加藤春恵子の

もう一つの日本 Alternative Japan

第12回 湧きあがる市民エネルギー

 この2月は、再生可能エネルギー関連の集会が、相次いで開かれ、太陽光発電の事例報告を聴き、《エネルギー》をもらって帰る日が多かった。


 ここでは、そのなかから3つの集まりと、そこで紹介された、いくつかの事例を紹介し、いま、小金井に住む一人一人が、再生可能エネルギーへの関わりを通して、脱原発にコミットできることは何かを見つけていく手がかりとしたい。 

 

 

ふるさとを創る

 2月1日(金)の夜、世田谷の北沢タウンホールで開かれた集会。その長い名前を上のようにそのままご紹介したのは、まさに、ここで伝えられ、受け止められたたすべてのことが、このタイトルに盛り込まれていると思ったからである。


 このコラムの第1回で、長野県上田市の「まーゆ」の活動をご紹介した中にも登場し、第2回にインタビューをお願いした藤川まゆみさんを、GQパワー、NPO法人「太陽光発電所ネットワーク」(略称PVネット)、世田谷から未来をつくる会、世田谷みんなのエネルギーの協力を得て、東京世田谷のトランジション世田谷茶沢会が招いた。NPO法人「上田市民エネルギー」と茶沢会の共催で開いた集会には、会場いっぱいに100人ほどが参加した。


 まず、上田市民エネルギー代表の藤川さんが、パワーポイントを使って立ち上げ以来1年の歩みを振り返りつつ、最近の展開状況を説明。


 藤川さんが脱原発と再生エネルギー創りに目覚めて、市民に呼び掛けていったきっかけとなった「六ヶ所村ラプソディー」の監督、鎌仲ひとみさんが応援のメッセージを語り、東京からのパネルオーナー参加者として一言といわれて、客席の私も、第二のふるさと信州の、大きなネコのいる屋根オーナーのご家族のところに、ほんの少し相乗りして、元気をもらっています、と実感を伝えた。


 現在は、個人宅の屋根ばかりでなく、事業所や学校の屋根、さらには畑にまでパネルを設置する方向に、展開中だという。


 上田市民エネルギー事務局長の合原さんや世田谷区長の保坂展人さんも登場して、あちこちで市民発電所を計画中・準備中の人々からの質問に答えるなど、熱心な語り合いが続き、この一年、とりわけ昨年7月の全量買い取り開始以来の世の中の動きの速さに、改めて目を見張る思いだった。


 エネルギー創りへの参加によるふるさとづくり――。地元の人たちの資金に加えて、都会の住人たちの想いのこもった資金を集めて、大小さまざまなソーラー発電所が、ひとつひとつ設置されて行く。


 日照条件のよい長野県では、2004年に南信州の飯田市に、おひさま進歩エネルギーが立ちあげられ、中信と呼ばれる長野新幹線寄りに位置する上田市民エネルギーも、この先達から大きな刺激と教えを受けている。全量買い取り制度開始以前から行われていたことが、いま、大きなうねりとなって、あちこちで実を結びつつある。


 東京からのパネラーとして、PVネットの田中稔さんや、茶沢会の浅輪剛博さんも登場し、田中さんが関わっている「こだいらソーラー」の報告、市民発電所に関わる各種出資システムの比較説明などが行われ、入間市のGQパワー入間市民発電所からのパネルオーナー募集、NPO法人エコメッセが生活クラブケアセンター世田谷の屋上に設置する市民発電所への寄付募集なども配布されて、会場はにぎやかだった。

 

 

NPOによる市民発電所支援

 「太陽光発電所長大集合イベント2013  市民の手にエネルギーを ~広げよう市民共同発電所~」と題する集会が開かれたのは、2月16日(土)の午後。水道橋駅近くの貸会議室である。

 

 このコラムの第6回でとりあげた太陽光発電所ネットワーク(=PVネット)の主催で、会員を中心に100人余が集まって、こちらも空席のない盛況だった。


 自宅の屋根に太陽光パネルを載せて「太陽光発電所長」を自任している人たちのネットワークが、昨年から市民ファンドサポートセンターを立ち上げ、市民発電をはじめようとしている人々のための支援活動を始め、その成果としてあらわれている各地の事例報告を中心とする集会を開いたのだ。


 固定価格買取制度が実施されてから、市民発電を立ち上げやすくなったとは言っても、資金調達の方法、土地や屋根の選び方や使い方、パネルの選び方、手続きの仕方などなど、本業のかたわら取り組んでいる人々が多い市民発電グループにとって、悩みや課題は次々にでてくる。


