加藤春恵子(かとう・はるえこ)の

もう一つの日本     Alternative Japan

第19回 市民と地域がつくるエネルギーの未来とは

~「市民・地域共同発電所全国フォーラム2013」~

 

 じりじりと太陽の照りつける9月21日と22日、京都の南部にある龍谷大学深草キャンパス。全国から大教室いっぱいに、270人もの多様な人々が集まっていた。

(フォーラムのチラシから)
(フォーラムのチラシから)


 1994年に宮崎県串間市に市民共同発電所第1号を、次いで、地球温暖化に関する京都会議が開かれた1997年に滋賀県石部町(現・湖南市)に第2号を誕生させていた市民たちは、2002年から5回にわたって、「市民・地域共同発電所全国フォーラム」を開いた。その後、しばらくの休止を経て、今回、この大会を開いたのである。この間に市民共同発電所は大幅に増え、福島原発事故や固定価格買取制度の影響を受けて、大会の参加者も大きく膨らんだ。関西を中心に24団体が実行委員会をつくって準備を重ね、充実したプログラムによって、情報が豊富で、交流も広がる密度の濃い場が形成された。

<「未来を考え、いま行動を」>


 初日の午後1時からは、大会委員長の和田武氏による基調報告。和田さんは、立命館大学などで環境問題を教え、つい先ごろまで日本環境学会の会長職にあった。同時に、「自然エネルギー市民の会」代表として、一つでも多くの市民発電所を、と奔走し、「ぽっぽおひさま発電所」(東大阪市)、「せのがわおひさま共同発電所」(岡山県)などの市民発電所づくりにたずさわってきた人物だ。市民の会以外でも、先述の日本で2番目につくられた市民発電所、「てんとうむし1号」などにもかかわったという、学術と市民活動とをつなぐ経験の持ち主である。

 

 基調報告の「市民・地域が担う自然エネルギー」は、多くのデータや自ら行った海外調査を織り込みつつ、明快なレジュメとパワーポイントを用意して、みっちり1時間。

 

①  原発は危険であり、安全で持続可能なエネルギー社会の実現には、脱原発・自然エネルギー中心のエネルギー利用への転換が不可欠である。

 

②  国産で、どこにでも少量ずつ分散的に存在し、農山漁村に多く、生産手段の形態が、小規模分散型で多数設置に向いている、という自然エネルギーの特性から、その普及には、地域・市民主導方式が適しており、市民・地域共同発電所づくりは、社会的連帯にも、好影響をもたらす。

 

③  電力買取制度の導入により、市民・地域主導で自然エネルギーの普及が進むドイツ、デンマークでは、適切な政策・制度の採用と市民・地域主体の参加が、自然エネルギーの飛躍的普及をもたらし、持続可能な社会に向けた未来づくりが進んでいる。

 

――という3点を、綿密にわかりやすく説明し、論証したうえで、

 

④日本には、豊富な自然エネルギー資源、市民や地域の力、技術や産業の力がある。適切な政策・制度と私たちの積極的取り組みにより、無数の市民・地域共同発電所をつくっていこう。

 

と強調し、日本でも市民・地域主導による自然エネルギー普及で持続可能な社会をつくることができること、市民・地域共同発電所を全国各地に創っていくことが必要であることを訴え、言葉を強めてこう結んだ。

 

「市民・地域主導で脱原発・自然エネルギー普及を推進し、地球温暖化防止と地域の自立的発展を通じて、持続可能な社会への転換を目指そう! 市民が変われば、地域が変わる。地域が変われば、国が変わる。国が変われば、世界が変わる。地球のことを考え、地域で行動しよう! 未来のことを考え、いま行動しよう!」

 

 ごく当たり前のことを述べているように思われるかもしれないが、固定価格買取制度がなかった時代から、市民共同発電所とそれを支えるシステムをつくることに力を尽くしてきた和田さんの全存在を込めたメッセージは、1997年の気候温暖化に関する京都会議で動き出した世代と、2011年の3.11で動き出した世代とをつなぎ、今、何をすべきかを明確に指し示す、素晴らしいスピーチだったと思う。(注1)

<徳島での取り組み、龍谷大の取り組み>

 

 基調報告と同じ会場で、短時間の休憩のあと、ただちに「脱原発、温暖化防止と自然エネルギー」「広がる市民・地域共同発電所」の2つのパネルディスカッションが行われた。いずれも興味深いテーマであるが、本稿は、市民・地域共同発電所の事例報告に絞ってまとめることとし、後者のなかから2つの報告を取り上げたいと思う。

 

