特別インタビュー

脱原発社会への道筋を描く

「原子力市民委員会」座長

舩橋晴俊さん(法政大教授)に聞く  (後編)

分裂している政策検討の場を、どのように統合するのか。原子力市民委員会の座長を務める舩橋晴俊さん(法政大教授)は、それが脱原発社会を実現する一つのカギだという。

そして原子力市民委員会の4つの部会が取り組もうとしているものは――。

 

単独ロングインタビューの後編です。

◆メディアが大切な役割担う


議論の場づくりで言えば、原子力市民委員会の第2回会議でみなさんに図をお示ししました。私はこの考えを広げられないかなと思っています。

 

今までは上の図の通りです。政府には審議会があるのですが、政府好みのメンバーが多く、批判派を入れてくれません。科学的検討の場が二つに分かれ、審議会に集まる人たちには「御用学者」という悪口が言われている。

 

本来は下の図のようにやれば良いのです。科学的検討の場に複数の学説を持った人たちを集めて、科学者として合意できることを合意すれば良いのです。それを一つの素材として、「政策案形成の場」にも、さまざまなステークホルダーを代表するような人がそれぞれ入り政策形成をする。こういう風に変えていきたい。この構造をみなさんに幅広く支持してもらいたいと思っています。割合と、市民運動側からは評判が良いのです。原子力関係の学者でもこういう方法が良いと支持してくれる人はいます。


科学的検討の場が変わるということに加え、メディア――それはマスメディアからミニメディアまで様々ですが――そこが活躍してほしいのです。クオリティを上げてほしい。
 

◆4つの部会の取り組み

――原子力市民委員会では、4つの課題に取り組む部会を設けていますが、課題はどのような観点から選択したのですか?

 

これは常識的な判断です。第1部会は「福島原発事故対策と被災者支援」をテーマにしています。原発事故の収束が中途半端で、「収束、収束」と政府は言っているが、実際はほど遠い状態にある。しかも、数十年にわたって細心の注意を払いながらいろんな対策をやっていかなければなりません。

 

被災者支援はすごく議論になっています。自主避難を含めて16万人が逃げ出さざるをえない。ほったらかしにされている人が多いわけです。

 

だからそこへの支援なしに、総論的に脱原発を言ってみても全然説得力はありません。福島の生活再建・コミュニティ復興と被災者支援は、脱原発の社会変革にとって不可欠の課題です。しかも、それは「第1」におかなければならない部会なのです。

 


 第2部会は「核廃棄物管理・処分対策」、第3部会では「原発ゼロ行程」に取り組んでいますが、一体となって議論をしています。脱原発を進めるうえでも、核廃棄物という非常にややこしい問題に取り組まざるをえません。これにちゃんと取り組み、有効な政策を打ち出す必要があります。逆に見れば、核廃棄物の問題を真剣に考えれば考えるほど、原発というのはやっていけないことに気が付きます。

 

ただ、核廃棄物に対処ができたとしても、原発をなくすためにはオルタナティブ(代替)エネルギーを提示しなければなりません。エネルギーベースの議論もありますし、財政ベース、経済ベースなどいろいろあります。そこのところもちゃんと見なければなりません。

 

これは結構難しくて、原発ゼロ行程部会(第3部会)では再稼働をどうするのかが大問題になります。ハードランディングにするのか、ソフトランディングするのか。ドイツはソフトランディングを選択しました。10年間で徐々に原発の比率を落としていき、脱原発を実現するというやり方です。


ゼロ行程部会では、再稼働問題と再生可能エネルギー、あるいは再生可能エネルギーとは言わないけれどもコジョネレーションを含む広い意味での代替可能エネルギー。僕はコジェネレーションは有力だと思います。再生可能エネルギーだけが、一つの戦略だけではない。もちろん省エネも議論しなければなりません。

 