 そこで、PVネットは、会員の中から様々な相談にあずかれるような人々を育ててきた実績を活かして、多様な支援を行い、再生可能エネルギーの普及に努めている。


 今回報告された支援事例は、

「野田村だらすこ市民共同発電所(岩手県)」

「REうつくしま発電所(福島県喜多方市)」

「恵那山おひさま発電所」(岐阜県)」

「秋田大沢メガソーラー」。

 

 さらにPVネット会員がつくった

「市民共同発電所 伊豆の国電気の畑」や「小諸エコビレッジ市民共同発電所」、スマートエナジー社によるメガソーラー「土佐くろしおソーラー」(高知県)の資金募集の呼びかけがあった。

 

 岩手県の野田村は曲り家(まがりや)などが残る、海に近い人口4600人ほどの小さな村。ふるさととしての魅力を持ち、ホタテガイの養殖などでも知られてきた村だが、今回津波で住民の7割が被災し、特に男性たちが気力を失ったという。

 

 そこで、木工品作りを手掛ける「だらすこ(=みみずく)工房」を中心に、市民ファンドによる発電事業(48kw)を行うことになり、ファンド募集をはじめた(注1)

 

 地元に仕事を増やし、都会の人にとっての故郷ともなるような、心のこもる交流の場にもしたい、と願う共同代表の一人、佐々木明宏さんの話は、会場の人々の心に沁み渡った。

 

 「秋田大沢メガソーラー」(1600kw)を立ち上げた小野隆さんは、LPガス販売店の息子として生まれ、以前から再生エネルギーに関心を持ち、自宅に取り付けるなどしてきたが、今回大きく畑を借りて、自己資金と銀行融資と市民ファンドを合わせて、地域の特性にあった市民発電所の理想のかたちを追求していきたいという。

 

 日照にハンディのある雪国ではあるが、トータルで事業として成り立たせていけるという見通しを持って、元気に秋田弁で語る若い経営者に、会場の視線が集まった。

 

 「支援」ということとは違うのだが、小諸エコビレッジ市民共同発電所も、興味深い試みなので、ご紹介しておく。設置場所は、本コラム第8回でご紹介したPVネットの一泊研修に参加した時に私自身も発電所設計の実習を行ったところ。

 

 その後、秋も深まってから、7.6kw相当の中古のパネルに韓国製の新品を加えて、合計13kwほどのリユース発電所を、会員がボランティアで立ち上げたという。

 

 まだ使えるのに家の建て替えなどの事情で不要になった太陽光パネルをひきとって、人間にたとえて言えば、老後を日当たりのよいところで楽しく過ごす、という感じで活かしていこうというもので、多くの電力を用いてつくられた太陽光パネルを、使い捨てにしないで、寿命のある限り大切に再利用するプロジェクトとして注目される。

 

 集会の後、参加者全員で記念写真を撮り、近くの中華料理屋で交流会。動き出したばかりのプランも腹蔵なく語られて、仲間の励ましを受け、2月1日の集会同様、地球温暖化や脱原発の志を持って大小さまざまな発電に取り組もうとしている人々の世界には、活気が渦巻いていることを実感した。

 

 今は、再生可能エネルギーの比重を増やして、脱原発を達成して行く歴史的な動きの正念場なのだと思う。

 

 

 

先達に学ぶ「こだいらソーラー」

 「こだいらソーラー設立記念フォーラム 小平で市民ソーラー発電所をつくろう!」が小平市中央公民館で開かれたのは、2月23日(土)の午後。

 

 前々日の読売新聞多摩版に取り上げられたこともあって、こちらも約100人が集まり、空席なしの盛況。あいさつに立った代表の都甲公子さんの話では、幸いなことに大変段取りよく進んで、この日に間に合うようにNPO法人の認可も届き、発電も始まっているという。


 この日も、充実したプログラムが順調に進み、林久美子さん(多摩循環型エネルギー協議会理事)、山崎求博さん(足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ=略称「足温ネット」副代表理事)による事例報告と、こだいらソーラーの立ち上げに関わってきた田中稔さん(太陽光発電所ネットワーク理事)の報告によるパネルディスカッションに続き、田中優さんの基調講演「エネルギーシフトで、未来の当たり前を今、現実のものに」が行われた。

 

 当日の状況と「こだいらソーラー」自体の概要については、翌日の東京新聞武蔵野版で大きく報じられていることでもあり、いずれ稿を改めて、どうしてこんなに手際よく事が運んでいるのか、担い手の方々のご苦労や組織の特徴などを聴かせていただくことにして、ここでは、東京の大先輩、江戸川の「足温ネット」による市民発電所の事例から学びたいと思う。