 私も、また会場の人々も、その多彩な活動に驚いたのは「徳島再生可能エネルギー協議会」の豊岡和美さんの報告「地域エネルギー事務所と次世代公共性の姿」だった。

 豊岡さん=写真=は、働き盛りの県議経験者で、落選にもめげず、3人の仲間と相談して一般法人「徳島地域エネルギー」を創った。小さな村まで含めた市町村の手助けをして、風力発電・太陽光発電・小水力発電・バイオマス発電などを立ち上げるための働き掛け・プランづくり・事務等々を行っている。

 

 そのプロセスのなかで、「徳島地域エネルギー」は、環境省の「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討委託」を受けて、「徳島再生可能エネルギー協議会」を構築し、その運営を担っている。

 

 県・市町村・大学・高専・市民団体・再エネ企業・地元金融機関・NPO・地域住民などをコーディネートし、サポートしたり支援・参画を求めたりしながら、人や組織を繋ぎ、知恵や力や資金を集め、技術を掘り起こし、地域の力を引き出しながら、太陽光・風力・小水力など各種の発電プロジェクトの実現にこぎつけ、地域エネルギ―を形にしていく「事務所」機能を担って、実績を挙げているのだという。

 

 佐那河内村の「村風車」や「みつばちソーラー」、「美馬ソーラーバレイ」など、夢のある名前のプロジェクトが完成あるいは進行中で、小水力やバイオマス関連なども具体的に検討されている。

 

 質問に対して、「本気で向き合えば、助けて下さる方々はおられるし、実現できることは多いんです。皆さんもやれます」と語りかけた彼女の言葉は、今も心に残っている。
(注2)

 

 「市町村=地域」と定義して、行政に住民のサポート役を期待しても、行政が、自然エネルギーに詳しくアイディア豊富で実務にたけた職員を、自然エネルギー関連業務に充てることができるとは限らない。県や他の市町村との連携をつくることが難しいという事態が起こりうることも、容易に想像がつく。

 

 豊岡さんたちの多彩で広域的な活動、およびその「事務所」方式というものに、注目していきたいと思う。

(龍谷大学のニュースリリースから)
(龍谷大学のニュースリリースから)


 そのスケールの大きさに驚嘆したのは、今回の大会の場を提供した龍谷大学による、太陽光発電を通じた社会・地域貢献のための取り組みだった。

 

 すでに報道でご承知の読者もあるかもしれないが、龍谷大学は、今回の発表者である政策学部の深尾昌美准教授を社長とする非営利型株式会社を設立。日本の大学としては初めて社会的責任投資(SRI)を実行して3億5千万円を投資し、トランスバリュー信託を通して集めた資金などとあわせて7億円を用いた1800kWのメガソーラーを、和歌山県印南町(人口約8900人、3250世帯)の海岸につくった。深草キャンパスに設置する50kWのソーラーと一括して、「龍谷ソーラーパーク」と名付けて運営し、売電による5億円の収益を、京都・和歌山の管財法人を通して、社会的課題の解決に取り組む市民公益活動の支援資金に充てるという。(注3)

 南海トラフの地震・津波のリスクを承知で実行されている、スケールの大きな計画に驚く。同時に、大谷探検隊を大陸に送った西本願寺のチャレンジ精神や、筆者がイギリスでNPO(チャリティ)}団体の調査をしたときに知った、投資を行いながら他の中小のNPOのために資金を提供するNPOの数の多さ、スケールの大きさなどを思い出すと、宗教を背景とする大学が社会的ミッションを考えたうえでの「さすがにお西さん」というべき決断であろうかと思った。

 

 なお、上記の2つの事例が登場したセッションには、谷畑英吾市長による湖南市の事例報告もあり、大いに注目された。湖南市の取り組みについては、夜の交流会で「てんとうむし1号」とともに生きてきた溝口弘さんにお願いして、見学のセッティングをして頂き、訪問することができたので、次回にまとめて報告することとしたい。

<身近な事例―宝塚すみれ発電所――>

 

 2日目は、4つの分科会が設けられ、一斉に9時半きっかりに始まった。「多摩循環型エネルギー協議会」理事の林久美子さんの報告などもあり、迷うところだったが、いま小金井の私たちにとって最も知りたい、「市民発電所の作り方」という分科会を選んだ。

 上の写真は、この分科会の報告者となった方たち。右から、「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」の山崎求博さん、「新エネルギーをすすめる宝塚の会」の中川慶子さん、「エコプランふくい」の加藤浩史さん、「自然エネルギー市民の会」の中村庄和さん、コーディネーターの「気候ネットワーク」の豊田陽介さん。年齢性別ともにさまざまな人々がリーダー役として登場しているのがわかると思う。