コジェネレーションとは 「熱と電力を同時に利用するエネルギー供給システム。一般に、燃料を燃やして発電する発電所の効率は40%。残りは排熱になるが、近くに低温熱需要があれば有効に利用できる。ガス、灯油、重油を燃やしてタービンやエンジンを回して発電、排熱で暖房や給湯を行うと、総合利用効率は80%になる。ただし需要地に建設されることから、大気汚染が問題になる。燃料電池やマイクロガスタービンを利用するものもある。小型のガスエンジンによる家庭用コジェネレーションも製品化されている。電力と熱、そしてそれ以外の何かの3つを利用したものは、トリジェネレーションという。太陽エネルギーから熱、電気、水素を発生させるソーラー・トリジェネレーションが研究されている。( 槌屋治紀システム技術研究所所長 )」知恵蔵2013より》
 

第4の原子力規制部会というのは、一定の規制をめぐる改革のうえに再稼働をしようという動きが強いので、それが妥当なものかどうかを絶えず批判的吟味をして意見を言わなければなりません。原子力規制委員会の考えのどこに問題があるかとか、どこは評価できるかとか、それは指摘しなければなりません。

というようにほとんど論理必然的に、常識的にこの4つの部会が必要になるわけです。ただし、4つの部会を横断的に、串刺し的にして、とらえなければならない問題もいくつかあると思います。それは部会の上の委員会のレベルで考えなければなりません。

 

それは第2回委員会で私が出したレポートにあるように、「取り組み体制の構築の失敗」という問題があります。取り組み体制が不適切であった、あるいは失敗してきたことが問題を生み、あるいは問題を複雑化してきたわけです。

 

――例えば再稼働の問題について、ソフトランディング、ハードランディングの両論併記という形で報告されることもありうるのでしょうか?

 

あると思います。それから、複数の選択肢についての批判的分析というレポートは出ると思います。

 

こういう選択肢をとると、こういう帰結とコスト、リスクを伴う――。そういうものをちゃんと提示して国民のみなさんに考えて頂く。あるいは電力会社に考えてもらう。それはすごく大事なことだと思うのです。

 

複数の選択肢を提示したうえで、この選択肢を推奨するということがいえるかもしれないし、委員会の中で6対4で割れるということもあるかもしれません。それはやってみないと分かりません。ただ、複数の選択肢を吟味、検討するというのは必要だと思います。

(緊急提言を発表する記者会見=原子力市民委員会のHPから)
(緊急提言を発表する記者会見=原子力市民委員会のHPから)

 

――原発の新しい規制基準が7月上旬にも施行されると報道されています。新規制基準の施行をどのようにお考えですか?

 

それが第2回(5月23日)、第3回(6月17日)の委員会での主要な討論テーマでした。

 

結論としては何らかの意見表明をしよう、ということになり、それが6月19日に発表した「緊急提言」です。

 

原子力市民委員会には、日本の主要な環境NGOが結集しています。そうしたNGO、NPOも個々にメッセージを出すと思います。それと同じような繰り返しでいいのかという議論はあります。市民委員会が出すならば、ある個性というか、存在意義を示すような出し方が必要だと考え、あのような内容になりました。

 

緊急提言とは 原子力市民委員会が6月19日に発表。「原発再稼働を3年間凍結し、原子力災害を二度と起こさない体系的政策を構築せよ」と題し、(1)原発ゼロ社会へ向けての政策転換を軌道に乗せる(2)原子力災害防止システムを立て直す(3)原子炉システムの新規制基準を作り直すーーの3つを提言した。(緊急提言はこちらから読むことができます)》

 

これまでは個々の団体が提言などを出した場合、その内容は理屈としては筋が通っているのですが、政策決定プロセスにほとんど影響を与えてきませんでした。無視されてしまいます。ずっとその繰り返しが続いてきました。このパターンに陥りたくありません。だからこそ、公開討論会をやれればと思うのです。
(後編・終わり)

 前編はこちらから

 

こがねいコンパス第31号(2013年6月23日更新)

舩橋晴俊(ふなばし・はるとし)さんのプロフィール
1948年、神奈川県大磯町生まれ。1976年東大大学院社会学研究科博士課程中退。現在、法政大学社会学部教授。法政大大学院サステイナビリティ研究所・所長。専門は社会学基礎理論、環境社会学など。