 この組織は、地球温暖化に関する京都会議をきっかけとして1997年に設立され、①市民立発電所の建設及び運営②省エネ家電買い換えサポート事業③省エネ分電盤の共同開発④地域エネルギービジョン策定委員会への参画など、エネルギーに関する多様な活動を行っている。


 こだわりをもって「市民立発電所」と呼ぶ発電所は、1997年に590万円をかけて、区内のお寺、寿光院の屋根に設置された(5.4kw)。費用は、国などからの助成金、寺院からの電気代の前払い、市民からの寄付、田中優さんが理事長を務めるNPO「未来バンク」からの借り入れで賄われた。

 

 その後2007年に、高齢者グループホーム「ほっと館」の屋上に中古のパネルを使った2番目の発電所(3.0kw)を設置し、さらに昨年からの全量買取制度を活用して、寿光院に439万円をかけて「えど・そら1号」(10.58kw 総額438万9千円)の建設を計画し、疑似私募債(注2)方式で会員に1口1万円・計500万円の借入れを呼びかけ、1カ月で目標を達成したところだ。

 

 将来は、電力自由化を視野に入れつつ、脱原発に向けて、「節電所(注3)と組み合わせた市民電力事業体「江戸川市民電力」に育てたい!」と山崎さんのレジメは結ばれている。

 

 このように、地球温暖化への問題意識を持って動き出した市民団体は、東京も含めて、全国各地で、それぞれの「ふるさと」をベースに着実に歩みを進めている。

 

 先達の情報公開や助言は、3.11をきっかけに脱原発への問題意識から動き出した市民団体にとって大きな力となっている。

 

 湧き上がる市民エネルギーの、歴史を創造しようとする動きに、どのような側面から(注3)、どのようなかたちでコミットするか、一人一人の決断が日々問われている。

 

 

こがねいコンパス第24号(2013年3月2日更新)

《注1》「復興支援 野田村だらすこ太陽光ファンド」については、参考欄7のHPを参照。

 

《注2》疑似私募債とは、株式会社以外の会社や個人事業主、NPOなどが、縁故者に「○○債と名付けた債権を買ってもらい、償還期限が来るまで年一回利息を払って、資金面の支援を受けるシステムを指す。

 

《注3》市民のエネルギーに関する主体的な活動としては、「発電」の前にまず「節電」が必要であり、日本はドイツに比べて、この点の留意が不足してきたため、再生エネルギーの比重を増していくためのハードルが高くなっている。

 

 省エネに向けた支援や料金制度の不合理の是正によって、企業での省エネを推し進める必要があり、さらに、市民発電所や家庭での発電に関しては、送電ロスの罠にかからないため、「発電」した電気を至近距離で利用してもらう工夫や、「蓄電」する技術の向上を支援しその成果を活用することによって、電力会社から自立する必要があると、小平の基調講演で田中優氏は語っている。(参考資料9)

 

「節電」に関しては、従来型の企業や家庭の省エネということを超えて、電力自由化に伴う適切な卸売・小売市場の運用や、効率化のための補助金、時間帯別料金、その他のシステムによって省エネに導く仕組みをも含めて、「節電所」というコンセプトを提起する環境経済学者も登場している。(参考資料10)

 

 2月24日午後、世田谷では、ドイツで学んだ朴勝俊さん(関西学院大学準教授)を招いて、地元笹塚ボウルの節電実践事例の報告とくみあわせた、「発電所から節電所へ」という興味深い催しが開かれた。国や電力会社に振り回されないで、市民がエネルギーに関する主体的な権利を獲得し、脱原発に向けたプロセスを加速していくためには、「節電」「蓄電」「発電」の3側面を視野に入れた活動の展開を図る必要があるだろう。

 

<参考>*青字はそれぞれのHPにリンクしています。

1. トランジション世田谷茶沢会HP

2. 上田市民エネルギーHP

3. おひさま進歩エネルギーHP

4. こだいらソーラーHP

5. 足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわHP

6. 太陽光発電所ネットワークHP

7. 野田だらすこ発電所-PV-NET市民ファンドサポートセンターHP

8. 多摩市循環型エネルギー協議会HP

9. 田中優(2012)『省エネして自然エネルギーにしたら、原発はいらなかった』     武田ランダムハウスジャパン

10. 朴勝俊(2012)『脱原発のための節電所』NGOe-みらい構想

 

加藤春恵子(かとう・はるえこ)さんのプロフィール  
   『女たちのロンドン』『広場のコミュニケーションへ』『女性とメディア』『福祉市民社会を創る~コミュニケーションからコミュニティへ~』など、社会学者としての仕事を重ねて、定年後の現在は「ケアサポート湧」、「トランジション・タウン小金井」など、小金井の様々な非営利・市民活動に参加している。桜町在住。    

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

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全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

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 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

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 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

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