 初日の事例紹介は、あまりにスケールの大きなところの話になってしまったので、ここでは、私にとって身近な、昔住んだことのある宝塚市の「すみれ発電所」の事例を報告したいと思う。宝塚歌劇団や音楽学校があり、「すみれの花咲くとき・・」の歌で知られる宝塚市の花は、「すみれ」と公式に定められており、発電所はそれから取った名前だという。

 

 中川慶子さんたちのグループは、チェルノブイリ事故以前の1981年から、「原発の危険性を考える宝塚の会」として活動し、原発に頼らない暮らしをめざしてきた。2011年5月には現在の「新エネルギーをすすめる宝塚の会」を結成。6月には、市議会に「再生可能エネルギーによるまちづくりを」の請願を出して採択され、市の環境部環境政策課との話し合いが始まった。

 

 さらに2012年6月に市が新設した「新エネルギー推進課」と協働して発電所づくりを進め、9月にNPO法人の認定を受けて、12月には早くも「宝塚すみれ発電所第1号」(13.16kW)を設置。今年5月には、発電事業に特化した「合同会社宝塚すみれ発電所」を設立するなど、長い助走があるだけに極めて的確かつスピーディに事を運び、現在は早くも「第2号」(47.66kW)建設のための歩みを進めている。(注4)

(宝塚すみれ発電所第1号のメイキングビデオから)
(宝塚すみれ発電所第1号のメイキングビデオから)

 資金集めは、インターネットに公開されている記録によれば、必要資金320万円を、一口10万円(一人30万円まで)、元本償還および利子支払い日は2023年4月1日、中途解約・譲渡・担保・質入れ付加、相続可、という形で、担当者が説明会などを行って集めている。

 

 市との協働は、金銭関係以外の分野で行われており、パネル設置の日には市職員が積極的に参加している様子が撮影されている。屋根の上ではなく、土の上の設置で、第2号もその予定であるようなので、これなら協力して働くこともやりやすいだろうと思う。

 

 理事の過半数が女性で、1981年以来の大先輩の顔も見られるこのグループにとって、職員とのこのような形の協働は、大助かり、と言った感じだ。

 

 まっすぐに、シンプルに、歳月を噛みしめながら未来に向けて歩いているグループの発展ぶりに共感しながら、ビギナーの私は、帰宅後「宝塚すみれ発電所」関連の、HPや関連ページを、教科書のように繰り返し読ませていただいた。

<フィールドワークに向けて>

 昼休みに、これまでみっちり大会場や分科会に出席していたために見損ねていたポスターセッションに行ってみると、興味深い展示が沢山あり、本屋さんにも資料がたっぷり。

 

 その中でひときわ私の目を引いたのは、「きょうとグリーンファンド」のコーナーに溢れる子どもたちの笑顔=写真=だった。

 発表を聴く機会のなかったこの会の事務所もぜひ訪ねて見ようと、湖南市とあわせて2日ほどのスケジュールを決めたあと、大会場に珍しく遅れて入ると、まだ大入り満員だった。最後の日は空席が目立つことの多い学会などとは大違いである。出張旅費を貰うあてなどなく、実践的知識を求めて手弁当でわざわざやってきた社会人たちが大半だから、気合いが違うな、と思いつつ、集会アピールを大拍手で採択して大会を閉じ、地下鉄駅までの暑く長い道を、元気に歩いた。

 

 これだけ気合の入った情報量のある大会にしては、メディアの取材が目立たないのは、連休に行われた大会だからだろうか、それとも、新奇性が失われると足が遠のくというメディアの習性からだろうか?

 もっと、この国の未来に向けた市民の動きを、多面的・持続的にカバーしてほしいものだと思う。

 

こがねいコンパス第37号(2013年10月5日更新)

<注>
1)『市民・地域共同発電所全国フォーラム2013 開催要項&予稿集』pp4~19
2)『平成24年度地域主導型再生エネルギー事業化検討委託業務報告書』一般社団法人
徳島地域エネルギー 
 3)「全国初 大学・行政・企業等の連携による地域貢献型スキームのメガソーラー発電
所を設置」龍谷大学ホームページ  2013年1月16日
4)「新エネルギーをすすめる市民の会」のパンフレット、ホームページなどを参照。

 

<参考文献>
1) 和田武・田浦健朗編著『市民・地域が進める地球温暖化防止』学芸出版社 2007
2) 和田武・荒川達郎・田浦健朗・平岡俊一・豊田陽介・伊与田昌慶『地域資源を活かす温暖化対策』学芸出版社 2011
3) 和田武『脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ』あけび書房 2011
4) 和田武『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略』かもがわ出版 2013

 

加藤春恵子(かとう・はるえこ)さんのプロフィール 
 『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
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こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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