 

日本学術会議の「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」幹事として、内閣府原子力委員会への「回答」のとりまとめにあたった。

 

著書に『社会学をいかに学ぶか』(単著)、『巨大地域開発の構想と帰結──むつ小川原開発と核燃料サイクル施設』(編著)、『東日本大震災と社会学: 大災害を生み出した社会』(編著)など。

神奈川県大磯町在住。

 11月8日(日)

  第73号の主な内容

(随時更新されます)

《市政の焦点》

■12月小金井市長選特集

☆白井とおる市議が立候補表明(2015年11月8日更新)

 

☆白井市議の立候補記者会見に40人以上の市民が参加(2015年11月8日更新)

 

☆4陣営の対決構図に 財政健全化への具体策が焦点(2015年11月8日更新)

 

≪酒好きのたわごと≫

その15 越後の酒と謙信(2015年10月17日更新)

  うれしいニュース!

 公益社団法人「全国学校図書館協議会」が発行している「としょかん通信」(中・高校生版)2015年6月号の《今月のブックトーク》に『まちの力 ひとの力 ――変える 試みる 小金井の人たち』がとりあげられました。

 1人でも多くの中学生、高校生にこの本を読んでもらえたら、と思います。感想文も送ってもらえると、とってもうれしいですね。

 以下にその部分を貼り付けました。筆者は、ほそえさちよさんという子どもの本の編集者だそうです。タイトルは、「生きるために つながる」。

写真をクリックすると大きくなります
写真をクリックすると大きくなります
全体はこちらから
としょかん通信「今月のブックトーク」.pdf
PDFファイル 5.3 MB

こがねいコンパスのインタビューシリーズ《変える 試みる 小金井の人たち》をまとめた本『まちの力 ひとの力』が図書出版クレインから刊行されています。ウェブ版では読めない、取材秘話などを明かす4本の「エピローグ」と、やまさき薫さんの素敵なイラスト付き。定価1500円+税です。市内の各書店でお買い求めください。クレインでも注文できます。

毎月第1・第3土曜日が定期発刊日です。こがねいコンパスは市民のための羅針盤を目指し、市民とともにつくる地域メディアです。ご意見・ご感想・情報提供などを、koganeicompass@gmail.comへおねがいします。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから。

詳しくはイベントカレンダーのページをご覧ください。こちらから

小金井市のイベント情報は、小金井市地域情報サイトのさきナビでも見ることができます。バナーをクリックしてください。

 この人に聞く

脱原発社会への道筋を探る

民間の英知を結集して「脱原子力政策大綱」をまとめる「原子力市民委員会」の舩橋晴俊座長。

前編はこちらから。

後編はこちらから。

*船橋晴俊さんは2014年8月15日、くも膜下出血で急逝されました。ご冥福をお祈りするとともに、船橋さんの思いを少しでも多くの方に知って頂きたいと願っています。(編集長・佐藤和雄)

 

「敗北」を語る

民主党小金井支部幹事長

村山秀貴さん

前編はこちら

後編はこちら

 

イラクから問い続けてきたもの

映画監督・鎌仲ひとみさん

こちらから

メルマガ登録をどうぞ!

「こがねいコンパス」からのメルマガをご希望の方は以下にメールアドレスをご入力ください。新しい「市政フラッシュ」の掲載や、次号の主な内容などについてご連絡します。

コンパスは「羅針盤」です!

 

 『こがねいコンパス』は、小金井市政や小金井の人たちが関心をもつテーマを分かりやすくお伝えするインターネット新聞です。市民団体「こがねいコンパス編集部」が発刊しています。

 

 『コンパス』は、羅針盤を意味します。辞書によれば原義は「ともに歩くこと」です。市民が市政をより深く理解するための一助となり、よりよい小金井市政のあり方を考えるときの羅針盤でありたい。市民のみなさんと一緒に歩んでいきたい。そんな思いを込めています。

 

 

 ご連絡は koganeicompass@gmail.com まで。