれいにたたんだセーターを2、3枚抱えて寄付するために入ってきた友人と入り口でばったり、ということもあって、イギリスの人たちの暮らしの中にリユースショップが根づいていることを痛感したものだった。

 

 それらのショップは、海外支援やホスピス支援など、はっきりした社会的目的を掲げるチェーンストアであり、日本に帰ってからそうした店がないものかと疑問に感じていた。

 

 おそまきながら、ようやく最近、エコメッセ(注1)のホームページで、練馬を含めて、あちこちに私のイメージ通りのリユースショップが存在することを知って、出かけたのである。
   
 練馬で生協活動をしていた新藤さんは、イギリスに住んだことがあり、海外支援を掲げるOXFAMという、全国展開の大きなリユースショップ・チェーンや、いろいろな市民運動の資金源のリサイクルショップにヒントを得て、「環境NPO エコメッセ」をつくり、「元気力発電所」で資金を得ようと考えた。

 

 「元気力」は「原子力」をもじったもので、元気な市民の力で、「原子力」に代るエネルギーを生み出す「発電所」を創るための資金をつくろう、というはっきりとした目的を持って、練馬の女性たちは、2001年に「エコ・メッセ」(注2)をスタートさせた。

 

 「環境まちづくりNPO エコメッセ」のホームページに載せられている「設立趣意書」は、工業化と都市化の世紀としての20世紀を振り返り、戦後日本の経済効率優先・経済成長至上主義の時代を反省するところから始まる。

 

 「科学技術は、処理不可能な有害な化学物質や核兵器・原子力発電所といった、地球や人類の存在を脅かすものまでもつくり出してしまいました」という一節は、福島事故後の今日、ひとしお私たちの心に突き刺さる。

このような認識を踏まえて、次のような、地域からの取り組みが提案されている。

 

 「私たちはこのような事態を解決するために、市民が中心になって環境に負荷をかけない循環型社会をめざすまちづくりを進め、汚染された大気、水、土壌をよみがえらせたいと考えます。生活の現場である「地域」から自然環境破壊に対して取組みが行われ、自然との共生を最優先した「まちづくり」の試みを開始することは、人びとの意識と生活の変革を促すことになり、ひいては経済や政治、文化への視点を大きく転換させるものとなると考えます。それは、自動車の侵入しない、誰もが「歩きたくなる」ような市街地や、緑豊かな「住みたくなる」まちの創造、自然エネルギーの活用で環境負荷のない暮らしの実現など、20世紀型の経済成長が破壊した環境を再生し、実現できなかった自然との共生社会をめざす試みです。環境を損なわない新しい経済の活性化は、地域社会をグローバルな市場経済の専横から守り、人間の生活の場としての自立的な地域社会につくり変えます。

 わたしたち生活クラブ運動グループでは、市民による新しい公共システムづくりと新たなコミュニティ形成をキーワードに21世紀のまちづくりを展望しています。そのためには、市民社会が強化され、市民が主導するまちづくりを促進するための機能を、多様につくりあう必要があります。

 私たちは、21世紀を「環境」と「コミュニティ」の世紀にするために、環境まちづくりNPO「エコメッセ」を設立します。」

 

 文章の大半を引用してしまったのは、2002年7月28日付のこの文書を、「福島後」のいまようやく目覚めて市民発電に取り組もうとしている私のような人間の立場で読むと、未来を予測したその状況把握の深さと、「地域からの実践」にこだわる姿勢に打たれるからである。

 

 そしてまた、市民発電のとりくみの意義をしっかりとおさえて、「元気力発電所」と名付けた営みを12年余にわたって地域で続けてきた練馬の女性たちの、認識と行動がしっかりと結びあわされた,しなやかでしかもぶれることのない実践に、共感せずにはいられないからである。

 

 「元気力発電所」とは、彼女たちの運営するリサイクルショップだけにとどまらず、脱原発に向けた自然エネルギーの発電を、地域に根ざした市民の力で行うためのしくみ全体、さらにいえば、それらを支える市民のネットワーク、絆をさしているのだと思う。

<12年の歩み>

 

 東京全体をカバーし、さらにはより大きな広がりを見せている「環境まちづくりNPO エコメッセ」の設立総会は、先の設立趣旨書の出された日付である、2002年の7月末に開かれているが、練馬でのエコメッセの歩みは、その前年に始まっている。

 

 2001年の始めから見学会や学習会を重ねて、秋に賛同者募集を開始し、140人の賛同者を得て、設立総会を行い、12月に関町店開店、翌2002年4月に練馬店開店、同年6月に石神井店開店と、大変なスピード感である。

 

 そして資金がたまるごとに設置先を募集して、

◆2004年2月 1号機「武蔵」

(武蔵大学 3.22kw 設置費286万円 助成金143万円 市民からの現金による寄付67万円* 元気力発電所の売り上げからの寄付76万円)

◆2004年9月 2号機「双葉」

(大泉双葉幼稚園 3.24kw 設置費286万円 助成金201万円 元気力発電所の売り上げからの寄付85万円)

◆2009年12月 3号機「三育」

(東京三育小学校 3.00kw 設置費251万円 助成金なし 市民からの現金による寄付54万円 元気力発電所の売り上げからの寄付197万円)

◆2010年12月 4号機「ピッピ」

(共同保育所ごたごた荘 2.31kw 設置費214万円 助成金182万円 元気力発電所の売り上げからの寄付32万円)

