加藤春恵子の

もう一つの日本   Alternative Japan

第2回 自然エネルギーをつくる

「相乗りくん」を生み育てる人々

 

 自然に囲まれた地域社会には、この自然の恵みを生かし、自分をも活かすことができる仕事を、という思いをもつ人々が少なくない。とりわけ、地震列島に原発と一蓮托生で生きることの危険に目覚めたいま、自分たちの、そして日本の人々のふるさとを根こそぎ奪うような事故を起こすことのないエネルギーをつくる仕事へと、人々の思いは向かっている。

「相乗りくん」との出会い

 

 前回ご紹介した長野県上田市の蚕都くらぶ・まーゆ主催の「持続可能な未来づくり全国フェスタ」のプログラムの中で、目の覚めるようなプレゼンテーションに私は出会った。「まーゆ」の会員の一人である藤川まゆみさんが、上田市民エネルギーの代表として、元気いっぱいにステージに上がって「相乗りくん」を紹介してくれたのだ。

 

 それから注意して控室に並んだビラに目を凝らすと、わくわくするような、わら半紙8つ折りの「うえだ市民エネルギービジョン2011」(うえだエネルギーシフト作戦会議2011.10)を見つけた。おまけに、おやき作りのワークショップに参加して仲間と別行動になった私が帰りがけにもたもたしていると、すっとやってきて最寄りのローカル線の駅までいっしょに歩いて送ってくれた人がいて、途中でよく顔を見たら藤川さん――押しつけがましくない心遣いが印象に残った。

 

 

 

「うえだ市民エネルギービジョン2011」の表紙
「うえだ市民エネルギービジョン2011」の表紙

 電車の中で「ビジョン」を広げてみると、上田と長野県と日本のエネルギーシフトに向けたビジョンが、長野県のデータやドイツの先行例などもふまえて具体的にイラスト入りで書かれていて、実に内容豊富。このようなビジョンと表現力を備えたこのまちの市民活動が生み出す「相乗りくん」の行方を、ぜひ応援したいと思わずにはいられなかった。

「うえだ市民エネルギービジョン2011」から
「うえだ市民エネルギービジョン2011」から
「相乗りくん」で太陽光パネルが付けられた屋根
「相乗りくん」で太陽光パネルが付けられた屋根

 そんなわけで、2月にNPO法人の認証を受けた「上田市民エネルギー」の代表となった藤川さんを、4月の半ばに、千曲川沿いのまち上田に訪ねた。

 

 まず藤川さんの案内で屋根を提供して下さっているTさんのお宅に向かった。国道に面した大きな家は2棟に分かれ、どちらにも屋根いっぱいに太陽光パネルが設置されている。「相乗りくん」事業が始まったという新聞記事を見て、いち早く参加申し込みをされたとのことで、川中島合戦のころからこの地域に一族で住み続けておられるというTさんは、地域への誇りと、エネルギーシフトを通じて社会貢献することへの喜びを語られた。

 

「相乗りくん」のしくみ

 「相乗りくん」に関しては、すでに4軒が「屋根オーナー」として参加している。一方、オーナーの屋根に相乗りする「パネルオーナー」にも27名ほどが参加しており、地方紙に加えて全国紙やNHKニュースなどにも紹介されている。

 

 しくみとしては、日照条件が良く面積の広い屋根のオーナーが自己資金で自家用の太陽光パネルを設置する際に、パネルオーナーは自分のパネル設置費用を出して屋根の空いているところに相乗りという形で参加する。10年間でパネルオーナーは自分のパネルの売電で最初のパネル設置費用+αを回収できることが見込まれている。そのあと2年間、相乗り分のパネルからの収入はNPO法人の経費となる。12年目から相乗り分のパネルも屋根オーナーのものとなり、屋根全体からの売電収入をすべて受けとることができる。

 

 もちろん売電収入は天候や停電等に左右され保障されるものではない。しかし、「今こそ自然エネルギーを増やしたい」と願っても、屋根を持たなかったり、日照条件が悪かったり、転居の可能性があったりして、とまどっている人々は少なくない。このような人々にとって、信頼できるNPOの仲立ちで、地震などの災害の記録が少なく、全国有数の日照量に恵まれた上田の、市民による発電事業に、10万円から参加できる、というのはひとつのチャンスである。


 2月の全国フェスタに出演した、東北被災地支援にも熱心な若いママたちのアフリカンダンス・サークルのメンバーの一人が、GREEN  Peaceというすてきなブログに、ささやかな預金を下ろして「相乗りくん」に参加した、と書いているのを偶然見つけた。このように、市内からは老若さまざまな市民の資金が寄せられている。出資は全国どこからもできるし、市内や近隣地域に関しても、個人だけでなく、企業からも行政からも、屋根オーナーやパネルオーナーとしての参加があることが期待される。

 

 

 

藤川まゆみさん
藤川まゆみさん

市民エネルギーへの歩み

 藤川さんによると、彼女にとっての市民発電への歩みは、5年前に子連れで友人と松本まで「六ヶ所村ラプソディー」を見に行ったときに始まった。画面に登場する村人たちの話に、どう問題を解決したらよいかわからず身体が震えて止まらなくなった彼女は、上映後のトークの時間の鎌仲ひとみ監督の語りかけに感動し、「コミュニケーションによる解決法ならわたしにもできるかもしれない」と思ったという。

 

 スイッチが入った彼女は、これまでの人生で彼女の中に蒔かれていた種がいっせいに芽を出したかのように動き始めた。仲間に出会いつつ、交渉やビラ作りをして鎌仲作品の上映会を開いたり、エネルギー問題の専門家の講演を聞いたりするうちに、再生エネルギー関連事業を長野県各地域に起そうと県が呼びかけた「自然エネルギー信州ネット」に準備会の段階から参加。一緒に長野まで通った仲間が車中で出したアイディアをもとに「相乗りくん」の構想を練り、エネルギーシフトの道筋についての学習や語り合いを重ねて、先に述べた8つ折りの裏表いっぱいのビラをつくり、ビジョンを共有して、NPOを立ち上げることになったのだという。

 

 現在、「NPO法人上田市民エネルギー」の運営に携わっているのは、専従で代表の藤川さんを含めて5人。年齢も性別も多様で経験豊かな人たちが、藤川さんのコミュニケーション力という「宝」を軸に、それぞれがもつ「宝」を活かして、市民エネルギーをつくる事業を展開している。

 

 元気に誕生した「相乗りくん」の成長を願って、エールを送りたい。

 

 

◇筆者からの一言◇

 「NPO法人上田市民エネルギー」の連絡先は080-5146-9937およびmfujikawa@eneshift.org  (HPは作成中)。なお、「自然エネルギー信州ネット」のHPは、長野の全県および地域別の自然エネルギー事業化への取り組みを知り、全国各地でエネルギーシフトのスピードを上げていく方法を考えるうえで参考になる。

 

◇筆者のプロフィール◇

 加藤春恵子(かとう・はるえこ) 『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
写真をクリックすると大きくなります
全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから

小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

メルマガ登録をどうぞ!

「こがねいコンパス」からのメルマガをご希望の方は以下にメールアドレスをご入力ください。新しい「市政フラッシュ」の掲載や、次号の主な内容などについてご連絡します。

コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

 ご連絡は koganeicompass@gmail.com まで。