[何れも1千円以下は四捨五入。*は1号機と2号機を併せた市民からの寄付。「設置費」には看板の制作設置費が含まれている。]


 という具合に発電所づくりを進めてきた。4機合わせると、6年余の間に390万円の寄付(現金を合わせると457万円)が、元気力発電所を通して何千人ともいえる市民から贈られていることになる。

 

 4機すべてについて屋根所有者の自己負担はゼロである。発電機も1・2号機はすでに屋根所有者へ寄贈済みで、3号機は2014年4月付で寄贈が決まっており、4号機も設置後5年たった時点で寄贈の予定である。

 

 1号機と3号機は自家消費であるが、2号機と4号機は設置したところが余剰売電を行っている。設置場所の学校などは、賛助団体としてエコメッセ、元気力発電所とともに自然エネルギーを普及する活動を支えている。


 4機を合わせた2012年4月から2013年3月までの1年間の発電量は14,368kwhに上っている。10kwを目指す市民発電所の多い2012年7月以降の買取制度の状況下では、小さな発電所は設置コストが割高だとして敬遠されがちなように思われるが、地域の身近なところに市民発電所が増えて、看板やイベントによりその意味するところが次世代の子どもや地域住民に伝わっていくことの意義も大きいと思われる。

 

 「元気力発電所」に働く人々は、有償ボランティアとして仕事をしている人が多いが、決して世間並みとはいえない金額で懸命に働いて元気力を膨らませている。3店の間で、売れていない商品を交換してお客さんと品物との出会いの機会を増やすなど、工夫を凝らして、発電所づくりのための売り上げを伸ばしていく。

 

 扱っている品物を無償で寄付する人たちも、たんすの中と気分とをすっきりさせて、元気力を増していく。買い物をする人も、遠回りしてでも元気力発電所に立ち寄り、一品でも買って笑顔を交わし合うことで、元気力を増幅し、地域に循環させていく。

 

 「元気力」を膨らませあって、身近な地域のなかでエネルギーシフトに参加することは、自分の暮らしや地域のありようを変え、この国の未来を選び取ることに他ならない。

 

 遠いところで誰かがつくるものであったエネルギーは、地域のなかで自分たちの手で創りだせるものに変化した。練馬の人々は、率先してそのことを実感し、20世紀の残した悪弊に訣別し、未来を拓く活動のなかで「現在」を生きていこうとしているのだと思う。

 

 これまでの歩みについては、「市民のエネルギーひろば・ねりま」が3回の連続講座をまとめた『地元で電気をつくる本』(ぶなのもり 700円)に収録され、この3月に刊行される予定だ。おすすめしたい。

<練馬の「元気力発電所」は、これから?>

 

 12年の歩みを踏まえて、より深く、広く、自分たちの住んでいる地域に根差した活動を展開していくために、練馬の元気力発電所は、2014年4月1にから、「環境まちづくりNPO エコメッセ」から独立することになった。

 

 「環境まちづくりNPO 元気力発電所」として新たなスタートを切ることになり、特定非営利活動法人としての設立認証を申請中である。

朝日新聞にも掲載された、設置先募集の呼び掛けに応えて、連絡のあった団体と、現在、5号機の設置に向けた話し合いが進んでいるという。

 

 「生活を自治するために、もっと自然エネルギーによる発電を増やし、元気力発電所のほかに、練馬での市民参加の多様なエネルギーをつくりたいと思っています」と新藤さん。

 

 練馬区民による全量売電のファンド方式による市民発電所設置の動きもあり、そうした活動への参加も視野に入れての発言だ。

 

 2月半ばに小金井市の緑センターで行われた生活クラブのハムづくりの講習会に講師として登場した新藤さんは、ハムを巻き上げて吊るし終えたところで、ビジュアル資料を用いてこれまでの練馬でのエコメッセの取り組みについて語った。

 

 最後のスライドには、「私の結論」として、「①原子力は最大の環境破壊 ②原子力発電所がある限り安全な食べ物はない」と書かれていた。

 

 「安全な食べ物」を追求してきた生協のメンバーが、チェルノブイリや福島の経験を踏まえて、「脱原発なしに安全な食べ物が行き渡ることはない」と立ち上がり、21世紀の初めから今日までの着実な歩みの中で紡ぎ出した結論を、おいしい手造りハムとともに改めてかみしめ、思いを新たにしたひとときだった。

 

こがねいコンパス第47号(2014年3月3日更新)

(注1)(注2)エコメッセは、東京・世田谷で1965年につくられ、各地に展開している生活協同組合、「生活クラブ」の運動グループとして、2002年に、本文に紹介する設立趣意書に記されたような目的を掲げてつくられた組織。2014年2月現在、東京都内に16店のリユースショップを展開している。なお、練馬での発足当初には、「エコ・メッセ」と表記されていたので、注2ではそれに従っている。


<参考文献>
▽新藤絹代 「衣類などのリユースショップを資源に太陽光発電所作り」廃棄物資源循環学会誌 第2巻 第3号 2010
▽佐藤慶幸・天野正子・那須壽 編著『女たちの生活者運動』マルジュ社 1995
▽天野正子 『「生活者」とはだれか』中央公論新書 1996
▽岩根邦雄 『生活クラブという生き方』太田出版 2012
▽市民のエネルギーひろば・ねりま編『地元で電気をつくる本』 ぶなのもり 2014(3月)
 

加藤春恵子(かとう・はるえこ)さんのプロフィール
 『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。

 

 

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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